43時間 Ending (ラスト)
C3スタジオ:ディレクタールーム
電源は元に戻り、電源停止前の明るさに戻った。
バロンとカワカミの二人はいない。
マウスが私のそばに駆けよってきて、
「良いんですか!負けたままで!」
タチバナがそれを手で制した。
「すぐにイチロウに電話だ。--------」
私が叫ぶ。
タチバナがスタジオの電話でイチロウにかけた。
スピーカーに繋ぐ。
「イチロウです。」
「トクノリはやってくれたか?----------」
「今、電源停止部隊に連絡を入れてくれました。」
私は溜息をついた。
「良くやった。」
マウスはそのやりとりをなんのことだかわからない。
ピエールもキョトンとした顔つきだ。
「親子の認知の書類も役所が開き次第出すそうです。」
「徳之助さんの遺言にも納得したのか?」
「はい。署名もいただいています。徳之助さんの会社も含めて全てを引き継いでいくそうです。」
「トクノリさんに変わってもらえるか?」
「分かりました。」
暫くしてマツイ・トクノリが電話に出た。
「マツイです。」
「はじめまして。電源停止を思いとどまっていただいてありがとうございます。」
「あなたは、良い部下をお持ちでいらっしゃる。全てここにいるイチロウ君の仕事ですよ。」
マツイ・トクノリの声は、何かをふっきったように明るかった。
「イチロウ君のお陰で、父への誤解が解けました。こちらこそお礼を申しあげます。」
「そうですか。恐れ入ります。」
「ところで、ひとつだけ聞いてよろしいですか?」
「何でしょう?」
「もし、私が父の遺言は引き継いでも・・・電源停止を実行していたらどうするおつもりだったのですか?」
「はは(笑)・・・その時ですか・・・・御父上の全てを引き継ぐと言うことは
WAVE社の〝取締役〟も引き継ぐと言うことです。」
「つまり、私が取締役であるWAVE社の電源停止をしたら・・・」
「ええ。特別背任にあたります。」
「それが、私に電源停止を思いとどまらせる最後の切り札だったわけですね。」
「そうです。」
「なるほど。」
「切り札を使う前に行動していただいて感謝していますよ。」
「いいえ。こちらこそ。いつかお会いできますか?」
「あなたの会社がピンチになった時に(笑)」
「はは(笑)・・・・・なるほど。・・・・なるべくお会いしたくないものですな(笑)」
「ありがとうございました。」
「こちらこそ。」
「イチロウに変わってもらえますか。」
イチロウが出た。
「相変わらず、最後の最後には、かっ飛ばすな。」
「そうでしょう。Yeah!」
「でも・・・億万長者は・・・数分で終わっちゃいましたけどね(笑)」
「良くやったな。お疲れ。」
「あ!・・・電話切る前にリクエストして良いですか。オレのと言うより、トクノリさんのリクエストですけど(笑)」
「もちろんだ(笑)」
WAVE放送局です。
DJは、ロケットマンと山田です。
C2スタジオからお送りしていま~す!
さぁ・・気合い入れていくよう!
