恋愛小説 17才の夏 第23話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 17才の夏 第23話

17才の夏 第23話 ~親友~


次の日、聡と満はバイト先にいた。

「なぁ聡。昨日は、ほんとにありがとな。」

「でも本当に、良かったな・・・満・・・!」

「俺、恋愛がこんなにも嬉しくて、せつないものだとは知らなかったよ。
 帰り間際になって、寂しさがぐっと押し寄せて来てさ、ほんと辛かったよ。
 でも、聡達がいたから、そうでもなかったけど、
 まどかと2人だけだったら、どうなっていたんだろうって考えたよ。」

「満の気持ちは良く分かるよ。ほんとに別れ際は、辛いし寂しいよな・・・。
 なぁ、満。今度4人で、旅行に行かないか?」

「旅行か、いいな。日帰りでもいいから、何処か行きたいな。」

「そうだな。夏休みが終わる前にバイト終わるから、時間が取れるよな。」

「そうだな、出来れば夏休み中に、計画立てようぜ。」

2人の目は、輝いていた。

「なぁ、聡・・・!俺、お前が親友でほんとに良かったよ。」

「なんだよ、あらたまって・・・!」

「この先も、お前とは何が会っても、親友で居られる気がする。」

「当たり前だろ、今までと変わらないよ。絶対にな・・・・・!」

聡と満は、男同士の深い友情を再確認していた。
2人は、仕事に集中した。
数日間が過ぎ、夏休みのバイトも終わりに近づいてきた。
お互いに連絡を取り合い、旅行の計画も進めていた。
今回は、満とまどかの意見を尊重して組まれた。
色々な意見が絡み合う中、ようやく計画が決まった。
計画は、月末に2泊3日で出かける計画だ。
今回の旅行も、まどかのお母さんの協力が必然だった。
紀子とまどかは、協力をお願いしていた。
もうすでに準備は、整った。
バイトが終わる前日の事だ。

「なぁ、明日でバイトも終わり、いよいよだな・・・聡!」

「旅行に行けるのは、まどかのお母さんのお陰なんだから、満・・・感謝しろよ」

「あっ。でも理解あるよな。まどかのお母さん。普通じゃ考えられないよな。」

「自分の子供を、本当に信じているからなんだと思う。
 だから、許せるんだと思うな、俺は。」

「まどかと付き合ってから、電話で何回か話した事はあるけど、
 実際には会った事がないんだ。一度、会って見たいな。お母さんに・・・!」

「俺は、1度会ってるよ。感じの良い人だった。
 まどかとは、親子と言うよりは、親友みたいな感じだったな。」

「俺、旅行から帰ったら、お礼に行くよ。まどかの為に・・・。」

「あっ、良い考えだと思うよ。まどかもきっと喜ぶよ。」

やがて、今日のバイトも終わり、ささやかではあるが毎年恒例の
打上パーティーが前日に行われる。
友子のお父さんから、お礼の言葉と乾杯でスタートした。
今までの疲れが嘘の様に、盛り上がっていった。
ふと、聡はるり子の事が気になっていた。
どうやら、るり子が来年も手伝う予定だ。
すると、るり子が問いかけた。

「ねぇ、聡。残りの夏休みはどうするの?」

満が、会話に割り込んできた。

「あっ、実は・・・」

「おい、満・・・!俺が、話しているんだよ。黙ってろよ。」

聡は、とっさに話を中断させた。
無理もなかった。
満は聡とるり子の関係を知らなかったからだ。

「疲れているから、家でゆっくりするさ。」

「何処にも出かけないの?」

「何処にも出かけない。ほんとに、のんびりしたいんだ。」

その言葉に、満は何かを感じとっていた。
るり子も、それ以上は聞いてこなかった。
やがて、打上も終わり聡と満は一緒に友子の家を後にした。

「おい、聡。何でるり子に言わなかったんだ!」

「話したら、しつこく聞かれるだろ。面臭かったからだよ。」

「それも、そうだな。」

満は考え過ぎだと思った。

一方では、紀子の家にまどかが、泊りに来ていた。

「紀子、いよいよ明日だね。なんか今からワクワクして来た。」

「分かる、その気持ち。夏休みのいい思い出になるといいね。まどか・・・!」

「うん、お互いにね。紀子・・・。これからも、ずっと親友でいてね。」

「当然でしょ。何が会っても変わらないよ。私たちは!」

紀子とまどかも、お互いの気持ちを再確認していた。
4人は改めて、親友に対する思いと、恋愛に対する思いを噛みしめ、1つ成長したのである。
2人は朝方まで、話をして静かに眠りについた。

いよいよ、バイト最終日。
夕方にはバイトが終わる予定だ。
いつになく、満は張りきっていた。
そんな様子を見て、友子が声をかけた。

「満、今日はやけに張り切っているね。どうしたの?」

「あっ・・・、今日夕方から、聡と夏休みの旅行にでかけるんだよ!」

「聡と・・・。もしかして、彼女ができたの?」

「どうして分かる?」

「分かるわよ、男同士の旅行でいくら親友でもそんな顔しないでしょ。
 もし本当なら、考えただけで気持ち悪いわよ。」

「相手は、誰なの。もしかして、まどか。」

「どうして、それも・・・?」

「聡の彼女の親友でしょ!」

友子は、聡から聞いていたので分かっていた。

「友子・・・!周りには、まだ内緒にして置いてくれ。頼む・・・!」

「分かったわ。でも良いわね・・・!楽しい夏休みになって・・・。
 私はの彼は・・・。」

「お前も、彼氏が出来たのか?」

「違うわよ!私の彼氏は・・・仕事! 悲しいわ・・・ほんとに!」

そばで聞いていた、るり子は、4人で旅行に行く事を察知したのである。
昨日の嘘が、吹き飛んだ。
るり子は、足早にその場から去って行った。
いくら聡を諦めたとは言え、簡単に諦め切れた訳ではなかったからだ。

