The story of your hands.~働く人の手を大調査!~ Vol.9
あなたはどんな手をしていますか?
傷だらけの手、ごつごつした手、すらっとした手、やわらかい手、力強い手。
人の手は、そこに、その人の生き方が現れてくる。
手から、その人の暮らしやこだわり、内面までも探る連載企画「The story of your hands.」
第9回目の「手」は、ガラス作家・まつださゆりさんです。
COLORweb学生編集部のあべべのレポートでお楽しみください。
■ 油の染み込んだ、黒ずんだ手
蔵の街で知られる、柴田郡村田町。
そこには、想いを込めて息を吹き込み、繊細なガラス作品を作る女性がいました。
吹きガラスと出会ってもうすぐ15年。
黒い油の染み込んだ手は、ガラスを膨らます“吹き竿”をクルクルと回すときに着いた痕。
今まで沢山の作品と向き合い、愛情を込めてきた証です。
そんな手によって作り出された繊細な作品の数々。
女性らしい温かみがあり、自然の中にあるしなやかさを表現した作品の多くは、
食卓に並ぶような生活に根差した普段使いのできるものばかり。
吹き方の絶妙な変化で同じものは1つも存在しない、違った表情を楽しめるのも魅力の1つです。
■ 何となくで進んだ今の道
高校時代に習ったのは、油絵や陶芸。
これぞ美術!と私たちでもイメージしやすい王道の“美術”を学んでいたけれど、
そんな時に出会ったのがテレビで見たガラスで出来たオブジェ。
どうやったらこんな幻想的なモノが作れるのだろう…?
その頃まだマイナーだった“作品”としてのガラスに、まつださんは目が釘付け。
「とっかかりは、いつも何となくだったなあ……!」
軽い気持ちで大学時代に始めたものの、みるみるうちに惹き込まれていったガラス。
気付けば“この道で食べて行こう!”と大学を卒業する頃には心に決めていたんだとか……。
ガラス作家として食べて行くことは、本当に狭き門。
ようやく就職口として見つけた茨城県にある工房で、基礎から窯作りまでを学んだそうです。
■作品に息を吹き込む
9年前に程よく自然に囲まれた、ここ村田に窯を構えることを決意。
同じくガラス作家のご主人と焼き釜から吹き竿まで全て自分達で作り上げた自慢の工房で、
今日も2人、作品製作に励みます。
窯に火が入るのは主に冬のこの時期。
夏場は展示会が多く工房を空けることが多くなることから、冬の間に作品を作り込むそうです。
吹き方1つ、そして切り方1つで変わってくるガラス。
慎重に、慎重に息を吹き込む。
“イメージを作るよりもまず、手を動かしながらやってみる。”
飴細工のように柔らかいガラスが固まるまでの10秒。
短い時間で、感覚と直感を頼りに手際よく仕上げていきます。
「環境によって、作るモノがだんだん変わってくるんです。」
はじめは“見るガラス”に魅せられてこの道を選びましたが、ガラスと向き合ううちに
人々の生活に根差した“使うガラス”を作りたいと強く思うようになったそうです。
“作品には作り手が出る”
「自分らしさを表現できる作品を求め、欲張ることなく次の1歩を着実に歩みたいですね!」
飾り気はないけれど、使い込まれた道具や作品、そして手作りの大きな窯。
芯が強く穏やかな笑みを絶やさない、まつださゆりさん。
ここからどんな作品が作り出されていくのかが今後楽しみです。
~次回個展~
4/9~4/20 「まつださゆり 個展」
場所:ギャラリーカフェ 迦哩迦(かりか)
<Glass studio Kirlo>
毎週月曜定休 10:00~17:00
〒989-1311
宮城県柴田郡村田町足立漆坊82
tel:0224-83-6255
Writer:あべべ
Photo:かーぽん、かとち