朝公開した最初のバージョンの改訂版です
戻らないヨンの決意の心情を追加しました。朝読んだ方は最後の部分だけ読んでください
本日のテーマ写真:
行かないで Ver1 (超短編)
戦いが起きる
「イムジャそこに…」
チェヨンは手を引きウンスを寝台に腰かけさせる…そして自分は近くの椅子に座り、二人そこに向い合わせになる
そして両手をスッと差し出し、ウンスの手をギュッと強く握りしめたのだ
ジリジリと空気が張りつめている
先程降りだしたばかりの雨は段々と強くなり、耳につくような雨音がそんな二人を包み込んでいく
チェヨンの握る手にこめられる強い力と、その表情から何かを察したウンス。自分から言葉を切り出す事が出来なかった
ただ、じっとチェヨンを見つめていた
無言の時が続き
重苦しい空気が漂う…
「此度は前線で…指揮を取らねばなりません…」しばらく黙りこんだ後、重い口をチェヨンは開いた
そして、チェヨンはウンスの目を真っ直ぐに…決して逸らす事なく強くじっと見つめ続ける
二人の間にそれ以上の言葉はなかった
言葉がなくともチェヨンの眸はいくつもの言葉をウンスに語りかけるのだ
俺がいなくて大丈夫ですか…?
1人ふさぎ込んだりしませんか…?
そして、イムジャ貴女の笑顔をもう一度見る事ができるだろうか…?
イムジャ貴女を残し…戦地に赴くことがこれほどに苦しい事とは…今まで感じたことのないその痛みに胸が張り裂けそうな思いだった
ウンスの唇が微かに震え出す
見られないように…手で震える口許を覆い隠してしまいたい。しかし、そうしてしまったら余計に気づかれてしまうだろう…
激しく動揺する気持ちを悟られまいと、そっと唇の震えを隠すようそこを噛みしめたのだ
生と死が隣り合わせのその地に夫を送り出す…ソウルにいた現代人の私には到底考えられない事だった。自分とは全く関係のない、テレビドラマだけの世界だと思っていた
こんなにも苦しい…
胸が張り裂けそうだ…
息をつぐ事すら難しくうまくできない…締め付けられた胸からとめどなく嗚咽があがってきて、こぼれて落ちてしまいそうになるのを何とか飲み込む
もし、何か言葉を発しようものなら、唇が震え言葉にするのもままならない事をこの人に気づかれてしまうだろう
そして、ウンスは溢れてきそうな涙を、こぼれ落ちてしまわないよう懸命に耐えその大きな眸で受け止め続けた
私は絶対泣かない
私がここで落とした涙が、この人に迷いを生じさせるかもしれない…そんな小さな事までも恐ろしく泣く事すらできなのだ
行かないで!
その言葉を心の中で何度も唱える
私が現代で習った歴史
崔瑩(チェ・ヨン)は李成桂(イソンゲ)によって捕えられ、どこかに流刑に処される。その後に処刑されたのだ…この人が命を落とすのはこの戦じゃないはず…
そう自分を慰めてみても、私がここにいる事でその歴史は変わってしまっているかもしれない…そんな不安がとめどなく押し寄せてくる。ウンスの胸を無数の矢が放たれたかのように、次から次へと突き刺していくのだ
ウンスは握りしめられたその手をギュッと強く握り返した。その苦しい思いは張り裂けそうな胸の中に…重い鉄の鍵を何重にも何重にもかけそっと閉じ込める
悲しい顔を見せてはだめ…
こぼれ落ちそうな涙が落ちてしまわないように、目を大きく見開く。そして、ウンスもしっかりと前を向きチェヨンを見つめ返すのだ
私は大丈夫よ
待っているから…
そんな私の決意を、私の想いをチェヨンこの人に感じとって欲しい。私はその人をただ、ただ真っ直ぐに見つめ返す
そこに座ってるのもやっとだった。その日ウンスは、たった一言たりとも…その震える唇から言葉を継ぐことはできなかった
その晩その人は…震える私を後ろからギュッと抱きしめながらそっと目を閉じたのだ
その日の朝
「行ってまいります」
鬼剣を片手にそれだけを告げ戸口に向かう
私は思わず走り出し、戸口に向かうチェヨンを後ろから抱き止めた。背中ならきっと…泣いている事が分からないわよね…
行かないで!口にする事の出来ないその言葉を、心の中で何度も何度も叫び続ける…お願い行かないで!私を一人にしないで…
ウンスは口にする事の出来ないその想いを…ハングルでチェヨンの背中にそっと指で描く…
가지 마‥ (いかないで)
その意味は分からずとも、チェヨンは背から伝わるウンスの思いを痛いほど感じる…その唇を強くギュッと噛み締めた
行かないでと泣き叫んでくれたら…
どれほど気が楽であろう…
チェヨンは思う
ウンスの張り裂けそうな胸の内を感じながら…下を俯き目を瞑る
背中にイムジャの温もりを感じる…
これが永遠の別れとなるやもしれぬ…
そんな想いがチェヨンの中を埋め尽くしていく。ウンスの存在を痛いほど感じながらも…チェヨンは振り向くことが出来なかったのだ
俺はどんな顔をして…
この方との永遠かもしれぬ別れを…そんな瞬間を受け止められるのだ
今まで一度たりとも感じたことのない、死の恐怖が襲いかかってくる。死は即ちウンスとの永久の別れ…
そんな現実を受け止める自信がなかった
チェヨンは微かに震える手を、その背に感じるウンスに気づかれないよう意識を張り巡らした。鬼剣を持つ手を強くグッと握りしめる
ここで振り向いたら俺は…イムジャを…この方を想いのままに抱き締め、そのすべてを放り出してしまうかもしれない
自分でも捉えきれないほどの様々な思いが、チェヨン胸の中に渦巻き…息もできないくらいに締め付ける
鬼剣を持つ手はこれ以上はもう力が入らないほど…強く握りしめられた
奥歯をぐっと噛み締める
全身を力の限り強張らせる
そして決意を固めたように顔をあげ…
「行ってまいります」
再びそう告げるとチェヨンは後ろを振り返る事なく、そのまま戦地へと旅立ったのだ
辛い時代ですね(><)書いてて切なくなっちゃいました…よろしければ、ポチッとご協力お願いします!

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ウンスさん、その言葉を口に出してはいけないことを良く分かってるんです…チェヨンは高麗のためにも、未来のためにも戦い続けないといけない。そう思うと余計切ない(涙)