シオニズムとは、一体、何なのか、我々日本人には、

実感できにくいと言えるだろう。



シオニズムは、ユダヤ人が流浪の民のまま

自分たちの国家をもたずに他所の国で生活している以上、

迫害されるのは当然である。



だから、自分たちの努力でユダヤ人のための

民族国家をイスラエルの地に建設して、

安全を確保しようという一種のナショナリズムに基づいている。



もっというと、シオニズムとは、反ユダヤ主義への対抗策

としてのユダヤ人ナショナリズムである。



つまり、ヨーロッパ社会で反ユダヤ主義がなくならないかぎり、

シオニズムはずっとナショナリズムとしてのエネルギーを

保つことができてしまう。



他に、ナショナリズムを涵養するための政策もある。

ウルバンという語学学校が存在する。



離散したユダヤ人がイスラエルに帰還すると、

この学校で、ヘブライ語を習得しなければならない。

公職につくためには、必須である。



また、他に徴兵制度によってもナショナリズムを形成する。

男子には約3年、女子には約2年の兵役義務がある。



イスラエルの国防観は、いわゆるマサダ・コンプレックス、

かつてはローマ、今は、アラブ世界に包囲されている

という意識が強い。



かくして、イスラエル人という国民意識が生まれるのだが、

世代間のズレが生じている。



離散ユダヤ人は、多言語併用だったのに、

イスラエル生まれ、イスラエルの国籍しかないユダヤ人は、

ヘブライ語以外の外国語を、教育を通してしか学んでいない。



最近では、イスラエルから海外にいき、そのまま海外にいる、

「イスラエル人ディアスポラ」も形成されている。



ならば、ユダヤ人の絆は、何によるのかといえば、

ユダヤ教によってたつことになる。



なかなかユダヤ国家イスラエルの歴史に入れない。

マサダ・コンプレックスを解消していないとは、酷いものだと思う。

まったく当時の反省が見られない。



彼らは、なぜ反ユダヤの嵐にヨーロッパであったのか、

自省する機会をまったく持たない。



ヨーロッパ・アメリカに反ユダヤ主義の火の手が上がったら、

イスラエルに引き篭もり、アラブ世界から滅ぼされたいのか、

と考えてしまう。



ぱくったのは、

「イスラエル」(臼杵陽・岩波新書)