「国交省不況」住宅・マンションから工場・店舗へ | 東京リーシングと土地活用戦記

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「これじゃ『国交省不況』だよ、まったく」。大手不動産デベロッパー幹部が吐き捨てた。

怒りの矛先が向いているのは、建物の安全性など建築確認の審査が厳しくなった改正建築基準法。2段階の建築確認を義務づけ、審査期間がそれまでの21日間から最大70日間に延びたことなどで住宅・建設業界は大混乱に見舞われている9月の新設住宅着工戸数は前年同月比44%と過去最大の落ち込み。管轄の国土交通省に八つ当たりしたくなるのも無理はない。

この幹部は「改正法の影響は住宅業界に限らない」とも言う。主力工場の着工が遅れ、店舗の建設と開業がずれ込む――。改正法に端を発する混乱は今、全国各地に 広がっている。

スピード許可、市が全面協力





大阪府堺市臨海部で動き出したシャープの1兆円プロジェクト。市側の手厚い協力体制もあって建築確認の審査は円滑に進んだ

大阪湾を望む大阪府堺市。東京ドーム27個がすっぽり入る127万㎡の敷地に杭打ちクレーンが所狭しと立ち並び、工場用地造成が急ピッチで進む。

事業主はシャープ。最先端の第10世代液晶パネル工場、世界最大の太陽電池工場などを集積し、投資額はインフラ整備を含めて1兆円に上る。

液晶工場の建築確認の申請は10月2日。許可は30日に下りた。「11月着工予定」(片山幹雄社長)の準備が整い、まずは順調な滑り出しだ。




実は、こうした大規模工場で、申請から28日という短期間で建築確認の許可が下りるのは極めて異例だ。建築物を新設する企業の多くが利用する建築確認の民間検査団体が慢性的な人手不足に陥っており、それが審査の遅れを招いているからだ。

シャープは今回、行政肝いりの事業で機密事項も多いことを理由に、堺市役所に審査を依頼した。市側も、法改正に合わせて大阪府が新設した事前審査制度を活用。正式な申請が出る約2カ月前から予備的な審査を進めた。シャープ専属チームを組織する力の入れようで、審査作業に携わった職員は「遅れは許されない、しっかりやってほしいと大阪府から要請があったらしい。もう綱渡りでした」と打ち明ける。

この計画は堺市や大阪府が熱心に誘致した案件だけに、仮に審査が遅れて着工、稼働もずれ込む事態になったら、行政のメンツは丸つぶれ。破格の厚遇で何とか間に合わせた格好だ。

しかし大半の企業では、シャープのような特別扱いは望めない。口中清涼剤「仁丹」で有名な医薬品メーカー、森下仁丹。武貞文隆取締役が憤る。

「事業計画にまで狂いが生じたら、どうしてくれるのか。姉歯(秀次被告)に文句の1つも言いたくなる」

大阪府枚方市に工場と研究開発施設を2009年1月をメドに新設する計画で、今年9月着工の手はずだった。だが、建築申請そのものが10月にずれ込み、まだ認可が下りていない。 医薬品を製造するので、GMP(医薬品等の製造管理及び品質管理規制)という基準をクリアするための特殊な内装工事も必要になる。GMPは建築確認許可と別に取得しなければならず、建屋だけが完成してもGMPの許可がないと製薬工場としては使えない。


国交省の調査では、民間建築物の着工床面積は法改正後の7月から3カ月連続でマイナス。影響は工場だけでなく店舗、倉庫に満遍なく及ぶ。

家電量販・建材が下方修正

仙台駅から地下鉄とタクシーを乗り継いで約30分。東北自動車道のインターチェンジに近い泉大沢地区で、イオンのSC(ショッピングセンター)の建設が進んでいる。 イオンの仙台泉大沢ショッピングセンター。年内開業の予定だったが2008年春に延期




11月17日にここを訪れると、仮囲いに張られた「工事のお知らせ」の標識には、完了予定日は11月30日とあった。だが、進捗状況からは予定通りの完成はどう見ても無理。イオン側はオープン予定を当初の2007年12月から2008年春に延期したという。

理由は、やはり建築基準法の改正。計画発表後に、SC内の専門店の約1割を入れ替えた結果、建物の区画も見直さなければならなくなり、いったん下りた建築確認の許可を再び取るのに時間がかかった。

福島県の商業施設で、開発業者が建築確認許可が下りる前に「フライング着工」し、県当局から是正指導を受けるという騒ぎもあった。製造業の工場と異なり、新設店舗の開業遅れが足元の収益を直撃するのが小売業だ。

 008年3月期の連結売上高予想を6050億円から5970億円に引き下げた家電量販のケーズホールディングス。今期中に32店舗の出店を計画していたが、うち10店舗が来期にずれ込む。経営幹部の1人は「建築確認の手続き遅れという、予期せぬ問題に足を引っ張られた」と顔をしかめる。法改正の混乱が、実体経済にじわじわ及んできた様子がうかがえる。




2008年3月期の業績予想を下方修正した文化シヤッターや三和ホールディングス、住友軽金属工業などのビル建材関連メーカーは、「建築基準法の改正で需要が落ち込む」と口を揃える。

東京証券取引所第1部上場企業の今期の経常利益は8%伸びる見通し(新光総合研究所の集計)だが、勢いには陰りが見える。2007年9月中間期決算で減益になった企業の割合は45%と昨年の中間決算時(37%)を上回る。通期予想を上方修正した企業が昨年の37%から26%に減った一方で、下方修正は24%から29%に増加した。

米のサブプライムローン(信用力が低い個人向け住宅融資)問題による金融機関の損失発生や為替の円高進行による製造業の採算悪化…。海外から吹きつける逆風は強まるが、そればかりに気を取られていると、景気の足をすくわれかねない。法改正に伴う混乱がもたらす衝撃は思ったより強烈かもしれない。

日経ビジネス2007年11月26日号より抜粋


 大変な問題に発展しています。全国に波及している「国交省不況」は、個人戸建て住宅・マンションから事業用工場・店舗・倉庫など、全国の確認申請がいる建築物すべてに波及しています。建設関係労働者は、日本の全就業者の十分の一、6500万人の十分の一にあたる、650万人です。そして、関係者・家族などを入れるともっと大きな人数に影響を及ぼします。資材関係、流通関係、通信関係など多くの業種も影響されます。10月の建設会社倒産数は、前年比140パーセントです。これから年末にかけより増加していくでしょう。また、半年あとのタイムラグがもっとも危険です。より社会問題化していきます。国の将来を見据えた早急な対策・対応が必要になってくると思われます。のんびり消費税アップの議論をしている場合ではありません。