自然とともに暮らすカダクランの人びと(西村美里) | Cordillera Green Network インターン体験記

Cordillera Green Network インターン体験記

フィリピン・ルソン島北部のバギオを本拠地に、山岳地方(コーディリエラ地方)で活動する現地法人の環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network:CGN)」の日本人インターンによるブログです。お問い合わせはcordigreen(a)gmail.com
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みさとです!

1月中旬から末にかけて、バギオから12時間の道のりを経て、
マウンテン州バーリグ町、カダクラン村のチュパック集落というところに行ってきました。


(写真:カダクランの風景)


訪ねた先はここでアグロフォレストリーをはじめて5年のアシュレイ・ラマトンさん。
アシュレイさんはこの地でコーヒーとお米を主に栽培して生活されています。

アシュレイさんのお子さんは四人とも外に出ていて、現在は奥さんと二人暮らし。とても研究熱心で優れた観察眼をお持ちのアシュレイさんは、ご自分の農園での経験や実験を通して発見したコーヒーの植林方法や剪定のタイミング、コーヒーと一緒に植えると良い植物などを私たちに教えてくださいました。また、何年にどの種類のコーヒーを植えたか、どれだけのコーヒー豆が収穫できたかなど細かく記録されており、今まで会ってきた農家さんとはまた違った方法でコーヒーを栽培し、販売するその姿に終始感心しっぱなしでした。


(写真:アシュレイさんと農園の様子)


滞在中にはカダクラン小学校、ルナス小学校、カレオ小学校の3校に訪問しました。
これら小学校は2014年11月にCGNが行った環境教育ワークショップの会場に使わせていただいた学校で、
ワークショップには各校の生徒さんに参加していただきました。

今回はそのときの様子を収めたムービー・写真を、当時参加していただいた生徒さんや先生方に見ていただくために訪問しました。約1年前のことを思い出しながら画面をじっと見つめる子供たち。友だちが画面に映ると笑いが起こり、とても和やかな上映会になりました。

私は当時のワークショップに参加しておらず、子供たちがどのような体験をしたのか、ムービーや写真からしか伺うことはできませんでしたが、実際に現地に赴き、参加した子供たちに会うことで、まるで自分も当時その場にいたような気持ちになりました。たった15分ほどの上映会でしたがそれでもすごく喜んでいただけて、イベント後のフィードバックの重要性を改めて感じました。


(写真:ムービーを観る子供たち)


そんな学校からの帰り道、ふと目に入った棚田を見ながらアシュレイさんが教えてくださったのは現在カダクラン村にある棚田の世話をする人がだんだん少なくなっていっているという問題でした。

現在は整地の段階にあるカダクランからボントックという都市までを結ぶ道ができてから、若い人がどんどん町に仕事を求めて出ていってしまい、そのまま村には戻らず町で新しい生活を始めてしまうのだとか。それには大学がこの地域にないことも関係しているのだろうと思いました。小学校から高校まではあっても、そのあとの進路を考えたとき、村の外にでるほかありません。ましてや日本のように各家庭に子供が一人や二人だけではないフィリピン家族。他の妹弟の教育費を賄うために都市で働き、なんとか家族にお金を入れようとする若者がたくさんいます。

さらに、アシュレイさんはこう言います。
「たとえ仕事がなくても若い人はみんな町に出てしまう。棚田も世話をする人がいなくて荒れていくばかり。サアヤン(もったいない)…」

確かにいくつかの棚田は水が枯れ、近くには森が広がっていました。
こんな自然豊かで植物にとっては楽園のような所なのに、なんともったいないことでしょうか。


(写真:棚田の風景)



道ができたことで物資も手に入り、生活はより豊かになりましたが、その反面で人々は町へでていくようになり、豊かであったはずの村からはだんだん活気がなくなっていくという現在の状況…道ができることについて深く考える機会となりました。

ある夜にはタポイと呼ばれるお米でできた自家製のワインをみんなで飲みながらアシュレイさんの農園の話、コーヒーの話などをし、農作業がない日には近くへ滝を見に行くなど、普段の都市での生活とはまた違った時間の過ごし方を体験することができました。


(写真:自家製のタポイ)


そして、なんと偶然にも滞在中に結婚式に参加させていただける機会がありました。山道を1時間ほど歩いて行ったカダクランと隣町のちょうど境界になっているあたりの民家が式場。雨にも関わらず朝からすでに多くの人で賑わっていました。
突然ゴングの音が聞こえ、何が始まるのかと思えば円をつくり踊り出す人たち。コーディリエラ地方伝統の踊り、人々はイーゲルダンスと呼ぶそうです。男性と女性とでそれぞれパートが異なるようで、しばらく観察するように見ていると「彼らに続きなさい」とアシュレイさん。そんな無茶な、と思いながらも前の人に続き、ぎこちないながらも踊りに加わりました。すごく形式的な踊りなのかと思えば実際踊ってみると違うようで、基本の形を守りながらも皆さん自由に自分流の動きを披露していらっしゃいました。

その後、せっかくだからと日本人を代表して歌を披露。曲はフィリピンでも「スキヤキソング」の名で有名な「上を向いて歩こう」。辛いことがあっても二人で上を向いて歩いて行ってください、と結婚式風の紹介をし、温かい拍手をいただきました。



(写真:イーゲルダンスを披露する人々)



また、感動したことといえばご飯の美味しさ。アシュレイさんの奥さん、エヴィリンさんはとってもお料理が上手で、農園で採れたオーガニック野菜のおいしさを最大限に活かしたお料理を次々と作ってくださいました。「毎回同じような料理だけど…」と申し訳なさそうなエヴィリンさん。とんでもない、とても美味しいお料理をありがとうございました。

2週間ほどの滞在、アシュレイさんや奥さんのエヴィリンさん、そしてご近所の皆さまから温かく迎えられ、本当にあっという間で充実した毎日を送ることができました。

一緒に滞在していたインターンの二人にもたくさん助けられ、町から離れた土地で互いに助け合いながら暮らすことの大切さを改めて実感しました。

帰国まで残り1ヶ月、ここでの学びを胸にがんばります!


(写真:ラマトンご夫妻と一緒に)



みさと