「世襲をやめよう」の掛け声に消極的な、麻生内閣!!?? | 東京リーシングと土地活用戦記

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田原総一朗の政財界「ここだけの話」
「世襲をやめよう」の掛け声に
消極的なあの人

2009年5月8日

 現在、自民党の選挙対策委員会は、委員長を古賀誠さん、そして副委員長を菅義偉(すが・よしひで)さんが務めている。
 その菅氏が、現在の世襲制に対して制限しなくてはならない、規制すべきであると主張し、これに対して自民党内で非常に反対が多く、今、もめている。

多すぎる世襲議員

 ちなみに自民党では、衆議院では2世、3世といわれる議員が現在108人。自民衆院議員全体の約35%に当たる。つまり3分の1以上が世襲である。対して民主党は16人。全体の14%が世襲となっている。

 ともかく、3分の1以上が2世、3世となってしまっていることに対して菅さんが「これは自民党の危機である。こんなことをやっていては、自民党の将来は全くない。したがって(議員の世襲を)規制すべきだ」と発言した。

 しかし、何しろ今、世襲議員が多すぎる。

 例えば、歴代の首相経験者を見てみると、宮沢喜一氏、細川護煕氏、羽田孜氏、(村山富市氏=非世襲)、橋本龍太郎氏、小渕恵三氏、(森氏=非世襲)、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、福田康夫氏、麻生太郎氏といったように、村山氏と森氏以外は世襲議員が総理大臣になっている(森氏の父は町長だったが国会議員ではなかった)。

 私は、菅さんの主張はとても正しいと考えており、全面的に賛成なのだけれど、自民党の世襲議員たちはこぞって反対し、何と、菅さんは孤立せんばかりの状況になっている。

 世襲がなぜいけないか。それははっきりしている。3つ理由がある。

 まず、3割以上が世襲議員になると、この国のために働きたい、国民のために政治家になりたいと思う若い政治家たちが国会議員になれない。
 しかも、日本の選挙制度は小選挙区制である。中選挙区制のときは無所属で出馬するという道があった。現に、森喜朗さん、渡部恒三さんら世襲ではない人たちは、無所属で国会に打って出ようとした。
 当時は、自民党に公認された候補もいるけれども、無所属で立ち、地元の有権者の支持を得れば当選できるというチャンスがあった。
 しかし、今は小選挙区制になり、その選挙区から一人しか当選できないので、無所属が立候補する余地がまったくなくなってしまった。
 そういうふうに世襲で固められてしまうと、この国のために働きたい、頑張りたい、活躍したいと思う人間が政治家になれなくなってしまう。そういう問題がひとつ。

議員の世襲は「天下り」のようなもの

 次に、世襲とは親から子への一種の“天下り”みたいなものだ。
 今、公務員の天下りが非常に問題とされているが、国会議員というのは特別職の公務員、つまり公務員だ。議員の場合は、親から子への天下りであり、しかも単なる天下りでなく、地盤とカバンまで引き継ぐことになる。
 カバンというのはカネであり、これはまさに時代錯誤的なやり方だろう。その上、この天下りがどんどん増えている。そこに重大な問題があると思う。

 さらに、世襲されれば、議員は一部の政治家の「家業」になってしまう。国会議員は国民の代表であるべきなのに、「家業を引き継ぐ」となると、国民の代表とはいえなくなるだろう。
 今、自民党があまりにも長く政権の座にいすぎて、国民は飽き飽きしている。国民のその気持ちを、世襲は、数倍にも助長する役割を果たすことになる。
 こうした理由から、菅さんは「世襲をやめよう」と主張している。

小泉元総理の息子も出馬予定

 おそらく8月に行われるであろう総選挙には、新しい世襲候補が自民党から3人出馬する。
 第一は小泉純一郎氏の息子、進次郎氏(神奈川11区)。次に臼井日出男氏の息子、正一氏(千葉1区)。さらに、栗原博久氏の息子、洋志氏(新潟4区)。この3人が立候補すると言われている。
 小泉さんは、総理大臣のときは改革につぐ改革をやった。今、改革についてとやかくいう人は多いけれど、私は、小泉さんの構造改革を、あの時代としては正しかったと考えている。
 だから首相・小泉純一郎を評価していたが、「後継ぎにする」と次男を紹介したときにはがっかりした。「なんだ、これは」と。次男を後継ぎにするとした時点で、私は、小泉さんの構造改革は帳消しだとすら思っている。

 世襲が問題になっている今、この3人の新人候補をどうするのか。菅さんに、これを認めたら国民から「やっぱり、そうか。どうしようもない」と言われるだろうと尋ねたところ、彼は、実はこの3人の公認は既に決めてしまったので、(世襲規制は)次の選挙からだと、そして、世襲を認めないためには三つの方法があると言った。
 一つ目は「公認しない」。これは一番わかりやすい。
 二つ目は「選挙区を変える」、つまり地盤を引き継がない。例を挙げれば、石原伸晃氏だ。慎太郎氏の息子だが選挙区を変えている。
 三つ目は「予備選をする」。選挙区、つまり地盤、看板、カバンは変えないけれども、衆院選の前に、その選挙区で予備選を行い、何人もの新しい人が立候補して、その中から候補者を決める。この三つである。
 そこで菅さんに、この三つのうち予備選はどうか聞いてみたが、彼は、予備選をしても世襲候補が勝つに決まっているので、これは全くだめだと。そして、最も望ましいのは一つ目、つまり公認しないことだが、強いて妥協するなら選挙区を変えることだと答えた。しかし、それは次の選挙からとなる。
 ところが何と、現総理大臣の麻生さんはこの世襲制限に対して非常に消極的、つまり“大”消極的で、ほとんど反対と言っていい。
 本来なら、吉田茂氏の孫として世襲規制の先頭に立たなくてはいけない麻生さんが、極めて消極的なのは、国民に対して「もう自民党に投票するな」と言うのにほぼ等しいのではないかとさえ思ってしまう。
 そういえば麻生さんの景気対策について、4月下旬の世論調査では「評価する」と答えた国民は3割しかいない。5割以上が「評価しない」と答えた。
 そして現在、新しく補正予算を組んでいるが、これに対しても国民の目は極めて冷たい。今は大変な不況で国民は苦しんでいるのだから、本当なら約14兆円にものぼる補正予算案に賛成をしてもいい。ところが国民の反応は冷ややかで、むしろ反対が多い。
 なぜか。これは世襲問題とつながるのだけれど、国民が今、求めているのは改革だからだ。

