前回は株主総会までの内容で書きました。

株主総会後に取締役会を経て岩田執行役を代表執行役とする人事が出されましたが、穐田氏を代表執行役からおろし、会員事業、広告事業を除く国内のその他事業の執行役として配置する人事でした。

下記記事より知りましたが、一本化案の際の取り決めが見事に裏切られたようだと。

スクープ!クックパッド、社内大混乱の真相 東洋経済
http://toyokeizai.net/articles/-/111714


穐田氏を代表執行役からおろすこと、その他事業の執行役に就くことは、見てわかる通り権力を取られたということでしょう。この人事案が練られてていたのであれば当然株主総会前には取締役会には出せないものでしょう。この人事は当然穐田氏には知らされていないでしょうから。社内では、佐野氏と岩田氏が知るだけだったのでしょう。
佐野氏が強気の株主提案を出し、余裕で時間を待つ心境ではなく、追い込まれていたうえでの提案を出したのではないかと考えたのはこの内容を知ってからです。

穐田氏の権力を取り上げるのは、佐野派で固めた基盤を強固にするためでしょう。とは言え穐田氏を代表に置いておく程の余裕は無いのではないでしょうか。

一本化の際の取り決めを聞かなければ、混乱の責任を取り代表執行役が責任を取るのは(個人的感情を抜きにしますが)至極普通だと思います。理由はどうあれ一本化の提案内容、取締役のメンツを見る限りですと
穐田氏が代表に残るという人事は権力を固めた佐野氏にとっても同じ境遇い陥る可能性が残るということでこの判断に至ったのではないでしょうか。社員の反応を上記記事より見る限り佐野氏の読みは間違っていないのかもしれません。ある意味穐田前代表は素晴らしい方だと思います。佐野氏が提案を始めてから佐野対穐田の決着はこれでついたのでしょう。

佐野氏と穐田氏の根本の原因はわかりませんが双方大きなダメージを受けました。株主、従業員も含め、佐野氏悪者論が多数ですが、多くを両社が語らない以上様々な推測が出ているだけです。今後も多くは出てこないのでしょうが、両者のダメージに比べると些細なことなのかもしれません。

一番身近にいながらクックパッドの未来を握っている従業員についても書きたいと思います。しかし、この記事にインタビューされ、出ている、一部の人物の記事を読み、全員の意見として聞くのは偏りがあるので一歩引いて考えたつもりです。

スクープ!クックパッド、社内大混乱の真相 東洋経済
http://toyokeizai.net/articles/-/111714      以下

・ある社員はこう語る。「共同代表などの形を取り、穐田氏の代表権が維持される内容で、佐野氏と他の取締役たちが歩み寄ったはずだった。それが株主総会後の取締役会で、突然、反故にされたようだ」

・穐田氏は「非常に残念なことになってしまった」などと漏らし、気落ちした様子だった

・「仕事を奪われて、『追い出し部屋』に追いやられているのと同じ。この数年の業績を伸ばしてきた立役者に対して、あまりにもひどい仕打ちだ」

・社員集会が開かれた。

佐野氏、岩田氏、穐田氏の3人が順番にあいさつをした。佐野氏は株主の信任を得たと説明し、穐田氏は一連の騒動について謝罪したが、集まった社員から拍手が起きたのは穐田氏が話した時だけだった

・財務や広告を管掌していた執行役が退任したほか、事業部長級にも突然の異動が通告されるなど、実務にも混乱が生じ始めている状況

・社内では、穐田氏の代表執行役復帰を求める署名活動も始まっている。クックパッドの国内の正社員は約240人。すでに7割強が賛同して署名を行ったという。近く開かれる見通しの取締役会に署名を提出するなどして、最終的には取締役を動かし、佐野氏の執行役解任につなげようとする動き

経営の混乱続くクックパッド、
ついに社員が「社長解任反対」で決起 ダイヤモンドonline
http://diamond.jp/articles/-/88847          より以下

・「クックパッドは、オーナーである佐野陽光取締役による独裁政治が進んでいる。何の説明もなしにドラスティックな人事が断行され、従業員はみんな不安がっている。このままでは、続々と従業員が退職し、顧客のためのサービスを維持することも難しくなるのではないか」

・穐田誉輝(あきた・よしてる)社長を突然解任して、コンサル出身の岩田林平氏を社長に据えただけでなく、5人の執行役も事実上解任している。「ひどいことに引き継ぎもなかった。今後の会社の経営方針に関する説明もないため、外部との契約や受発注を決断していいかもわからず、社内は混乱に陥っている」

・両者の話し合いで、少なくとも穐田氏は代表として残り、創業者側の佐野氏か岩田氏にも代表権を与える『共同代表』の形で合意していたと聞くが、佐野氏がそれを突然反故にしたので社内に動揺が走った