「「何故・・・?何故・・・?。何故、聡は嘘をついたの。」」

るり子は、心の中で叫んでいた。
これを機に、るり子の一人舞台が幕を明けたのである。
当然、聡と紀子には予測は出来なかった事だ。

やがて、バイトも終わり、聡と満は待ち合わせ場所に向かっていた。
待ち合わせ場所には、すでに紀子とまどかが待っていた。
2人が現れた。

「遅くなって、ごめん!」

「まどか!会いたかった・・!」

「私も・・・!」

そんな会話を聞いて、聡と紀子は、嬉しさと以前の自分達を見ているかの様に思えた。

「のっこ。」

「聡・・・・。」

2人は、小声で確認をした。
心が1つになっている聡と紀子には十分であった。

4人は、レストランで夕食を取り、旅行のスケジュールを確認していた。
満が突然、何かに気がついた。

「あれ今、気がついたけど。聡、お前たち・・・時計・・・
 もしかして腕時計がお揃いか・・・。」

「あっ、ほんとだ。私も気がつかなかった。いいな~ぁ。」

「前回の旅行の時に買ったんだよ。」

「いいな。俺達も、なんかお揃いの物、買おうよ、まどか!」

「そうだね!負けていられないからね・・・・!」

紀子が急に追い打ちをかけた。

「満・・・。見てこれ・・。まどかとお揃いよ!」

「なにぃ・・・!聡と紀子がお揃い・・・まどかと紀子もお揃い・・・! 
 俺には何もない・・・!おいおい、俺だけ仲間はずれかよ。
 聡、俺達も何か買おうぜ!お揃いの品を・・・。」

「断るよ!!お前とお揃いなんて、気持ち悪いよ・・・!」

「冷たいな・・聡は・・・!」

満は、まるで子供の様に、はしゃぎ少しへこんでいた。

「なぁ!まどか・・・・。 俺達、お揃い何にする・・・・?」

そんな会話をしながら、時間が過ぎていった。
実は、今回の旅行で聡と紀子は、指輪を購入する約束をしていた。
少しずつ、思い出の品々が増えて行く事に幸せを感じていた2人であった。
付き合ってまだ、1ヶ月間もない2人は、穏やかだった。
4人の会話は尽きなかった。
聡は、時計見た。
すでに、時計は9時をまわっていた。

「なぁ、みんな、そろそろ行こうか。」

「もう、9時過ぎか。そうだな、明日は早いからな。」

4人は、レストランを出て、ホテルへと向かった。
聡と紀子が初めて宿泊をした、ラブ・ホテルだ。
宿泊した事のある、聡と紀子は平然としていたが、満とまどかは、緊張していた。

「さぁ、中へ入ろう!」

聡たちが先行し、部屋を選んで、それぞれの部屋に向かった。

「それじぁ・・・明日。 満、8時な・・・・!おやすみ。」

「分かった。おやすみ・・・!」

そして、それぞれの部屋に入って行った。
聡は、部屋に入るなり紀子を抱きしめ、優しくキスをした。
2人は、抱き合ったまま、しばらくの間立ち尽くしていた。

「のっこ。ようやくバイトも終わって、これから何時でも会えるね。
 ここまで、良く頑張ったな。のっこ・・・!」

「うん。本当に辛かったけど、頑張って乗り越えたよ!聡・・・!」

「良く頑張った。よく頑張ったよ・・・のっこは・・・!」

聡は、紀子の頭を撫でながら言った。
紀子は、思わず泣き崩れた。
今までの辛さと寂しさが急に爆発したかの様であった。

「今回の旅行では、いっぱい甘えてもいいよ。全て俺が、受け止めてやる。
 ここまで頑張ったんだから・・・!」

その言葉を聞いて紀子は、涙が止まらなかった。
そして嬉しかった。
聡は、紀子が落ち着くまでしっかりと抱きしめていた。
聡の優しさに包まれ本当に、幸せだなと紀子は実感していた。
しばらくして、紀子が落ち着いた。
紀子は、そっと聡にキスをした。

「聡。私は本当に幸せ・・・。ありがとう。
 なのに私は、聡には何もしてあげられなった。」

「のっこの幸せは、俺にとっての幸せなんだよ。それで十分だろ!」

今の紀子にとって、これ以上の言葉は無かった。
2人の愛は、益々強く結ばれたのである。

一方、満とまどかは、ラブ・ホテルに感激し、はしゃいでいた。
ようやく、落ち着きお風呂も済ませ、ベッドに入った。
まどかはこの夜、覚悟を決めていた。
しかし、満が。

「なぁ、まどか?本来なら、結ばれると思うけど、俺は、考えたくないんだ!」

まどかは、疑問であった。

「どうして?」

満は、聡の言葉を思い出した。

「今回の旅行は、まどかのお母さんの協力がある。
 お母さんが協力してくれるのは、まどかを信頼しているからだと思う。
 その信頼を、裏切る事は俺には絶対に出来ない。」

「満!そこまで考えていてくれたの、嬉しいよ。」

まどかには、以外だった。
満がそこまで、まどかとお母さんの事まで考えていたなんて思っていなかったからだ。
まどかは、嬉しかった。
あらためて、お母さんに感謝をしていた。
こうして、4人は明日に備えて、静かに眠りについたのである。

そして、夏休みの思い出作りが始まろうとしていた。




続く 17才の夏 第24話 ~思い出~