バイオハザードと言えば、カプコンが世界に誇る人気ゲームである。私はあのゲームが大の苦手だ。



高校生活の終わりごろだっただろうか。私の友人の一人が、バイオハザード一作目の発売前から「面白そうなゲームがある。」としきりに言っていた。彼はカプコンの他のゲームに付属していたプロモーションのCD映像を見せてくれた。


彼は


「映画みたいじゃない?」

「ほとんど日本人スタッフだけで作ってるらしいよ」


などと興奮気味に語っていた。

しかし、当時カプコンと言えば対戦格闘ゲームであり、


「こんな会社の色と違うゲーム作って大丈夫かよ。」


と私は思った。第一、私は怖いものが大の苦手だ。遊園地のオバケ屋敷も自らは絶対入らない。私はそのゲームに興味を持つことはなかったのである。



それからどれくらい経っただろう。前出の友人(以下S君)と別の友人(以下M君)の家に遊びに行くことになった。三人とも仲の良い友人同士だった。
M君の家に着くと、S君は「こないだ言ってたゲーム買ったんだけど、すごい面白かったよ。」と言い、バイオハザードのソフトを取り出した。
私はもちろん、やりたいとは一切言わなかった。M君はかなり興味を持ったようだが、操作法を聞いたりするうちに面倒くさくなったらしい。結局持ち主のS君がプレイするのを私とM君で見ることにした。
S君は慣れた操作でキャラを操作し、次々とゾンビを倒して行った。M君も簡単そうな所では操作を変わったりして楽しんでいるようだった。私は目を背けたくなるほどの恐怖感こそなかったものの、やってみたいとは微塵も思わず、友人が操作する画面を見るのに終始した。
終盤までは進んだものの、ゲームクリアまでは至らず、私とS君は自宅へ帰る時間となった。その頃にはM君はすっかりバイオハザードを気に入ったらしく、「お金に余裕があれば買うのに。」といったようなことを言っていた。


異変が起きたのはその日の就寝後であった。私はゾンビに追い掛け回される夢を見た。バイオハザードの影響なのは明らかだった。


私は前にも似たような経験があるのを思い出した。小学生の時、S君の家で「スウィートホーム」というホラーゲーム(故・伊丹十三氏の映画をゲーム化したもの)を見せてもらった後にもひどい悪夢にうなされた経験がある。そういえばあのゲームもカプコンから発売されていた。ちくしょう、カプコンめ!!
数日後、今度はS君の家へM君と遊びに行くことになり、(M君の希望で)前回中途半端に終わったバイオハザードをエンディングまで見せてもらった。
他のゲームも十分楽しんだはずなのだが、その日の夢の中で私の住む町は大量のゾンビに襲われて壊滅していた。


その後、大学に入学した後、「あれだけヒットしたからには自分でプレイしたら面白いのかもしれない。」と思い、周りの人たちに「バイオハザードの魅力は何か。」を慎重にリサーチした上でバイオハザード(ディレークターズカット版)を購入した。
結論からいうと、


「怖くて泣きそう。」


という理由で途中断念した(当時19か20歳)。プレイしていた数日間、ほとんど毎日ゾンビに追われる夢を見た。
その後も雑誌でバイオハザード2の記事を見ただけで夢に見たり、エスカレートする一方であった。
バイオハザードはその後、続編も大ヒットして映画化までしたわけだが、もう絶対にゲームにも映画にも手は出さないだろう。映画のヒロイン役、ミラ・ジョヴォヴィッチは割と好きなのだが。
ちなみに映画の情報を見ただけでは夢にゾンビは出てこなかった。どうも一番弱い普通のゾンビのうめき声が一番苦手のようである。

【2005年2月5日に書いた文章の転載】