トクノリさんのリクエストで
♪♪♪
イチロウとトクノリの電話を切ると、C3スタジオディレクタールームに隣の録音室でDJをしていたクリスとジョンが入ってきた。
入ってきたクリスとジョンはタチバナに駆け寄ると
「あんな演技で良かったんですか?」
「ばっちりだ。お陰で助かった。」
「いいえ。このWAVE放送局が存続する為なら何でもやりますよ。」
マウスが私の前に詰め寄り
「説明してもらえませんか!」
ピエールも近寄ってきた。顔は少し怒っている。
「申し訳ない。お二人には黙っていたんだが・・・・目の前の録音室の放送は本物の放送じゃなかったんだ。
実際は放送されてない。」
「本物じゃない!」
ピエールが目を大きく見開いてのけぞる仕草をした。
クリスとジョンと話し終えたタチバナが、その輪に加わり、〝舞台装置〟の種明かしを私に変わってしてくれた。
「オレも最初、社長からこの話を聞いた時はびっくりしたよ。そんな方法で大丈夫なのかとな。」
「社長の提案?」
マウスが声を高くする。タチバナは説明を続ける。
「そうだ。社長がオレに指示をして、隣の部屋でダミーの放送をしろとね(笑)
時間を30分ほど早くして・・・(笑)
マスタールームのスタッフに、DJ、音声さん・・・スタッフ集めて大変だったよ(笑)」
「って・・・事は、わ・・・わ・・・我々が聞いていたLIVEの放送は全て30分早かった?」
ピエールが驚きのあまり、どもりながらしゃべる。
「いや、30分一気に早めたのではなく、分からないように一時間で5分づつ進めて、
1時間を〝55分〟として番組を構成した。
念には念を入れて、その都度、DJに何時になりましたとか言わせたんだよ。
・・・結果全体で6時間の年間ヒットチャートというダミー番組は・・・午前零時には、30分早まってカウントダウンをしたと言うわけ。
本当の年間ヒットチャートの放送はC2スタジオでやってたんだ。
今の実際の時間は、たぶん・・・11:40分頃だろう。
部屋の時計にも同じような細工がしてある。」
そういって、タチバナがウインクした。
「じゃぁ・・・この交渉の為だけに番組を作った・・・というか、演技してもらってたんですか。まったく大がかりな!」
マウスが額に手を置きながら天井を見るような仕草で言った。
「トクノリが本当に電源停止をするか -------
実際のところオレにも社長にも、ギリギリまで分からなかった。
ならば・・・早めに電源を停止しちゃえって・・・社長が。------
11:30で電源を停止した振りをすれば、WAVE社の株式が無価値になったと思って、バロンは諦めて株を手放すだろうってね。
そこに事情を知らないふりをした徳之助さんが安い条件で買うと提示をするシナリオだったのさ。」
「本気で電源を停止するかわからない状況っだったら、
最後のあのバロンの本気の〝売れ〟の圧力には屈してたかもしれないなぁ・・・(笑)」
私がタチバナの丁寧な説明に付けくわえた。
「11:30分にバロンとの交渉を終え、すぐにイチロウに連絡。残り30分でトクノリの本当の電源停止の行動を止めさせる。ってことだったんですか・・・・ロスタイムを最初から作ってたんじゃないスか!(笑)」
マウスが全部を理解したような表情をした。
「すみません。先生まで騙すことになって。」
私が頭を下げながら話す。
「なるほど。だから、この部屋を選んだんですね。〝放送に支障をきたす〟と偽って、全員の携帯を預けさせた。
しかし・・・腕時計はどうしようと思ったんです?」
「最初にバロンに会った時・・・朝食の時です。
オシャレなのか、癖なのか・・・時間に縛られたくないのか…運が良いことにバロンは腕時計を〝してない〟ことに気付いたんです。
一方で
カワカミの腕時計は、〝G-SHOCK MR-G TOUGH MVT タフソーラー〟
つまり電波時計です。
当然、放送に支障があると・・・この部屋に入る時に預けてもらいましたよ。もちろん返す時は遅らせてね(笑)」
説明を続ける。
「もしもの事を考えて、私もタチバナも、スタッフも、全員腕時計は、進めておきました。
マウスはしてませんし、先生だけです本当の時間の分かる時計をしているのは(笑)
しかし、先生の時計は、スーツの袖が長くてほとんど他人からは見えませんから。」
「社長! なんでオレにも・・・・話してくれなかったんですか?」
マウスが私に顔を近づけ冗談半分に抗議。それをタチバナが引きもどして言った。
「お前は、顔に出るからな(笑)・・・ちょっとでも・・・・・もしも、あの鋭いバロンにバレたらマズイだろ(笑)
悪かったよ(笑)
この作戦はオレとごく一部のWAVEスタッフしか知らなかったというわけ。」
「官僚さんとイチロウさんとクライムさんも知ってたんですか?」
タチバナは黙ってうなずく。
「お前の・・・電源が止まったぁ!という演技は傑作だったよ。(笑)」
「演技じゃないですよ~・・・全く、酷いドッキリじゃないですかぁ・・・!
