恋愛小説 愛されたい私と愛したい私 第5話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 愛されたい私と愛したい私 第5話

愛されたい私と愛したい私  第5話 ~片思い~







「えっ・・・。小出さんからの手紙だ・・・?」

その手紙は、小出からだった。

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伊集院さんへ


先日、伊集院さんの言葉に勇気を頂きました。
これから、彼女に会いに行って来ます。
そして、心から"おめでとう"と言って来ます。
僕の背中を押してくれて、本当にありがとう。

PS
2、3日休みを取ってゆっくり田舎で過ごして来ます。

では、また。
                   小出
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「うんうん・・・。ようやく決心がついたのね!
 でも、本当に、彼女の事・・・好きだったんだね!
 ほんと、小出さんって優しい人なんだな・・・!!」

里菜は、手紙を見て小出の彼女への思いを強く感じていた。

「もうこんな時間か・・・!さて、寝よっ・・・と・・・!」

そして里菜はゆっくりと眠りについた。


カーテンの隙間から入り込む日差しに誘われ、里菜が目を覚ました。

「うぅ・・・!今日は良い天気だね、お買い物でも行こうかな!」

里菜は寮を出て1人で、近くのファーストフードで朝食をとり、
シッピングへと出かけて行った。
数件のお店を見て回り、ある店を出たその瞬間の出来事だった。

「キャーァ!!痛っててて・・・・・・。」

「あっ!すいません。大丈夫ですか?怪我はないですか・・・?」

里菜は、お店を出た際に1人の青年とぶつかってしまった。
その青年は急いでいた様子で、里菜の存在に気がつかなかった。

「あっ・・・はぁ、大丈夫です・・・!それより・・・?」

青年の顔を見た瞬間、里菜の時間が止まってしまった。
里菜は、心で呟いた。

「「どっかで・・・?でもなんて、素敵な人なんだろう・・・!」」

里菜は、ぼーっとしていた。

「ねぇ・・・ねぇ君・・・?」

「あっ、はい!」

「怪我してるね!大丈夫?」

「えっ・・・!」

「右手・・・!少し、血が出ている・・・。」

「あっ、これぐらい大丈夫です。」

「いや、手当しよう!これから時間ある?」

「本当に、大丈夫ですから・・・。急いでるみたいだし・・・。」

「それじゃ、俺の気が済まない・・・!せめて、手当だけでも・・」

青年は、自分のハンカチを取り出し、里菜の右手の傷に当てた。

「あっ、ありがとうございます。」

「じゃ、その先に車止めているから・・・。一緒に行きましょう。」

2人は、近くに止めてあった青年の車に乗り込んだ。
里菜は、青年の真摯な態度に、心が動き出していた。

「そう言えば、お互い自己紹介してなかったね!
 俺は、一之瀬 直樹(いちのせ なおき)28才、独身。」

「私は、伊集院 里菜です。24才です。」

「里菜さん・・・・!可愛い名前だね!」

「ありがとうございます。」

「じゃ、これから俺の家に行って手当して貰うから・・・!」

「えっ・・・!彼女にでも見つかったら、誤解されますよ!」

「大丈夫だよ。彼女はいないから・・・!」

「すいません。変な事言って・・・!」

「里菜さんは、面白い人だね・・・!」

「えっ、そうですか?」

そう言いながら、車は玄関の前で停車した。
直樹の家は、高級住宅街にあった。

「ここですか?凄い、お家(おうち)ですね!」

「俺のじゃないないよ・・・。両親の家だから。」

2人は、車を降り玄関に向かった。
玄関には、お手伝いさんが出迎えた。

「おかえりなさいませ。」

「お願いがあるんだけど、この人に怪我をさせてしまったので
 手当してあげてくれないかな!」

「かしこまりました。では、こちらへどうぞ・・・。」

「あっ、はい・・・・!」

「里菜さん。俺、すぐ戻るから帰るまで待ってて・・・!」

「はい・・・?」