・ある社員有志は、全従業員に呼びかけて、佐野氏、岩田氏の執行役からの解任及び、穐田氏の社長復帰を求めて、署名を集めている最中だ。日本の本社には契約社員を含めた従業員が300人以上いるが、そのうち200人以上が賛同しており、続々と賛同が寄せられているという。署名は近く開かれる取締役会に提出する見込みだ。その呼びかけでは、新体制になったにもかかわらず経営方針が打ち出されておらず、不安で納得がいかないので、きちんと対話をしたいとも説いている。

 同社関係者によれば、「本社の従業員の7~8割は賛同しているのではないか」というから、新経営陣は簡単には無視できない数字だ。

 また、ある従業員は従業員への一斉メールで、新社長である岩田氏が29日に行った従業員との質疑応答について、穐田氏退任の経緯について虚偽の説明があったと告発するなど、あちこちで火の手が上がり始めている。

そのままの抜粋です。

東洋経済もダイヤモンドonlineも内容的には佐野氏の強硬人事で会社は大混乱。穐田氏は約束を破られ仕事を奪われかわいそう。従業員が佐野氏を引きずり下ろし穐田政権を取り戻すという内容を全面的に押し出し、このままではクックパッドの従業員がいなくなるというイメージが個人的にはですが受けてれます。事実と思われるであろうこと以外はインタビューを受けた社員の感情のほうが強いようです。


仕事を奪われて、『追い出し部屋』に追いやられているのと同じ。この数年の業績を伸ばしてきた立役者に対して、あまりにもひどい仕打ちだ

穐田氏が共同代表等の形で残らないと社員の7割近くは反対である

穐田氏の功績は素晴らしいものです。クックパッドの仕組み作りには多大な功績を残してきました。業績についてはスマートフォンの拡大という追い風が吹いたことも多きいと思いますが・・
現体制で穐田氏が共同代表で残ることにそこまで大きなインパクトはあるのでしょうか?
佐野氏の打ち出した料理への原点回帰、多角化から集中、更には佐野氏布陣の取締役会と。名ばかりの代表だったのではないでしょうか?代表というと会社の全指揮権をイメージしがちですが、実質は決定権を持つ取締役会の過半数を握ることのほうが重要なのです(佐野さんが大株主でありながらどれだけ苦労したか)。ですので、一本化の際に取締役会の人選が佐野氏よりの時点でほとんど佐野氏の主導権は決まっていたようなものなのです。

しかし、これだけの数の社員が穐田氏の復帰を望むだけで反対票を投じるものなのでしょうか?

ダイヤモンドonlineでは「新体制になったにもかかわらず経営方針が打ち出されておらず、不安で納得がいかないので、きちんと対話をしたい」とといていますが、東洋経済では、「クックパッドの国内の正社員は約240人。すでに7割強が賛同して署名を行ったという。近く開かれる見通しの取締役会に署名を提出するなどして、最終的には取締役を動かし、佐野氏の執行役解任につなげようとする動き」と意図的に内容を省略してしまい内容が違ってしまっています。

人事や経営方針が急に変わったから反対の署名とはいかないですよね?なぜ?どうして?どうなるの?が先にきてからの話だとは思うのですがね

実際にクックパッドの社員ではないので「開発ブログ」や記事からの推測なのですが、社内ではユーザーサービスやシステムについての意見交換はよくあることで、佐野氏と穐田氏についてもサービスの議論は良くしていたといいますし、社外取締役も言われていましたので、なんでもかんでも黙って受け入れるという文化ではないところもあるのでしょう。現に4/5までにも会議を頻繁に開いているようですし


クックパッドが心配ですね。目的は人それぞれでしょうがクックパッドというサービスが維持されていくかといえば

サービスを望むユーザーがきちんといること。
無くなると困るものにまで成長してきたから。
佐野氏が望むものは料理を楽しくであり、クックパッドとして間違った方向性でない。
社員は佐野氏の為に働いているのではなくユーザー、クックパッドの為に働いている

以上の事から、そうなるのではないでしょうか。

ある方が、多角化を進めてきた穐田氏は、クックパッドユーザーを見間違ってきたのではないかと言われていました。私も少し感じます。

クックパッドの一番使っていただきたい人は30代から40代の主婦です。情報に流されやすい若い人は補完の一部であり、関連事業についても手を広げるべきではないでしょう。前者は、必要とし、無くてはならないツールと利用してくれるが、後者は、前者程必要は少ないからです。ましてや、関連事業の周りにはそれぞれに専門分野の雄がおり、片手間で儲けれるほど甘い世界ではないでしょう。国内で経営資源を疲弊するなら、人口の多い世界で本業の料理で目いっぱい挑戦する方が理に適っているかと。

佐野氏は24時間クックパッドのことを考えているそうです(笑)20年近くそうしてきている方の方向性は簡単には崩れないと信じています。

ただ、事細かに理論的な話は得意でないのは事実ですから、穐田氏がそうであったように、岩田林平代表がきちんと社員と対話を出来るのか問われているのではないでしょうか?