CoRich手塚の小劇場応援ブログ!

王子小劇場にて犬と串「愛・王子博」初日を観た。


早稲田大学演劇研究会内にある人気アンサンブルであり、すでに気持ち的にはプロとして活動しているのがこの犬と串。その学外初本公演が王子小劇場で開催された。自由奔放、やりたい放題と見せかけて、その奥にあるものは深い。


これくらい幸せな家庭はあるのかというようなフライヤーの写真、そして舞台美術は宗教画。厳かな音楽の流れるなか、どんな格調高い芝居が行われるのかと思ったらいつもの犬と串だった。その落差さえ、演出家はしたたかに狙っている。


真嶋一歌、初めて観たが素敵な女優だ。この美人女優がオーディションに参加したというから驚きだ。また福岡の人気劇団万能グローブガラパゴスダイナモスの主宰椎木樹人がわざわざこの公演のために東京に出てきて、参加してくれている。犬と串主宰のモラル氏とは高校時代からの演劇仲間だそうだ。この二人の参加により、芝居に広がりが出来た。


そして今回鈴木アメリと満間昴平がすごくいい。屈折した男女の屈折した愛の形を感じさせた。藤尾姦太郎は色々な役にチャレンジしていたたが、どれも面白かった。さすが演技派である。


モラルが企むインモラル、それらがこちらの胸を打つところまで完成していた。ラストシーンは賛否の分かれるところだろうが、賛否が分かれるということを理解した上で、あえて行っているとしたら、(そして実際にそのとおりなのだが・・)犬と串恐るべしと言っておこう。


この芝居を古典的累計的ギャグや下ネタだけで善し悪しを論ずると大いに間違う。その裏側にある時代に対する批評眼と、そこから時代を切り開こうとする若者の戦いの記録と見るとすべてが見えてくる。その黒幕の正体さえ、時代を見抜くモラルの眼は確かだ。