本当に心臓止まったかと思ったんですから。」
そういってマウスはタチバナの肩を押す。
「騙された。とバロンが後で言ってきませんか。実際には放送局は今も稼働してます。」
ピエールが心配顔になって質問をしてきた。
「良く思い出してください。
だから・・・徳之助さんが、バロンに〝現在もWAVEは問題なく運営されているんだな。〟と聞いたんですよ。」
「なるほど。
相手方のカワカミ弁護士にも、〝わざと〟聞いたんですな。」
「バロン自身が〝WAVE放送局は問題なく運営されている〟とハッキリと明言しています。録音もしています。」
「そうですか。全く・・・そつがない。ならば
バロンが後々・・・
訴訟を起こしても・・・同行した弁護士までもが納得した返事をしています。
ほぼ勝ち目はありませんな。」
「そういうことです。しかし、あのプライドの高いバロンですから、自分から言いだした口頭での契約に訴訟なんてことはしてこないでしょう。」
「そこまで読んでいらしたのですか・・・・大したもんだ。私も騙されました。」
ピエールはそういって、握手をした後・・・・スタジオを出て行った。
闘いの匂いの残るディレクタールームに数分残り・・・
タチバナが言いだした。
「でわでわ・・・・俺らも帰りますか。」
「そうだな。」
私とタチバナとマウスは宇宙船ソユーズの重い扉を開けC3スタジオを後にした。
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送出センター前の道路
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送出センター前に止まっている車にマツイ不動産の電源停止部隊が乗っている。
「結局、社長から電源停止をやめるように連絡が入るとはな。」
チームリーダーのコンドウが煙草をふかしながら言った。
「自分は良かったですよ。WAVE放送局が終わらなくて。」それに若いマナベが答えた。
「でも、何でコンドウさんは・・・なんか・・・わざと電源停止作業をゆっくりとしてませんでしたか?まるで時間稼ぎのように。」
「ふん。分かったか。」
「ええ。」
「なんかな、社長から電話が来ないか・・・待ってたんだと思う。
オレも実はWAVEはいつも車の中で聞いてたんだよ(笑)」
「そうだったんですか(笑)」
「もうそろそろ新年ですよ。仕事も終わったんだし・・・どっか飲みにでもどうスか?」
「いいねぇ・・・」
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徳之助の病院:VIPルーム
クライムと徳之助がいる。
徳之助のベットの傍らにはラジオが置かれ、そこからWAVE放送局が流れている。
トクノリのリクエストした曲が聞こえていた。それは徳之助がいつもリクエストしている曲だった。
「ありがとうございます。」
クライムは徳之助に頭を深く下げた。
「ふん。お前らの為じゃない。」
徳之助はそういうと首をのばし、顔を右手でさすり、
その手を白髪の髪のところまで上げ、後頭部のほうまで動かし、
何度か掻くような仕草をした後、手を浴衣の膝に置いた。
「上手く言ったようじゃな。」
「ええ。先程・・・うちの社長から連絡がありました。」
「そうか。」
徳之助は顔を病室の窓際に向け外を見た。
「おさらばじゃな。」
徳之助は窓の外を見たままでしゃべる。
「はい。」
「WAVE放送局の手術が終わったのなら・・・
お前ら殺社屋とも・・・もう二度と会うこともあるまい。」
「はい。」
クライムは再度深く徳之助に向ってお辞儀をし、病室のドアに手をかけた。
その後ろ姿に向けて徳之助が声を出した。
「息子にたまには見舞いに来るように言え。」
「トクノリさんにですか?」
「バカもん。
イチロウにじゃよ。」
そういう徳之助は首の皺を伸ばし頬を上げ
笑っていた。
「了解しました。」
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送出センター前の道路
マウスとタチバナと・・・そして私。
「まだ、寒いですね。」
本当の時刻。午前11:51分:30秒
青山通りは、殺社屋のメンバーが集まった時と同じように街灯が
オレンジ色に黒灰色の道路を照らし、三人の息は白い。
タチバナが煙草に火を点ける。
吐いた煙が道路に流れ、初詣に向かうのか・・・明治神宮に向かうタクシーの風に混ざり、
凍てつく外気と合わさり斑模様を描いた。
「やっと・・終わりましたね。」
「そうだな。」
「紅白歌合戦、終わっちゃいましたよ。」
「オレは録画しといた。」
「LIVEで見るから面白いんでしょ。」
