日本という恵まれた先進国に住んでいていると思っている人にとってはかなりショッキングな事実かもしれませんので心してお読みください。
まだこちらで職探ししてた時、この記事の年収の項目で2009年と少し古い統計ですが「都市別年収ランキング」をリンクしていました。この時の情報では
【平均年収(税引前)円換算】
東京:380万円
オークランド:196万円
となっていて、これを見て「なぜキウィはこの平均年収で生活していけるのかいつも不思議」なんてコメントをしていました。田舎とは言え西洋先進国での一つであるニュージーランドが日本の年収の半分しか稼げないなんて、かなり意外だったからです。
ただ、色々調べてみると2009年の日本の平均年収は406万円という数値も出てきて、この情報の信ぴょう性がよくわからなくなってきました。円換算なので多分どの時点での為替レートを使うかでも大きく変わってしまいます。そこで、入手可能なもっと最近(2012年)のデータで自分なりに比較し直してみることにしました。
そして、より実際の感覚に近付けるため、以下の基準を採用しています。
●個人所得ではなく世帯所得
●平均(average)だけではなく中央値(median)も対象に
特に年収のように上位と下位の差が激しい指標の場合、平均値は一般的な家庭の状況を反映しなくなってしまう場合があります。たとえば極端な例でサンプルの中にビル・ゲイツが入っていた場合、彼一人の所得でサンプル全部の合計値をメチャクチャに押し上げてしまうため、平均所得だと「1億円超」みたいな数値が出てきてしまうのです。中央値はサンプルの中の真ん中に位置する人の年収なので、ビル・ゲイツが入っていても影響はほとんど排除されます。
ということで、まずは日本の統計を見てみましょう。
2012年の世帯所得は以下の通りです。
平均値:537万円
中央値:432万円
※ソース「平成25年 国民生活基礎調査の概況」
やっぱり平均値と中央値では100万円以上の差があるんですね~。数少ない高所得世帯が平均をグッと引き上げているので、この差が大きければ大きいほどいわゆる「格差」が大きな社会になっていると見ることができます。
平均年収の方はバブル崩壊後の1994年の664万円をピークに徐々に下がってて、この後の2年もアベノミクスの効果は表れてなかったことが最近明らかになってきたので、2014年現在も良くて2012年と同水準であると考えておいていいでしょう。
一方ニュージーランドの2012年の世帯所得です。統計の基準が2012年6月時点なので厳密には日本の統計と半年ほどズレていますが、これが比較できる一番近い情報だと思います。
平均値:$80,600
中央値:$67,808
※ソース「New Zealand Income Survey: June 2012 quarter」
まず日本と大きく違うのが、ニュージーランドは長期間にわたり緩やかにインフレしているので、世帯所得も確実に上昇しています。小さい国なのでもう2014年6月の統計が発表されているため、参考までに同じ項目を見てみると
平均値:$88,712(↑$8,112)
中央値:$73,944(↑$6,134)
と、この2年で約10%世帯所得は増加しています。ちなみにニュージーランドの物価は緩やかなインフレ傾向ではありますが、ここ2年くらいは年率1%程度の上昇に収まっているのでちょっと得した気分(笑)。年々所得が減っていく日本と増えていくニュージーランド、しかもこの状態が10年以上続いてるって考えるだけで日本人として憂鬱になってしまいます。。。
平均値と中央値の差は日本と同じ程度の開きですね。ニュージーランドの方がもっと格差社会かと思ってましたが、この数字だけを見るとそんなこともなさそうです。
さて、2012年の比較を続けてみましょう。次のステップは同じ通貨(今回は日本円)に引き直すことです。
ここでいつの為替レートを使って計算するかで結果は天と地ほど変わってくるんですが、まずは2012年の統計なので2012年の年末レート(TTM)を使って計算してみたいと思います。1 NZドル=\71だったので結果は
平均値:$80,600×¥71=¥572万円(537万円、-35万円の差)
中央値:$67,808×¥71=¥481万円(432万円、-49万円の差)
となりました。括弧内は比較しやすくするために最初に書いた日本の世帯所得、及びニュージーランドの世帯所得との差額を並べておきました。
なんと、2012年時点で「日本の方が所得は高い」という認識は間違っていたことになります。
ここで更に意地悪な比較を追加してみましょう。
ご存知のように最近急激な円安が進んでいて、今日時点で1 NZドル=¥92.8となっています。
仮にこの為替レートで上記の2014年6月のニュージーランド世帯所得を換算し、日本の2014年世帯所得は2012年と変わらなかったとするとどうでしょう?
