最近談合容疑による大物逮捕者が出たので建設業者も一見自粛しているように見えるが、どっこい談合はなくならない。

 一般市民から巻き上げた巨額の税金を設備投資という形で動かすことによって、この資金の中から政界へと流していかなければならない費用を確保するためにも、業者同士も工事の安定受注を確保したいからだ。

 たまに目立ちすぎた大物の中の小物だけが、見せしめ的に逮捕されるのでしばらくの間だけ自粛したように見えるだけ。

 これが大手といわれる業者の裏側だが表の顔。


 公共工事は誰もが名前を知っているゼネコンといわれる大手建設業者がほとんどの工事を落札するが、実際現場で作業するのはほとんどが下請け孫請けといわれる小規模の土建屋といわれる業者の作業員。

 役所がなにか公共事業を発案し、設計する段階で必ず設けるものに「安全係数」がある。

 通常考えうる重量限界を算出したうえに、さらにこれだけ上乗せすれば計算外の事態にも耐えられると考えられたのが安全係数。

 そしてそれを逆手にとる悪質業者がいるのもまた現実。

 全ての業者がそうだとは言わないが、同じ強度ならば安く仕入れが出来る材料を使いたくなるのが人情。

 ここでまず指定された材料以外のものが使用される可能性が生まれる。

 次に孫請け等の、実際に作業する業者、現場で発生した廃材等はすべてきちんと処分しなければならないし、最近は厳しいシステムになっているので簡単ではないが、どんな場合でも抜け道はある。

 そんなこんなで安全係数を逆算した、手抜きといわれる工事が行われているのも現実。

 具体的にどこが、どれがなんてことは証明出来ないが、一つの可能性として注目してもいいと思えるのが埋立地の「地盤沈下」現象。

 埋立地に埋設する土砂の選別や順序、量などについて設計者は万全の計画を立て安全係数も3割増しにしたとする。

 1のものが1.3になるわけだから計算上の地盤沈下度が1mならば約70cmで沈下は治まるはずだ。

 もちろん地盤という自然が相手なので想定外のことが起こる場合もあって当然だ。

 しかし想定外の地盤沈下が多すぎる。

 これだけ地質学や計算が正確になってきた時代に、あまりにも想定を超える地盤沈下が多すぎるのもまた現実。

 ここで仮に、施工する業者がどの段階かは不明にしても、実際の設計に対して3割の手抜きがあったとしたなら、安全係数計算後の1.3に対して3割の手抜きが実施されればその答えは0.91、最初の1を下回ることになる。

 これはいくら安全係数を上げても同じ結果になると考えられる。むしろ危険度が増すだけといえるだろう。

 

 自分たちが手抜き工事をしたことで大変な事故が起こるかもしれない。 


 これさえ人間のモラルとして守っていれば問題の本質は極めて単純なことなのに。


 多くの建設業に携わる業者は真面目にきちっとした仕事をされています。しかし悪質な業者、人間が存在していることもまた事実です。

 なかには公共工事以外で、仕事はきちっとしているが高額な見積もりや請求をする業者もいます。

 みんなが見つめる、みんなが注目することがこういった問題を少しでも減少させていくもっとも有効な手段ではないでしょうか。


 腐りきっていたどこかの公団でさえ、腐った中にも、まだ新芽と呼べる段階にはなっていなくても、将来新芽になる可能性のようなものは確実に細胞分裂を繰り返しながら形成されていっているのではないかと期待しています。