「LIVEだと、今回のように自分で思いこめばいい(笑)」
イチロウがタチバナのその言葉に反応し、手をたたく。
「タチバナ・・あのカワカミって弁護士・・・」
「なんかありました。」
「いや・・・バロンと一緒に部屋を出る時にオレの耳元で一言ささやいたんだよ。」
「何てです?」
「良いお年をとな。」
タチバナは少しびっくりしたような表情を浮かべ、数秒程・・・考えた顔をし
「あいつ・・・知ってたんですね。」
「そうらしいな。」
「でも・・言わなかった。」
「ああ。」
タチバナは煙を深く吸い込み、長めに吐きだした。
「きっと------自分の正義に従ったんでしょう。弁護士である前に、自分の正義にね。」
「そうか・・・・。」
「それと、これは蛇足ですが、あいつ、オレの前も詮索してました。抜け目がありませんね。」
「醜いアヒルの子だったことか(笑)」
タチバナは黙って口の端を上げ、鼻から息を抜いた。
マウスがミッションは終わったからか少しハシャギながら
「いいねぇ・・」
タチバナが反応する。
「社長はどうです?」
「いや、オレは帰るよ(笑)」
「そうですか。」
一礼をしてタチバナとマウスは、タクシーを捕まえ年末の青山通りに流れていった。
寒く人気のない通りを少し一人で歩く。
そこへ
携帯が鳴る。
官僚からだった。
「お疲れ様です。」
「お疲れ。」
「こっちも全て上手くいきました。
徳之助さんが11.7%及びバロンの43.7%。合わせて55.4を収得したと取締役会に報告したら、一部ざわめきがありましたが、最後は全員納得しました。
裏切った取締役と総務部長は全て年明けに辞表を出すようです。」
「そうか。」
「上手くいきましたね。」
「危なかったよ(笑)・・・正直。」
「ええ。」
「T社長はどうしている。」
「泣きながら、〝これからもがんばります!〟って熱弁をふるってましたよ。」
「よかったな。」
「明日中に、バロンと徳之助さんの株式移動も含めキッチリと事後処理はやっておきますので。」
「悪りぃな。」
「いえ。また、ミッションの時は呼んでください。」
「骨の髄まで・・・殺社屋だな(笑)」
「社長・・・」
「うん?」
「良いお年を。」
官僚との電話を切るとやっと〝空車〟のタクシーが来た。
手を上げ乗った。
運転手は陽気な奴だった。
「お客さんどちらまで?」
「〇〇まで行ってくれ。」
疲れた身体を私は後部座席シートに倒した。
車内にはラジオが流れていた。
WAVE放送局じゃねぇか・・・・(笑)
ロケットマンと山田で~ス。
今年もいよいよ・・・・!
後、5分!
なんか緊張ですね。山田さん!
いやぁ・・・緊張です。今年は特に!
何でです?
いえません(笑)
「すみませんお客さん。
私この放送のファンでしてね。
うるさかったら消しますが?」
テンションの高い運転手が疲れた私に聞いてきた。
「別に良いよ。」
その時携帯がまた・・・・鳴った。
今回のミッションを私に依頼した政治家だった。
「はい。」
「上手くいったようだな。」
「はい。」
「官僚から事のあらましは聞いた。」
「仰せの通り、最安値でWAVE社の株式はバロンから買い戻しました。
まぁ・・・金を出したのは徳之助さんですけどね。なのでかかった費用は
WAVE社の社員におごった夕飯代ぐらいですか(笑)」
「それは、わしに請求してくれ。」
「・・・・・・」
「で・・・WAVE社の今後なんだが・・・
せっかく防御してくれて悪いが・・・近いうちになんとかしなければならんな。」
やっとの思いで敵外国の買収から守ってやった・・・その日に・・・・次のミッションの依頼かい!
このクソ爺・・・・
「今回で分かっただろう。経営基盤が脆弱な企業は常に買収の脅威にさらされる。」
「そうですね。」
「そんな・・・企業が国家の大事な資源を持っているのだよ。ええ!分かるかね
cracking君!それはゆゆしき事態だよ。」
そんなこたぁ・・・言われなくとも・・:・
「で・・・有料の聴取者が払った料金分だけの無料放送を終えたら・・・」
窓の外に凍てつく年末の日本の景色が流れる。
「----------潰してほしい。----------------------」
「簡単に・・・言いますね(笑)」
「今回は防御・・・で大変だったろうが・・・君の専門は
潰すほうだろう・・・・だから・・・・
今回より簡単な仕事と思うが。」
まったく・・・・コタツでみかん食ってる大物政治家は・・・・
「考えておきます。」
返事をして電話を切った。
「お客さん。こんな大晦日に仕事ですか?大変ですね。」
「ええ・・まぁ・・・・」
タクシーの車の中にはWAVE放送局の音が流れ続けている。
いよいよ今年もラスト3分!
