作品の完成が遅れて、初日の幕開けが大きく遅れてしまった。その影響で客演予定の木場勝巳が降板してしまった。
波乱の舞台でちょっと心配しながら劇場にかけつけたが、予想をいい方に裏切って完成度の高い質の高い作品に仕上がっていた。さすが坂手洋二だ。 トラブルをプラスに変えている。
通常なら脚本のできあがりが遅いとか、ましてやそのために初日が遅れるなどということはほめられたことではないが、今回は致し方ない部分もある。
なぜなら、3月11日の震災を経て、作品全体を見直さざるをえなくなった。真摯に演劇に向かう劇団としては当たり前のことだと思う。特に今回の芝居の中には3月11日の事件に関わっていく部分がたくさんある。あの日を境に作品を一から作り直したのだろう。
その甲斐あって素晴らしい作品に仕上がっている。
「推進派」今の時期、意表を突くタイトルだ。原発にしても沖縄の基地問題にしても「反対派」こそが正義と捉えられるのが現在の社会環境だ。その中であえて「推進派」とタイトルを付け、中身はというと、「推進派」「反対派」双方の人間性をしっかりと描いている。
燐光群は数少ない正当な社会派劇団だが、今回の作品は社会派というより人間ドラマだと思った。
だからこそ、途中から涙が流れてしようがなかった。
久々に魂を揺さぶられた。お見事だ。