平均値:$88,712×¥92.8=¥823万円(537万円、-286万円の差)
中央値:$73,944×¥92.8=¥686万円(432万円、-254万円の差)
この差はちょっと驚愕でした・・・((((;゚Д゚))))
もう先進国と発展途上国くらいの差です。
もちろんこの最後の計算は極端な仮定の元に行っているもので、特に為替相場は異常とも思える最近の上昇を固定係数として扱っているところはフェアな比較じゃないかもしれません。過去のトレンドをみても為替は大きな波を描いて上下するのでまたいずれは50円台、60円台をウロチョロする日が来るでしょう。
でも、日本の所得が下がり続けてニュージーランドの所得が上がり続ける流れは当面(次の10年くらい?)変わらないんじゃないかな?と思います。そうなると一番円高の時に換算しても日本での収入がニュージーランドを越せない時が近いうちに到来するはずです。
かつて日本は経済大国と呼ばれ、物価は世界トップクラスで高いけど、その分給料もたくさんもらえる魅力のある国だったような気がします。そして僕が移住を考えていた頃、「ニュージーランドは小国で日本のようにガツガツ稼げないけど、ワーク・ライフバランスを大切にする物質主義から距離をおいた伸び伸びした国」ってイメージがありました。
どうやら数年前からそれは当てはまらなくなっていたみたいで、日本は経済規模がはるかに小さい、羊の数が人口を何倍も上回る、超のんびりした牧歌的国家ニュージーランドよりも全然稼げない国になってしまったようです。。。
この結果を受けてみなさんに是非考えていただきたいことがあります。
日本で今後所得を伸ばせる可能性が低いという前提ですが、どうにかして(ニュージーランドドルである必要はありませんが)外貨を稼ぐ方法がないかを考えてみてください。こんなに円が安い状況が続けば必然的に海外から輸入する物は高くなり、物価は着実に上昇し、個人の国際的にみた購買力はドンドン低下するはずです。そんな状況で頼れる所得が(増える見込みの薄い)日本円しかないというのはどう考えてもジリ貧です。
僕は結果的に移住という一番分かりやすい方法で外貨を稼げるようになりましたが、それ以外の方法も考えればあるはずです。とにかく、これから世界の経済成長に合わせて所得も増やしていかなければ、と感じられている方は真剣に検討すべき事項だと思います。
もう一つの考え方ですが、経済的な縮小を甘受する方法もあると思います。
現在の自由経済では会社の業績も国のGDPも成長し続けることがそこに属する人々の幸せにつながる、と思い込まされているフシがあります。でも、人口が減り続ける、所得が減り続ける、高齢化によって社会的コストは増え続けるのがわかっている日本という国で、もっと別の価値観に基いた生き方があってもいいんじゃないでしょうか?
日本が長い間苦しんできたと言われているデフレですが、賃金が下がる代わりに物価も下がっていたので、そのバランスが取れている限りにおいてはもしかするとインフレが激しい国よりも住みやすかった部分があったかもしれません。みんなが買っているから、という強迫観念で必要もないのに無駄に買わされてるもの、ちょっと工夫すれば今持ってるものでもまだ使えるのに過剰な便利さを追求するあまり買い替えさせられているもの、って結構あるんじゃないでしょうか?経済を成長させるためにはそういう消費って大切かもしれませんが、成長しないことがわかってる経済で同じことをする必要はないんじゃないかと思うんです。
最近よく「世界の~ランキング」的な記事を見るんですが、「住みやすい国」「教育がしっかりしている国」「子育てがしやすい国」なんかでスウェーデンなどの北欧諸国が常連のように上位を占めています。経済規模は決して大きくない国々ですが、経済以外の部分で光る部分があれば世界中の人から尊敬され、憧れられる存在になりうるというモデルケースでもあると思います。
日本も経済成長に頼らない、成熟した小国に転身するチャンスが今まさに到来しているのかもしれませんね。
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