GW最終日に東京駅で乗り換える機会があった。
何とはなしに連絡通路を歩いていたら
大丸で「ムーミン展」を開催中とのポスターに遭遇。
そのまま自動的に会場に向かった私である。

「ムーミンが好き」

これでまたひとつワタクシのゲイ疑惑が
濃厚になったワケだが好きなモンは好きなのだから仕方あるまい。
とはいえ、ムーミンのあのポニョッとした体型が愛くるしいとか
キャラ主導型ファンってのじゃなくて、
あの世界観、けっこう陰鬱とした中での密やかさに
何となく俺の中の「妖怪好き」な部分が反応している、
そんな感じで昔から「ムズムズと何となく好き」ってトコだ。
だから実は、ムーミンの本を全巻持っているとか
アニメは全部ダビングして100回観てるとか
そーゆー努力は一切してないし
そもそも話の筋なぞ、ほとんど覚えちゃいない。

「昔、放送されていた頃、一通り観て、その時の印象が
 結構自分の感覚にフィットしたような
 気がしないでもないでもないないない恋じゃない♪」的な。

だから今回は、ずっと抱えていたムーミンに対する
印象や感覚を確かめに行こうと思った、ってのが
一番ホントの気分に近い。
「アレは何だったんだろう」みたいな。

作家トーベ・ヤンソンって人がキャラを作り、話も書いたってことを
今回の作品展で初めて知ったのだが
彼女のイラストレーターとしての力量に触れる作品展でもあった。
クリエイトの次元が高い。これは素直に感動。
かなり濃密な「作品展」になっているので
いつまでの期間なのか知らないが興味のある人は
各自行くといい。
以上、展示会の報告。

実は書きたいことはココからなのだ。
今までのは前フリ。

「デパートの展示会」では、お決まりのコースで
展示会の出口=グッズ販売会場となっているものだが
今回の「ムーミン展」も同様で、さすがキャラクターとして
完成度が高いムーミンであるからして
グッズの量もハンパなかった。
この売り場の中では、やや異彩を放っていたのが

不思議の国のアリス/ルイス キャロル

¥1,575
Amazon.co.jp

トーベ・ヤンソンが挿絵を担当した『不思議の国のアリス』だ。
もはやムーミンでも何でもないが話を進めるぞ。で、
会場でこれを見つけ即購入した。なぜなら

「不思議の国のアリスが好き」

という、またしてもゲイ疑惑がというか
もう疑惑でも何でもないかもしれないのだが
俺の新たな側面があるからに他ならない。
実は、俺の手持ちの本の中にはこんなものがある。

茶漬けなら「梅」-09-05-08_004.jpg

あ、コレもあるのかな?

不思議の国のアリス (新潮文庫)/ルイス キャロル

¥500
Amazon.co.jp

あった(w コレコレ。
コイツは挿絵を金子国義が描いている異色本だ。
金子国義をご存知ないか?
ラムネやミドリコ辺りが喜びそうな
若干倒錯気味の世界観を持つ画家・イラストレーターだ。
「不思議の国アリス」は、この作家にうってつけの題材で
さすがに良い絵を提供している。

「金子国義が好き」

というと最早、確信に近いレベルで
俺のゲイ疑惑が露呈しまくってしまうのだが
彼の絵は昔から好きで、この挿絵のために
この本をずいぶん前に購入してたのだった。
この2冊が手元に揃ったところで
久しぶりに読み比べをしようかなと思っているところ。
訳者が違うから作品世界のトーンが違ってくる。
そこが面白い。
たとえば、これくらい違う。

訳/村山由佳 絵/トーベ・ヤンソン
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『イズミへ出かけ た猟犬がネズミに出くわ し言ったとさ、
 「さあ行 こうぜ法廷に、てめえを起訴してやろうじゃん。』

訳/矢川澄子 絵/金子国義
茶漬けなら「梅」-09-05-08_006.jpg
『うちでであったネズミ公に、 猛犬フュリーがいったと さ。
 〈さあ法廷にでかけよう。おれはおまえを起訴するぜ〉』

全然違う。
お前らちゃんと訳してんだろな。
原作読めないからって
テキトーに訳してんじゃねえぞコノヤロウ的に
ケッテー的に違っちゃむのだ。
これに加えて挿絵までもう全然違うことになるのだから
作品としての世界観まで違ってきちまう。
金子は“少女アリス”を描きたいのに対して
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トーベ・ヤンソンは、やっぱり寓話的世界の
その中でも妖精・偶像・妖怪的な“異形のモノ”たちに
愛情を注ぎまくってしまうのだろう。
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主人公のアリスなんて実に淡白な存在だ。

ちょっと面白い読書がしばらくできそうだ。