★ 02.6.7 「コンドーム定理」 (出典:「秋山仁の数学渡世」朝日新聞社)
  
 あらかじめ断っておくが、この話は純粋に応用数学的問題について述べているが、しもねた嫌いな人は一通りじっくり読んで、しもねたと判断したら読まないでほしい。


 問題:男女それぞれ3人ずつ、甲、乙、丙、A子、B子、C子がいる。これら6人で乱交パーティーをする。ただし同性間の対戦はない。4個のコンドームⅠ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳを用いて総計9回の対戦をエイズが感染しないようにすませる方法を述べよ。


 もう少しやさしく、男女二人ずつ合計4人が異性間で対戦したときどうか考えてみよう。普通なら総計2×2=4の男女間の対戦に対し、4個のコンドームを使うが、男性を甲、乙、女性をA子、B子と呼ぶと、コンドームⅠを甲がつけ、その上に二重になるようにコンドームⅡをかぶせ甲とA子が対戦する。この対戦後、コンドームⅡの外側にはA子のウイルスが、コンドームⅠの内側には甲のウイルスが付着している可能性があるが、Ⅱの内側とⅠの外側はきれい。従ってⅡをⅠからはずし、乙がⅡをつけA子と対戦する。また甲はⅠをつけたままB子と対戦する。さて乙とB子の対戦だが、乙がつけているⅡの上にⅠをかぶせB子と対戦する。これで誰も感染することなく、無事合体完了。


 この問題の場合、絵を書いて(事細かなリアルな絵を書かなくてもよい。コンドームと付着ウイルスの概念図でよい。それではイメージがわかないという人はお好きにどうぞ。)同様に考えると、4個のコンドームですませることができることがわかる。試みられよ。(乱交パーティーのことではない。念のため。)


 この問題は1974年にプリンストン大学教授のロバシェ博士が考えたものだそうである。彼は離散数学の大家である。彼のコンドーム定理はより一般な形、つまり男女の人数がそれぞれ6K人のとき総計6K×6K回の対戦を7K+1個のコンドームがあれば十分であることを具体的に示しており、論文になっているそうである。(実際問題に適用するとK=1の場合でも私ならふらふらになってダウン間違いなしだ。しかし数学的には美しい定理・・・かなぁ・・・?!)


 秋山氏はこの論文を初めて読んだとき、大変感激して、この定理について当時勤めていた医大で講義をしたそうだが、翌日女子学生の父親がけしからんと怒鳴り込んできて、始末書を書かされたそうである。今高校の性教育の時間などにコンドームを教材に使っているようだが、古き良き時代とでもいうべきか。しかし時代は変わってもコンドーム定理は不滅である。