だからこそ自民党は世襲をやめるべきだ。

公務員改革も志半ばで……

 さらに、渡辺喜美氏が主張した公務員の管理の問題も大きい。

 公務員の人事はこれまで各省庁が持っていた。だから公務員たちは総理大臣つまり官邸の言うことを聞かない。皆、省庁のトップの言うことを聞く。
 つまり典型的な縦割り行政だから、日本をこう変えよう、こうしようという大きな改革が全くできない。現状を維持しようというのが官僚の根本的認識で、しかも縦割りとなると、改革が全くできない。
 そこで渡辺氏は、行政改革担当相のとき、縦割りをやめ、官僚の人事を官邸に持ってくる、渡辺喜美的な言い方をすると「日の丸公務員」としようとした。そして、公務員全体ではあまりにも数が多いので、幹部人事を官邸で行おうとして、内閣人事局を作ろうと要求した。
 これは人事局を内閣に置き、縦割りを廃すとした渡辺氏の悲願だったけれども、この案はねじれにねじれて、結局、内閣人事局の幹部には各省庁の幹部が横滑りすることになった。
 しかも、人事局のトップには官房副長官がなることになった。官房副長官とは、例えば後藤田正晴氏がそうだったけれど、各省庁から選ばれた、あるいは総理大臣が選んだ官僚の代表である。
 そのため、官房副長官がトップになるのでは内閣人事局の意味がない。これには、中川秀直さんや塩崎恭久さんが大反対したが、結局は官房副長官に決まった。

 これはつまり、「改革をうたいながら改革しない」という改革、うそっぱちの改革だ。

地方負担金の問題もある

 今度の予算や補正予算に国民が非常に冷たいのは、現状維持の上での予算であり、現状維持の上での補正予算だからだ。
 例えば、今の日本の大きな問題として地方分権が挙げられると思う。明治時代からの中央集権の弊害は改めて言うまでもなくいろいろあり、地方分権は進めなくてはならない課題だ。
 国の直轄事業に地方の負担金がある。事業費の3分の1を負担しているのに、中央はそのカネがどう使われるのかを地方自治体に一切、知らせない。勝手に使っている。だから、この地方負担金に大阪の橋下知事らは大反対している。
 さらに、行政を担う国家公務員は約33万人いるが、そのうち何と約21万人が、例えば近畿財務局などの地方局にいる。地方分権改革推進委員会では、この地方局を地方自治体に入れるという大きな改革案を提出したが、これは抹殺されてしまった。地方分権となって困るのは国家公務員だからだろう。だから改革案を抹殺した。
 要するに、麻生内閣の特徴は改革すべきことを全て現状維持に変えてしまっているといえる。予算を含め、そして内閣人事局、あるいは地方分権を含めてだ。
 つまり今度の予算は、改革しなくてはならないことを全部やめて、現状維持の上で作られた予算ということになる。しかし国民は皆、現状維持では日本は持続できないとわかっている。
 麻生内閣は改革の流れをみんな封じ込めてしまった。その最も象徴的な問題が、世襲制度だ。菅さんは麻生総理を一番支持していて、麻生さんも一番信頼している政治家だ。
 しかし、その麻生さんがこのように改革をすべて封じ込めていては国民は支持しようがないじゃないかと、菅さんは言う。せめて世襲をやめさせようとしているが、これにも麻生さんは“大”消極的で事実上反対している。

支持率アップも「敵失」が大きい?

 去年の秋から今年の初めにかけて、今度の選挙では民主党が圧倒的に勝つと言われていた。ところが、西松問題で小沢代表の秘書が逮捕されて以後、民主党の支持率が下がってきた。
 そのために麻生内閣の支持率が上がり、NHKの調査では30%にまで達した。
 しかし、これは麻生さんが点数を稼いだわけではない。敵失、つまり民主党のエラーによるものだ。したがって、もしかすると大敗北だと言われていた今度の選挙で勝つ可能性も出てきたが、支持率が上がったのは、もともと自民党の支持層で民主党支持に回っていた人たちが、今度は、民主党もだめだと戻ってきたからといえるだろう。
 そんな時期に改革反対を露骨に表したら、せっかくのチャンスも台なしになるのではないか。麻生さんは、なぜこのことに気づかないのか。私はそのことを言いたい。

田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年滋賀県生まれ。早大文学部卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経て、フリーランスのジャーナリストとして独立。1987年から「朝まで生テレビ!」、1989年からスタートした「サンデープロジェクト」のキャスターを務める。新しいスタイルのテレビ・ジャーナリズムを作りあげたとして、1998年、ギャラクシー35周年記念賞(城戸賞)を受賞。また、オピニオン誌「オフレコ!」を責任編集。2002年4月に母校・早稲田大学で「大隈塾」を開講。塾頭として未来のリーダーを育てるべく、学生たちの指導にあたっている。最新刊に「ズバリ!先読み 日本経済」(アスコム)がある。Nikkei BPnet




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