主に金融機関などが通貨の取引を行う所ですが、市場といっても専用の取引所があるわけではありません。電話やコンピュータ回線などを通じて取引されるネットワーク市場なのです。
こうした外国為替市場は、東京のほか、ニューヨーク、ロンドン、パリ、香港、シドニーなどにもあり、世界のさまざまな通貨が、おおよそ常時、いつもどこかで取引されています。
そして「為替レート」とは、こうした外国為替市場において取引された通貨の売買価格を示します。

売買価格の決定要因

為替レート、つまり通貨の売買価格の決定要因には様々なものがあります。今回はその主なものを紹介しますが、これらは「必ずそうなる」というものではなく、「円高や円安の要因となりうる」ものと考えるようにしてください。
まず、通貨の売買価格を決める要因として最もわかりやすいものが、「需要と供給のバランス」でしょう。これは通貨に限らず他の色々な商品も同様ですが、買いたい人が多ければ価格は上がり、売りたい人が多ければ価格は下がりやすくなります。例えば、円を売って米ドルを買う取引が増えれば「円安・米ドル高」になりやすく、米ドルを売って円を買う取引が増えれば「円高・米ドル安」になる傾向があるといった具合です。

需要と供給のバランス以外にも、為替レートを動かす主な要因には次のようなものが挙げられます。
・「貿易収支」
日本企業が海外にモノを輸出して、代金として受け取った米ドルを円に換えるときには、米ドルを売り、円を買うことになります。この取引が多くなれば「円高・米ドル安」につながります。逆に、日本企業が海外からモノを輸入して、円を米ドルに換えて代金を支払う取引が多くなれば「円安・米ドル高」につながります。こうした動きを国全体で見たのが貿易収支です。
貿易収支が黒字というのは、輸入より輸出が多いことであり、つまり上記の例であれば、円を売る取引より円を買う取引が多くなるため円高要因になります。
貿易収支が黒字の国の通貨は高くなる傾向がありますが、実際には発表された貿易収支の黒字額が予想より大きいとその通貨が値上がりするというように、予測から買われる場合があります。貿易赤字の場合はその逆となります。
・「投資収支」
日本の投資家が米国の株や債券を買うためには、円を米ドルに換える必要があります。逆に米国の投資家が日本の株や債券を買うためには米ドルを円に換える必要があります。これを国全体でとらえたのが投資収支です。つまり株や債券が買われる国の通貨は上がりやすく、売られる国の通貨には下がる要因となります。日本の株や債券が買われる場合には「円高」要因、日本の株や債券が売られる場合には「円安」要因となります。
・「景気動向」
景気が良いということは、経済活動が活発であるということを意味しますので、株価の値上がりを見込んでその国の株式市場に海外の投資家の資金も入ってくるなど、通貨高要因になります。たとえば米国に関しては、原則毎月第一金曜日に発表される「雇用統計」が米国の景気動向を見る指標として大きな注目を集めます。この指標の数値が予測より高ければ米ドル高、低ければ米ドル安となる傾向があります。
・「金利」
外貨預金の魅力のひとつは相対的に金利が高いことです。日本では低金利が続いていますので、たとえば相対的に金利の高い国の通貨で預金をすれば、円預金よりも高い金利が外貨建てで受取れます。このように低金利の円を売って金利の高い国の通貨を買う取引が増えれば円安要因となります。つまり、金利の低い国の通貨は売られやすく、金利の高い国の通貨は買われやすいということになります。
(*1 為替レートの変動によっては高い金利がそのまま収益となる訳ではないことにも注意が必要です)
・「物価」
高金利=通貨高とならない場合もあります。
物価が上昇するということはモノの価値が上がり通貨の価値が下がるということです。つまり物価上昇率が高い国の通貨は価値が下がることにつながるため、売られやすくなります。物価が上がり過ぎるとその国の政府や中央銀行は金利を上げて物価上昇を抑えようとします。新興国の通貨は金利が高いことが多いのですが、それは物価上昇率が高いからという場合もあり、その場合は、たとえ金利が高くても通貨の上昇要因とはなりにくく、長期的には通貨の価値の下落につながる可能性があります。
・「金融政策の動向」
各国の中央銀行は、上記の物価や景気安定化のために金融政策を実施しています。各国は経済成長率や物価の低下・下落が見込まれる場合には、金融緩和を実施します。その結果、経済成長率、物価が上昇する傾向があります。このように金融政策の動向によって相場は大きく変動しうるため、各国の中央銀行の景気・物価の判断、金融政策の見通しは為替市場でも大きな注目材料となっています。
・「地域紛争や自然災害など」
地域紛争やテロ事件、自然災害などの有事があると経済が混乱すると考えられて、その当事国の通貨が下落することがあります。
・「市場心理」
現在、通貨の取引は貿易など実際のモノなど(財やサービス)の輸出入に伴う需給に基づいたものよりも、投資や投機など通貨の売買そのものによって利益を得ようとする取引のほうが圧倒的に多くなっています。そのため、上がったから買う、下がったから売るというように為替レートの動き自体が買いや売りにつながったり、特段の理由もなく乱高下したり、何かの情報でパニック売りが起こって大きく下落したりするといったこともあります。