直樹は、足早に出かけて行った。
正直、里菜は戸惑っていた。
怪我の手当をして貰い、応接室で待たされた。

「どうしよう?帰りたいけど・・・待っててって言ってたし?
 でも、お金持ちの人なんだな・・・きっと。」

里菜は、心の中で身分の違いを感じ、悲しみが襲って来た。

「「運命の出会い・・・と思ったのに身分が違いすぎる!
  私なんか、どうせ相手にされないよな・・・?」」

そして、1時間程が経ち直樹は戻って来た。

「里菜さん、遅くなってごめん。約束通り、待っていてくれたんだね!」

「あっ、はい!」

「じゃ、これから食事でも行きませんか?」

「本当に、結構です。手当もして頂いて・・・・!」

「でも、俺の気が済まないから・・・!それとも、俺の事が嫌ですか?」

「そっ・・・そんな・・・事・・・ないです。嫌いだなんて・・・!」

「じゃ、しっかりお礼させて・・・!」

「あっ、はい。」

里菜は、正直迷っていた。
直樹に優しくされる事で、心が動く事を恐れていたのだ。

「里菜さんは、お酒飲みますか?」

「はい、少しですけど・・・・!」

「それじゃ、タクシーで行きましょう・・・!」

直樹はタクシーを捕まえ、2人は車に乗り込み、レストランへと向かった。
ワインと食事を直樹は、オーダーした。
ワインがグラスにつがれ、2人は乾杯をした。

「2人の出会いに乾杯・・・!」

「あっ、はい。乾杯・・・・!」

2人はワインを飲みながら、食事を楽しんでいた。

「失礼ですが、里菜さんは彼はいるんですか?」

「いません。私、モテませんから・・・!」

「えっ、こんなに可愛いのに・・・。」

「お世辞でも、嬉しいです。ありがとうござます。」

里菜は、この時直樹が何を考えているのか分からなかった。

「お世辞じゃないよ。本当に可愛いですよ・・・。里菜さんは!
 もし、里菜さんが迷惑じゃなかったら、お付き合いして
 貰えませんか?いや、お友達からでも構いません・・・!」

「えっ・・・・。」

里菜は、付き合えるはずがないと思っていた。

「嬉しいですけど、失礼な言い方かも知れませんが、直樹さん。
 お金持ちでしょ、私みたいな人とは、つり合いませんよ?」

「そんな事気にしているの!俺は、二男だし兄貴が後継者に
 なるから、いつかはあの家を出るつもりだし、俺には関係ないよ!
 将来、両親の世話になるつもりもないし・・・!!」

「・・・・。」

「店の前で、里菜さんにぶつかった時、何か感じたんだ!
 はじめてなのに、はじめて会った気がしなかった。
 もしかして、運命の出会いかもって・・・ドラマ見たいだけど!」

里菜の心は、動揺し迷っていた。
直樹が思うように、自分も同様に感じていたからだ。

「里菜さん。突然な話で、返事できないなら、また今度でも構いません。
 正直に話すと、大学の時に1度お付き合いしましたが、今回が2度目
 なんです。すいません、お付き合い出来たらの話ですが・・・!」

「そうなんですか?そん風には見えませんでした。」

「今までお付き合いを申し込まれた事はたくさんありますが結局、
 俺じゃないんです。でも、里菜さんの目は違ってました。
 なんと言うか、透き通っていて輝いていました。
 きっと、心の温かい人なんだな・・・と思いました。
 だから、こんなチャンスは無いと思ったんです。」

「すいませんが、考えさせてください。」

「分かりました。でも、また必ず会ってもらえすよね?」

「はい、約束します。」

「あっ・・・良かった・・・!」

直樹は、初めて笑顔を見せた。
里菜は、その笑顔を見て、嘘ではないと思っていた。

「それじゃ、俺の電話番号とアドレスを教えますので、
 都合のいい時に連絡してください。
 俺は、何時でも構いませんので、里菜さんの都合で・・・!」

直樹はそう言いながら、メモに電話番号とアドレスを書き里菜に渡した。
里菜は、メモを受け取り、鞄にしまった。

「近いうちに、ご連絡します。」

2人は、食事を楽しみながら、話を続けた。
時間が経つにつれて、2人の間に多くの笑顔が見られる様になった。
楽しい時間は早いもので、時計の針は、22:00をまわっていた。