興奮です。山田さん!
そうっすね。ロケットマン
「この放送局・・・私・・・毎回リクエスト出しているんですけど・・・
全然ダメで・・・全くリクエストがかかった事がないんですよ。」
聞いてもいないことをタクシーの運転手は愚痴のようにしゃべりまくる。
全くこっちは疲れているのに・・・・
「でも、この放送局、ほんと面白いんですよ。朝出社する時は元気づけてくれるし、疲れた時は癒してくれる。
いい音楽・・・・かかるんですよ。お客さんは、このラジオ聞いたことあります。」
「いや・・・ない。」
「へぇ・・・もったいないっすね。」
「そうやって、乗車するお客さんみんなに宣伝しているのかい?」
「へぇへぇへぇ(笑)・・・こんな良い放送局、みんなに聞いてもらいたいじゃないですか。
私はWAVE放送局の走る宣伝部長ですよ(笑)」
「で・・・誰のファンなんだい?」
「DJですか?」
「いや・・・音楽・・・いつもリクエストしている歌手って?」
「ボノが好きでして・・・U2の・・・新年早々の一発目にかけて欲しい曲を3日前にハガキでリクエストしときましたよ。」
演歌じゃなく・・・見かけによらず洋楽かい(笑)
「かかるといいな。」
「いいやぁ・・今年も諦めてますよ(笑)・・・新年一発目は、すごい数のリクエストらしいですから。
でも・・・もうそんな事を10年もやってます。一度としてかかった事がないですけどね(笑) ははは・・・」
タクシーの窓が見慣れた風景を映し出した。
癖で、自宅の前にタクシーは止めさせない。
ちょっと離れたところに止めてもらい。必ず歩く。
「運転手さん。ここで良いよ。」
料金を払って、後部座席のドアが開く。
車を降りる際、運転手に言った。
「今年は、きっとかかるよ。ボリューム最大にしておけ。
いいかボリューム最大だぞ!」
何を言っているんだ、この客・・・って顔で運転手はオレを降ろして年末の街へ走り去った。
街を歩きながら、私は携帯を取り出し番号を押した。
「WAVE送出センター編成局マスター室です。」
「crackingです。」
「先ほどは、どうもありがとうございました。スタッフ一同、本当に感謝しています。今も放送が続けられるのは皆さんのお陰だと。」
「我々じゃありません。WAVEのみなさんの努力ですよ。」
「で・・・お忘れ物でもされたんですか?」
「ええ・・まぁ・・ちょっとお願いが」
「WAVE社の命運を救ってくれた救世主の方だ。できることなら我々スタッフは何でもしますよ。」
「お疲れのところすみません。あの・・・リクエストするのを忘れてまして。」
「リクエスト? そんなことでしたらお安いごようですよ(笑)・・・で・・・何を?」
「〇〇の〇〇です。リクエスト者名は〇〇でお願いします。」
「はは(笑)・・・ちょっと変わったリクエスト者名ですね。分かりました。
必ずかけます。・・・でも・・・本当にありがとうございました。良いお年を」
「こちらこそ、良いお年を。」
そういって電話を切った。
自宅までの道を少し遠回りした。
煙草一本分。
結局、今年のカウントダウンは一人だ(笑)
来年こそは・・・
DJはロケットマンと山田に加えてクリスとジョンも参加してくれましたぁ・・・
さぁ・・・今年も後1分を切りましたねぇ・・・
どうだった今年は、クリス
う~ん。すぐに終わっちゃったって感じぃ~でも最後は、OKって感じかな。ペロペロ。はぁ~い
ちなみに・・・いっとくと最後のエンドロールは、あなたのブラウザの〝更新ボタン〟を一回押せば
最初から始まるよ。曲に合わせてみてね
じゃぁ・・・
カウントダウンはじめるよう。
みんな一緒に!
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
HAPPY NEW YEAR!
じゃぁ・・早速新年最初のリクエスト行きまーす!
タクシードライバーさんのリクエストで
この曲どうぞ!
「43時間」 The end 。