恋愛小説 17才の夏 第43話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 17才の夏 第43話

17才の夏 第43話 ~訪問者~




翌日、寝起きのいい紀子が目を覚ました。


「んっ・・・?」


1偕で何やら、物音がするのをかすかに感じた。

紀子は、聡の寝顔にそっとキスをしベッドを抜け出し、
物音に釣られるかのように、1偕へと向かった。

聡のお母さんが、朝食の準備をしていたのである。


「あっ・・!お母さん。おはようございます。」

「あら、おはよう!早いのね、まだゆっくりしてなさい!」

「いいえ、お手伝いさせてください。」


紀子は、足早に洗面所に行き顔を洗い、お母さんの手伝いを始めた。
しばらくして、お父さんが起きてきた。


「おはようござます。」

「おはよう!早いんだね!ゆっくりしていればいいのに・・・。」


普段、家では手伝わない紀子は何故か嬉しくて、
楽しくてたまらないと言う気持ちになっていた。

しばらくして、朝食の準備が整った。


「紀子ちゃん、聡を起こして来てちょうだい!」

「はい。分かりました。」


紀子は、聡を起こしに2偕へと行った。
聡は、ぐっすりと寝ていた。


「ねっ!聡・・・!起きて・・・!!起きてよ・・・!!!」

「んっ・・・。もう少し、寝かせてよ・・・!」

「駄目だよ・・・。すぐに起きて・・・。」


紀子は、強引に布団をはぎとり聡を起こした。
寝起きの悪い聡は、しぶしぶ起きたのだ。


「朝ごはん出来たから、一緒に食べようよ!」

「分かった・・・分かったよ・・・。」


聡と紀子は、1偕の食卓へと向かった。
聡のお母さんは電話をしていたが、すぐに戻って来た。

そして4人は朝食を終え、紀子は後片付けも手伝っていた。


「あっ、そうだ!紀子ちゃん。今日、お母さんが来るわよ。」

「えっ・・・!ここにですか?」

「そう。迷惑掛けたから、お礼の挨拶に来たいって電話があったの。」

「何時に来るんですか?」

「お昼ごろに来るって、言ってたわ!きっと、寂しかったのね・・・?」

「はい、分かりました。」


紀子は、突然の出来事に動揺していた。
後片付けも済ませ、2偕へと行った。
紀子は、お母さんが来る話を聡に伝えた。

「ねっ・・・聡。今日、私のお母さんがここに来るって・・・!」

「えっ!何で・・・?」

「迷惑掛けたから、挨拶に来るって言ってたよ。」

「何時・・・?」

「お昼頃に来るって・・・。」

「そっか!今日はのんびり出来そうもないな?支度しよう!」


聡は、紀子のお母さんに会うのは初めてだ。
支度を進めながら、考えるだけで緊張は高まっていった。
支度を済ませ、時間まで映画鑑賞して待っていた。


”♪ピンポーン・・・♪♪ピンポーン・・・♪”


玄関から、インターホーンの呼び鈴がこだました。
聡は、ビデオを止めた。


「聡、お母さんかな?」

「そうだと思うけど・・・?」


聡の緊張はさらに、高まった。
1偕から、聡のお母さんの声が聞こえて来た。


「紀子ちゃん・・・。お母さんが来たわよ・・・!」

「はーい!分かりました。」


紀子は、大きな声で返事を返した。


「聡・・・。下に行こう。」

「うん。なんか緊張してきた・・・・。」


2人は、1偕へと向かった。
リビングには、聡の両親と紀子のお母さんが話をしていた。


「お母さん・・・!」

「聡くんのお母さんから聞いたわ。色々お世話になって・・・!」


そこに、聡が割り込んだ。


「はじめまして、仲間 聡です。」

「はじめまして、紀子の母です。紀子が大変お世話になって
 ありがとうございます。」

「いいえ。」

「これからも、仲良くしてくださいね。」

「はい!」

「さぁさぁ・・・。挨拶はそのぐらいにして、
 紀子ちゃんケーキ食べる。お母さんから頂いたの・・・。」

「はい、頂きます。あっ!私が、用意します。」

「じゃ、お願いするわ。」


紀子は、そう言いながら台所に向かった。
聡は、緊張感を保ちながら、ソファーに腰をおろした。
目の前で両親達の会話を、ただ聞いているだけの聡であった。

しばらくして、紀子がお茶とケーキを運んで来た。


「ありがとう。紀子ちゃん。」

「どうしたの?普段、家ではこんな事しないのに・・・!」

「お母さん・・・・!!」


みんなからは笑顔がこぼれ、しばらく会話が続いた。
やがて、5人は昼食を取りにレストランに向かった。

少しづつではあるが、聡と紀子のお母さんとの距離も埋まってきたが、
聡には、まだ温度差がある事を実感していた。

遅い昼食を終え、紀子のお母さんはそのまま帰宅する事になった。


「聡くん・・・。今度は、家にも遊びに来てくださいね!」

「はい!喜んで。是非、伺わせてください。」

「紀子の事、お願いね!」


そう言いながら、紀子のお母さんは笑顔を見せた。


「はい。分かりました。」


聡も、笑顔で見送った。
この時、聡は紀子のお母さんの笑顔を見て、心が安らいだ。
その笑顔が自分を認めてくれたような、気がしたからだ。
紀子のお母さんの後ろ姿に向かって、聡は一礼をした。

