恋愛小説 17才の夏 第46話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 17才の夏 第46話

17才の夏 第46話 ~春休み~





紀子の誕生日パーティーも終わり、
聡は、2月から勉強をする事に決めていた。

クリスマスの日、弁護士を目指す事を紀子に話していたからだ。

学年で、ベスト10入りする成績の聡だが、司法試験とも
なれば、簡単なものではない。

聡は勉強に集中する為、部活のバスケットを辞めた。
学校が終わってから自宅で勉強する様になった。
2人の交換日記も、しばらくの間は中止する事にしていた。


そして3週間が過ぎ、2月も終わろうとしていた。

紀子の心は穏やかではなかった。
当然、理解し応援している紀子だが、学校でも会話が少なくなり、
聡との距離がどんどん離れていく様に感じていた。

休み時間など、時間があれば常に勉強ばかりしている聡を見て、
紀子は声を掛ける勇気すらなかった。

満やまどか達も、心配していた。

聡の一方的な態度が悪いと批判もあったが、
逆に、将来に向けて真剣なんだと言う意見もあった。

聡のやる気を壊さない様に、みんなは、
もうしばらくの間、様子を見る事にした。
次第に、聡に気を使う様になっていた。

3月に入り、紀子は聡の異変に気がついていた。
いつもと違う聡の表情に何かを感じていたのだ。

紀子は、朝お母さんから近いうち自宅に招待する様に
言われていたのである。

放課後、紀子は話そうかどうか悩んでいた。
紀子は、すっかり弱気になっていた。
無意識に、辛さに耐えきれず、泣いていたのである。

帰ろうとしていた聡が、紀子に気がついた。
聡は、足早に紀子の席に向かった。


「のっこ・・・!どうした・・・?」


紀子は一瞬、自分の耳を疑った。
涙で曇る目には、聡の顔が映っていた。


「のっこ・・・!何があった・・・?」

「えっ!聡なの・・・?」

「のっこ!何を言ってるんだよ・・・。」


紀子は、聡に抱きついた。
そして、我慢する事なく大声で泣いたのである。

聡には、何が起こっているのか理解出来なかったが、
紀子の頭を撫でながら、気持ちが落ち着くのを待った。

しばらくして、紀子は落ち着いた。


「のっこ・・・!何があった・・・?」

「うん。寂しかった・・・!!」

「そっか!ごめんなぁ・・・!
 俺、全然余裕がなかったよ。今頃、気がついた。
 勉強、勉強って思って視野が狭くなっていて
 まわりが見えなくなっていたよ。
 のっこ・・・!本当に、ごめん・・・。」

聡は、自分勝手な行動をした事に深く反省していた。
勉強に集中するあまり、完全に自分を見失っていたのである。
心にも余裕が持てず、周りが見えていなかったのだ。

満達も、聡の状況が理解出来ずにお互いにすれ違いが
起きていたのであった。


「いいの!いつもの聡に戻って良かった・・・。」


聡は、紀子をやさしく抱きしめた。
紀子は、今までの辛さが吹き飛んだ。


「あのね!今度の休みにね・・・。お母さんが、
 聡を遊びに連れて来たらどうって・・・!!」

「そっか!絶対行くよ。約束する・・・!」


紀子にいつもの笑顔が戻った。
聡は、紀子の笑顔を見て、完全に自分を取り戻した。


「聡・・・!疲れて居るんだよ。顔が変だよ?」

「そうかもな?あまり寝てないから・・・!」

「無理はしないでね!!」

「ありがとう・・・!のっこ。」

「今日はこのまま、帰って休むよ!」

「うん。その方が良いね・・・!」


こうして、2人は修復された。

そして、土曜日。
紀子の家に遊びに行く日を迎えた。
午前中で授業が終わり、聡は紀子の席に向かった。


「のっこ・・・!今日、一旦家に帰ってから行くよ!」

「分かった。何時頃になりそう?」

「今から、一緒に帰ろう!そして、一緒に行こう・・・!」

「うん。分かった。」


2人は、一旦聡の家に行き、昼食を取り、バイクで紀子の家に向かった。
時計は、3時少し前だ。
2人を乗せたバイクは、紀子の家に着いた。

玄関では、お母さんが迎えてくれた。


「聡くん、良く来てくれたわね。」

「お邪魔します。」

「どうぞ・・どうぞ・・・!上がって・・・・。」


夕食までの時間、色々な話をしてお母さんとの距離も縮まっていた。
やがて夕食も終え、のんびりしていた。


「聡くん、今日は家に泊って行きなさい。」

「はい、ありがとうございます。」

「勉強で疲れてるんじゃない?お風呂に入って早く休んだら。」

「ありがとうございます。そうします。」


紀子のお母さんが言う通り、聡は疲れていた。
聡は、お風呂に入って休む事にした。
聡が、お風呂へ向かうと、お母さんが紀子に言った。


「紀子、聡くんって本当にいい子ね!大事にしなさい。」

「うん!わかってる!ねぇ・・お母さん・・・。
 春休みは、聡のところに行っていいでしょう?」


紀子は、春休みに聡の所に行く約束をしていたのだった。


「いいわよ。聡くんのお母さんには、私からお願いしておくから。」

「お母さん、ありがとう。」

「紀子・・・。聡くんだからよ!普通は高校生何だからありえないでしょ!
 そこのところ良く考えてね!お父さんには、適当に話しておくから。」

「うん、わかった。」

「あなたも、聡くんが上がったら、一緒に休みなさい。」


2人はその夜、早めに休んだ。
翌日、午後には、お父さんが出張から帰って来ると言う事で、
午前中には、聡は自宅に戻った。
紀子のお父さんは知らなかったのである。


そして、春休み前日になった。
放課後、聡は紀子のところに行った。


「のっこ、どうする?今日から来る、それとも明日からにする?」

「うん!今日から行きたい!」

「じゃ、迎えに行くよ。」

「わかった。準備してる」


その夜、聡は紀子を迎えた行った。


「聡くん、紀子をお願いしますね・・・!」

「はい!わかりました。」


2人は、聡の自宅に向かった。


「紀子ちゃん、いらっしゃい。お母さんから聞いてるわよ。」

「しばらく、お世話になります。」

「はい!どうぞ・・・!」


こうして、2人の春休みが始まった。
2人は、一緒に計画を立てて2人の時間と個別の時間に分けて、
生活をする事にしていた。
2人の時間には、紀子は聡に甘えていた。
お互いに、充実した毎日が続いていた。

短い春休みもあと一週間だ。
紀子がそばにいる事で、すべてが充実してる事に聡は気が付いた。
そして、2人の春休みは終わった。

やがて、2人は高校2年生になった。
クラス替えもあったが、聡と紀子は同じクラスのままだった。

そして、月日が経ち6月半ばになった。
7月は、聡の誕生日。
聡は、17才を迎える。

紀子は、聡の誕生日の事を、色々と考えていた。
聡の誕生日は、平日の月曜日だった。

紀子はこの休日に色々と準備を進めていた。
聡は、紀子のサプライズを知らなかったのである。

紀子は、月曜日の0時に聡には黙って、電話をする予定だ。

日曜日、聡は友達と朝からツーリングに出かけていた。


「♪プルルルル・・・♪♪プルルルル・・・♪」


その夜、仲間家に電話のベルが響き渡った。









続く 17才の夏 第47話 ~●●~(最終話)

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