恋愛小説 17才の夏 第5話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 17才の夏 第5話

17才の夏 第5話 ~偶然~





次の日、聡は普段とは違い、ボッーとしていた。
昼休み時間の出来事であった。

聡がトイレに行く途中、廊下の曲がり角で、女の子とぶつかってしまった。


「キャー!」

「あっ。ごめん。大丈夫?」

「あっ・・・・。」


ぶつかった相手は、紀子であった。


「あっ大丈夫です。ごめんなさい。」


紀子は、ビックリした顔をして、慌ててその場を走り去った。

聡と紀子の会話はこれが初めてであった。
神のいたずらであろうか!本当に偶然だった。

午後の授業は勉強などしている場合ではなかった。
ただ茫然と過ごしていた。
やがて、授業が終わりキャンプに行われるフォークダンスの練習が行われた。
クラス全員が体育館に集合し、練習が始まった。

ポピュラーな楽曲として「マイム・マイム」「オクラホマミキサー」「ジェンカ」などがある。
練習を続ける度に、紀子に近づいていく程に、聡は緊張していった。


「「あっ!いよいよ次だ!」」


聡の、緊張は高まった。
そしてついに、聡は紀子の手を取り踊り始めた。
すると、紀子の握る手の強さを感じた。
さらに、自分に寄り添って来ている感じを受けた。

聡は、頭が真っ白になった。
偶然にも、そこで曲が終わった。
2人は曲が終わっても、しばらくそのままの状態だった。
ふと、我に返った。

聡が手を離すと、すっと紀子は離れた。
2人は顔を合わせ、お互いに見つめ合っていた。
聡は、心の中で呟いていた。


「「なんだ、この気持ちは・・・?」」


聡は、紀子に話しかけた。


「あっ・・・・!ぶつかった時は、大丈夫だった?
 ごめんね!なんか!ボッーとしていて気がつかなかった?」

「うん。大丈夫だよ。」


紀子の笑顔に聡は、幸せに包まれていた。


「今日は、これで練習は終わりだ!寄り道しないで早く帰るように!!」


先生の、一言で幸せな時間が崩れ去った。


「それじゃ、さよなら。」

「うん!さよなら」


聡は、思いにふけていた。


「「それにしても、何でこんなに偶然が重なる・・・?」」

「「思い切って、付き合ってみようかな?」」


聡は、紀子と付き合う決意を固めたのである。

ばらばらと生徒が、帰り始めた時。
るり子がやって来た。


「聡、なんか楽しそうだね!」

「おっ!フォークダンスって結構楽しいな!」


聡は、フォークダンスが楽しいのでは無かった。


「ねぇ!今日は時間ある?」

「わりぃ!今日も都合があって、すぐ帰る。」

「なんか?最近冷たいね?」

「そんな事ないよ。偶然だよ。今度付き合うからさ・・・。」

「うん。分かった・」


聡は、るり子から少しずつ離れて行く自分を感じていた。







続く  17才の夏 第6話 ~告白~