「里菜さん、あまり遅くなるといけませんので、家まで送ります。」

「ありがとうございます。」

2人は、レストランを出て、タクシーに乗り里菜の寮に向かった。
タクシーは、里菜の寮の前に車を止めた。

「直樹さん、今日は本当にありがとうございました。楽しかったです。」

「俺も、楽しかったです。では、連絡待ってます。おやすみなさい。」

「おやすみなさい・・・・!」

タクシーは走り出し、暗闇へと消えて行った。
自宅の戻った里菜は、考えていた。
返事はしなかったが考えた末、里菜は心を決めた。
そして、静かに眠りについた。

そして、火曜日の夜。
里菜は、直樹にメールを入れた。
明日、会う約束をしたのだ。
直樹にハンカチを返すため、洗濯とアイロンをした。

約束の水曜日。
里菜は、待ち合わせ場所に向かった。
直樹は、既に待っていたのである。

「こんばんは、直樹さん・・・。」

「こんばんは・・・!また、会えてうれしいです!
 さぁ、行きましょう・・・!!」

直樹は、里菜をエスコートしレストランに向かった。
2人は食事を楽しくとっていたが、直樹の態度に落ち着きはなかった。
その態度を見て、里菜が話を切り出した。

「直樹さん、先日のお話の件ですが・・・・!」

「はい!」

「・・・・。」

「やっぱり・・・無理ですか?・・・・・・。」

「いいえ・・・!お付き合いさせて頂きたいと思います。」

「えっ・・・!本当ですか!ほんとに・・・。」

直樹は笑顔を見せ、体全体で喜びを表した。
その姿を見て、里菜は嬉しく思っていた。

「里菜さん、これ・・・・!」

「なんですか?」

「プレゼントです。今日、お付き合い出来たら、渡そうと思って。」

「ありがとうございます。開けてもいいですか・・・!」

「どうぞ・・・!」

里菜は、直樹から貰ったプレゼントを開けた。
プレゼントは、ネックレスだった。
直樹は、里菜の側に行き、ネックレスを取り、里菜の首に掛けた。

「うん・・・。良く似合う。凄く、素敵だ・・・。」

「ありがとうございます。」

里菜は、予想外の出来事に嬉しかった。
2人は残りの食事を楽しんだ。
やがて、時間も遅くなり帰る事にした。

「今日は、本当に嬉しかった。とても、楽しかった・・・。」

「私もです。あっ、私の電話番号を教えておきます。」

里菜は、直樹に自分の電話番号を教え会社の寮まで送って貰った。

「里菜さん。今度の休みに、また会えませんか?」

「はい!大丈夫です。」

「じゃ、また連絡します。」

タクシーが、寮の入り口の前で止まった。
直樹は、里菜のおでこにやさしくキスをした。
里菜は一瞬、驚いたがそれに笑顔で答えた。

「それじゃ、また・・・。おやすみ。」

「おやすみなさい!」

里菜は、タクシーを降り直樹を見送った。
自宅の戻ると、里菜は鏡の前で貰ったネックレスを眺めていた。

「素敵なネックレス・・・。ありがとう、直樹さん・・・。」

里菜の心は、直樹に完全に動き始めていた。

「あっ・・・!ハンカチ返すの忘れた・・・。あちゃぁ・・・!
 また今度にするか!さぁ・・・お風呂に入って寝よう!」


翌日、里菜は会社に行くと小出の姿が目に入った。

「あっ、小出さん帰ってきたんだ!」

里菜は、小出に挨拶をした。

「おはようござます。」

「おはよう!伊集院さん、今日時間ないかな?」

「はい!いいですけど?」

「それじゃ、あの店で待ってます。」

「はい、分かりました。」

里菜は、小出と会う約束をした。
やがて、仕事も終わり里菜は約束のお店に向かった。
お店に入ると、小出の姿はなかった。

「いらっしゃい・・・!あら、この間の子ね!」

「どうも・・・。小出さんは・・・?」

「まだ、来てないわ。さぁ、座って・・・!」

「はい。」

里菜は、小出を待つことにした。
15分程経って小出が現れた。

「伊集院さん、遅くなってごめん!」

「いいえ、そんなに待っていませんから・・・。」

2人はグラスにビールを注ぎ、乾杯をした。

「小出さん、どうでしたか?」

「うん、彼女凄く喜んでくれた。伊集院さんの言う通り、
 僕の事を気にしていてくれた。
 お互いに気持ちがスッキリしました。伊集院さんのお陰だよ。
 本当に、ありがとう。これで、僕もしっかり前を向いて行ける!」

「良かったですね!」

里菜は、小出の代り果てた姿を実感していた。

「ねぇ!伊集院さん。僕と、付き合ってくれないか?」

「えっ・・・!・・・・・・?」

小出の突然の言葉に、里菜は動揺した。
先日までは、小出の事が気になってはいたが、予想外の展開だった。

「前、彼氏いなって言っていたから・・・。迷惑じゃなかったら!」

しかし、里菜の心には迷いはなかった。

「あの・・・実は私・・・好きな人がいるんです。小出さんとは
 お付き合いする事は出来ません。ほんとうに、すいません。」

「謝る事はないよ。そうなんだ!好きな人がいるのか?」

「・・・・。」

「僕の、片思い・・か・・・!」







続く 愛されたい私と愛したい私  第6話 ~失恋~





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