恋愛小説 2度目の恋 第1話 | HUMMERの部屋

恋愛小説 2度目の恋 第1話

2度目の恋  第1話  ~出会い~






一条 正太郎(いちじょう しょうたろう)、30歳。


父親が経営する、自動車修理工場の長男。
正太郎は、この人生30年間、女性には縁のない男であった。
中学1年生の時、担任の女性教師に恋をした。
いわゆる、初恋だ。
それも、一目惚れだった。
だが、その以降、恋愛には縁がなかった。

季節は冬、夜ともなれば寒さが増し厳しい季節の到来だ。
ある日の夜、すでに営業時間は終了していた。
正太郎は、自動車修理に追われ残業をしていた時であった。
修理工場内に何やら、音が響き渡り近づいて来るのを感じた。

”コン!コン!・・・!”

ある1人の女性が修理工場を訪れたのである。
女性が正太郎に気づき、声をかけた。

「あのっ・・・!すいません。」

「今日は、もう終わりですが・・。」

「分かっています。でも、どうしてもお願いがあります。」

「申し訳ありませんが、明日また来てください。」

「・・・・。」

正太郎は、車の下から見える、女性の足元が動かない事に気がついた。
修理の手を休め、車の下から顔をのぞかせた。

「すいませんが・・・・・!」

正太郎は、一瞬にして心を奪われた。
人生で2度目の一目惚れであった。

「いや・・・、どうされました。」

「実は、すぐそこで車のタイヤがパンクして、
 実家にどうしても帰らなければ行けなくて困ってるんですが、
 こちらの看板を見て修理して頂けないかと・・・。」

「あっ、分かりました。車はどこですか・・・?」

「すぐ近くに止めてあります。」

「それじゃ、一緒に行きましょうか。」

「ありがとうござます、助かりました。」

女性は、笑みを浮かべた。
正太郎は、女性の笑顔を見て幸せを感じていた。
工場内に、車を持ち込みパンク修理作業にはいった。
しばらくの間、沈黙が続いた。
すると、女性が正太郎に話かけてきた。

「寒いのに、大変ですね。」

「いやぁ、仕事ですから。ここ、親父の会社で後を継いでいるんですよ。」

「親孝行なんですね。」

「そんな事ないですよ。」

「私なんか、大学時代に実家を離れ、滅多に実家には帰らないんですよ。」

「OLさんですか?」

「はい。アパレル会社に勤めています。」

女性は、二宮 祥子(にのみや しょうこ)。
28歳、アパレル会社に勤めるOLである。

「いいですね。私も、サラリーマンに憧れましたが、親父の体調が悪く、
 しょうがなく後継ぎをしましたが、今は結構好きになりました。」

「私は、油まみれになって働いている方は、カッコ良く素敵だと思いますよ。」

「お世辞でも、うれしいです。」

「さてっと、これで直りました。」

「ご無理を言って、本当にありがとうございました。」

「いえっ。」

「料金は、おいくらですか?」

「いえっ、時間外ですから、無料です。困っている時はお互い様ですよ。」

「それは困ります・・・。」

「いやっ、本当にいいんです。」

「ありがとうございます。では、お名前だけでも・・・」

「一条 正太郎と言います。」

「正太郎さん。素敵なお名前ですね。私は、二宮 祥子と言います。」

「祥子さんですか。素敵な名前ですね。」

「では、改めてお礼でも・・・。」

「いやっ、本当に結構ですから。」

正太郎は、お礼など期待はしていなかった。
祥子といた時間だけで十分だと思っていた。

「本当に、ありがとうございました。では、失礼します。」

「では、お気をつけて・・・・。」

祥子は車に乗り込み、正太郎のいる工場を後にした。






続く  2度目の恋  第2話  ~偶然の再会~