紀子のお母さんと別れ、自宅に戻って来た。


「なんか、疲れたよ。」

「大丈夫?」

「大丈夫。でも、お母さんとあまり話し出来なかったから・・・!」

「今回は、しょうがないよ。」

「そうだな!しょうがないよな!!」


聡は心の中で、後悔していたが作話で自分自身を納得させていた。
そして2人は、夕食までの間、ビデオの続きを見る事にした。

やがて、夕食を迎えようとしていた。


「ねぇ、聡!夕食のお手伝いしてくる!」

「ん!なんか、楽しそうだな!」

「うん、嬉しいの!寂しいだろうけど、少し待っててね・・・。」

「わかった。」


紀子は、1偕へと向かった。
1偕では、お母さんが買い物に行く準備をしていた。


「お母さん!お買い物ですか?」

「えっそうよ。夕食のお買い物に行こうと思って・・・。」

「私も、一緒に行っても良いですか?」

「良いわよ!じゃ、近くのスーパーまで2人で歩いて行きましょう。」

「はい!」


紀子は、返事をしながらとびっきりの笑顔を見せた。
聡のお母さんは、紀子の笑顔に笑顔で返した。

紀子は近くのスーパーまでの道のりで、聡のお母さんから
昔の思い出や、恋愛話しを聞かせて貰ったのである。
紀子は、聡のお母さんを益々、好きになっていった。
買い物を済ませ、家に戻った2人は夕食の準備をした。

夕食が整い、4人は楽しく夕食を終えた。

時計は、7時を少し回っていた。
後片付けも終え、聡の待つ2偕へと行った。


「ねぇ、聡・・・。今日の夜で、終わりだね!
 私、帰りたくないな~ぁ?」

「そんな事言わなくたって、今度から何時でも来れるじゃないか。」

「そうなんだけど、お母さん達・・・本当は迷惑じゃないかな?」

「迷惑だなんて思ってないよ。むしろ、喜んでるさ!」

「うん。ホントにまた遊びに来てもいい?」

「いいに決まってるよ。遠慮すんなよ。」

「聡・・・!ありがとう!!」


紀子は、内心ほっとした。


「なぁ!明日、満とまどかに遊びに来て貰おうか?」

「うん、でも今回は聡と2人で居たいの。」

「そっか!分かった!!いいよ・・・・。」


聡は、紀子を引きよせ、キスをした。
そして、聡はソファー上で紀子の膝枕でテレビを見ていた。
紀子は、聡の横顔を見ながら、幸せを感じていた。

時計は、10時を回っていた。


「そろそろ、お風呂でも入るか?」

「聡、先に入って来て・・・・・!」

「うん。じゃ、先に入って来る・・・。」


聡が、お風呂に入っている間、紀子は聡のお母さん宛てに手紙を書いた。
明日、帰りに渡す事にしていたからだ。

聡がお風呂からあがり、紀子がお風呂に向かった。
お風呂の中で、紀子は泣いていた。

この2日間を振り返り、聡の両親に良くして貰った事や何よりも
家族の一員になれたような気がして嬉しさのあまり泣いていた。
紀子は、呟いた。


「聡、お母さん、お父さん、ありがとう・・・・。」


紀子は、お風呂からあがり2偕に行こうとした時、リビングに聡が
いる事に気がついた。


「どうしたの、聡・・・・?」

「うん。明日、親父にのっこを送ってもらうお願いをしてたんだよ!」

「そこまでお願いしなくてもいいのに・・・!」

「いや、夕食を外で済ますって言ってたから、そのまま送って貰おう
 と思ってさ・・・。」

「ありがとう。」


2人は、そのまま2偕へと行った。


「さぁ・・・!もう寝ようか?」

「うん。」


2人はベッドに入った。


「聡、おやすみ・・・!」

「あっ・・・、おやすみ!」


紀子は、聡にキスをした。
しばらく時間は流れた。

紀子は、聡の腕枕で眠れずにいた。
寂しさが、込み上げてきていたからだ。
紀子は、耳を済ませたが、聡の寝息を感じていなかった。

「ねっ!聡・・・!まだ、起きてる・・・・?」

「ん・・・!起きてるよ・・・!」


紀子は、聡に抱きついた。


「しばらくこのままでいて・・・・・!お願い・・・!!」


聡は、紀子をしっかりと抱きしめていた。
紀子の気持ちを聡は、理解していたからだ。
ゆっくりと時間は流れた。
時間が経つにつれ、あまりの寂しさに、紀子は耳元で呟いた。


「お願い!聡・・・。抱いて・・・。」


聡は、紀子の誘いに導かれる様に、2人は愛し合った。
お互いに、少しずつ快感に変わっている事を感じていた。

     ・
     ・
     ・
     ・

「聡・・・。ありがとう!」


しばらくして、聡が急に紀子の胸に顔を埋めた。
紀子は、聡の行動が理解出来なかった。


「痛っい・・・・!」


紀子は、胸にかすかな痛みを感じた。


「聡・・・!どうしたの?何をしてるの?」

「ん・・・!キスマーク・・・・!」


聡は、紀子の胸にキスマークをする為、胸に吸いついたのだった。
紀子は、キスマークを見て


「あっ!色が変わってる!!えっ・・・、私もしたい・・・!」


紀子は、そう言いながら聡の胸に吸いついた。


「あっ!ついた・・・、ついた・・・。」


紀子は、笑顔を見せながら言った。

2人は無邪気にはしゃぎながら、そのあとゆっくりと眠りについていった。







続く 17才の夏 第44話 ~お正月~