恋愛小説 17才の夏 第32話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 17才の夏 第32話

17才の夏 第32話 ~恋~

  

聡と紀子の心の中から、ようやく嵐が過ぎ去った。

お互い話さないが、恋愛の怖さをしみじみと感じていた。
聡には、決して許す事の出来ない事ではあったが、紀子の
思いを大切にする為に、許す事を決意した。

この件を通じて、6人は人としての大切な事を学ん様な気がしていた。
人それぞれの恋愛方法は違うが、正解や間違いは存在しない事を。

”愛されている”・”愛している”の思いがお互い通じ理解できなければ
思いやりや優しさも生まれない、そして恋愛は成立しない事を確信した。

教室に残った、るり子と学はしばらくの間、泣いていた。
窓からは、夕日が差し込み2人の心の傷を癒すかの様に輝いていた。

心が落ち着き始めた頃、学が口を開いた。

「なぁ!るり子。本当にごめんな。」

「もういいよ!学が悪いわけじゃないから、全て私が悪いの!」

「もう、忘れよう。俺達、これから生まれ変わらなければ・・・!」

「うん、そうだね・・・・。ねぇ、学・・・。」

「なんだい?」

「さっき、私の事・・・好きって言っていたけど本当なの?」

「あっ!本当だよ。ずっと前からね。でも、俺には告白出来なかった。」

「どうして・・・?どうして出来なかったの?」

「るり子は、必ずいつも誰かを好きになっていたから、言い出せなかった。」

「男らしくないのね!学は・・・・!」

「あっ、男らしくないよ。俺は・・・。」

「それじゃ、さっきはどうして言い出せたの?」

「正直!!俺にも分からない。るり子を助けたいと思ったら・・・。」

「ねぇ、私で良かったら、付き合ってください。」

「えっ!ほんとに・・・本当に、俺と付き合ってくれるの?」

「こんな私ですが、よろしくお願いします。」

「俺の方こそ、お願いします。」

2人は、力いっぱい抱き合った。
何故か、るり子は素直な気持ちになっていた。
るり子は、学があまりにも身近な存在だったので、恋愛感情は無かったからだ。
しかし、何故か学の思いが、自分の心を突き刺す様な感覚に襲われていた。
新たな、恋の始まりである。

次の日、るり子と学はもう一度4人を集めて改めて謝罪をした。
かなり反省をしている様子だったが、なんだかすっきりした様子にも思えた。

「みなさん、今まで本当にごめんなさい。」

「申し訳ありませんでした。俺も、るり子もこれから生まれ変わります。」

「私から、みんなに報告があるの。」

「何だよ、るり子?」

「私と彼と、付き合う事にしたの!改めて紹介します。」

「みなさん!これからもよろしくお願いします。」

「おぅ!それは良かったな!学って言ってたよな!」

「はい!」

「昨日、突然の告白だったもんな!でも、よかったな!」

「みんな、ありがとう!」

紀子は、るり子の笑顔を見て、本当に良かったと思えた。

「るり子、良かったね!」

「ありがとう・・・・!紀子。」

るり子の笑顔がとても素敵に思えた瞬間であった。
また、聡への思いもなくなる事を確信した。
そして、聡と紀子の別れ説も撤回され、ようやく4人は元の状態へと戻った。
4人は心の中で、もう大丈夫だと確信していた。
いつの間にか、4人の仲間入りをして、時々6人で行動をする事もあった。
あの事件が嘘の様に6人は、完全に忘れ去っていた。

そして、高校1年目の夏が終わりを告げた。
秋に向けて聡と紀子は、恋愛の階段を1段進んで行ったのである。


「なぁ・・・!のっこ・・・・・・・・・・・・・・・。」





続く 17才の夏 第33話 ~初体験~