オペラフェスティヴァルでローエングリンを観たっ その2 | ミュンヘン・ カフカ通り徒然日記

オペラフェスティヴァルでローエングリンを観たっ その2

さて、オペラに詳しい皆様のこと
あらすじを明記する必要もないかと思われますので
ここでは私の感じたことなど記してみます。

ヨナス・カウフマンアニャ・ハルテロス
新聞各紙でミュンヘンのオペラ界新カップルとも絶賛されてましたね。
近年の名声・しかも地元出身というのに今年がミュンヘン主役デビューだというカウフマンと
当地常連さんですでに「バイエルン宮廷歌手」の称号も持つアニア嬢は
意外や身長が同じくらいだけど絵になる二人です。
とにかく際立ってカリスマを感じました。

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無精ひげとクルクル天パーが微妙なカウフマン
イタリアオペラなどの甘いテノールというイメージだったのよね。
あの超重厚な音楽がバックではスタミナ十分じゃないと大変だなぁなんて思いながらも
ローエングリンはこう歌うべきって基準を知らない私は
彼の素性を告白するIn fernem Landなんて特に心に沁みいりましたドキドキ
カッコいいんだから、オーソドックスに白鳥の騎士の恰好させたら
さぞかし素敵でしょうにねぇ。



一方のアニア嬢
カーテンコールでも一番長く盛大な拍手を浴びたのも納得したほど
声質・声量も安定感も素晴らしかったんです。
なんというか・・高貴なオーラが漂ってますね
第三幕で夫となった彼の名前をやっぱり知りたいわラブラブ教えてくれなきゃ溜まんないっしょぼん
ちょっと、はっきり言ってよっドンッとしつこく迫る(?)場面を初めとして
いい演技していましたしね。
バロックからモーツァルトやイタリアオペラもこなし
シュトラウスとワーグナーまでレパートリーが広い上に
容姿・存在感ともにトップ級の彼女です。



演出家リチャード・ジョーンズ氏
ミュンヘンでは90年代にあの伝説のジュリオ・チェーザレを担当したんでした。
巨大な恐竜が最後にドタッと倒れる皮肉とユーモアを
今でもよく憶えています。
さて、今回はというと・・・
総体的にワーグナーの趣旨をかなり自由に解釈したという感じ。
理解しようと思えば何とか筋が通ってるとも言えるけど
初見はやはり違和感が拭えないかな。
中世のブラバント王国の兵士たちに20世紀半ばあたりを思わせる恰好
(第三帝国でもDDRでもない?)させるのは
ありがちすぎてちょっとうんざり。
窮地に陥った姫を救うべき騎士の到来!っと音楽も盛り上がり(ドキドキ)
そこに登場するは・・・ジャ~ン!
歩行障害の白鳥?をかかえたTシャツ&銀色スニーカー姿のローエングリン
彼はどうやら大工さんらしく(その証拠に大工職人の服も着ます)
エルザと仲良くお家を造ることになります。

家は「二人の愛」と「新しい国」を象徴しているんでしょうか?
祖国レベルの壮大な歌詞と現代人の(小さな)夢とは
辻褄が合うような合わないような。
新婚の夜、出会ってから初めて二人っきりになる場面で
徳のある清らかな姫もやっぱり好奇心には勝てず
その彼女を説得しようにも取り付く島のない夫の苦悩など
新築なったマイホームだからこそ
やけに現実味があって面白いとは思いましたけど。

ちなみに我が夫にとっては
新しい解釈の演出は別に問題じゃなかったそうで
逆にこのオペラにまつわる過去がやっぱり引っかかる。
「ドイツ民族の前に現れる救世主」やワーグナーが唱えたキリスト教的道徳を利用して
国民を煽ったナチをいやがおうにも連想させられると。

ところで
プログラムを買うと「行方不明!」と書かれた少年の写真のチラシも手渡された。
また、各40分に及ぶ休憩が2回入りましたが
その間にも舞台は幕が下りず、エキストラたちがせっせとレンガを積み重ねたり
庭の花壇を飾るという「演技」が続く(あの家や花壇は毎回解体して使うのかしら~?)。
そんな配慮が全3幕3時間半以外にも散りばめられて楽しいですね。

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耳障りだったのは
ブーイング命の観客やシリアスな舞台の最中にヒャッヒャッっと笑い出す観客。
芳しくない前評判を読んで、我も我もとブーイングしたのかしら。
すごく意地悪~。あれだけの大熱演に対して失礼だなぁと思う。
もっとも、2幕目以降次第にブーイングの声はブラボーにかき消され
最後は大声援しか聞えなくなってました。

終了後カウフマンとアニア嬢は固く抱き合ってました。
あれはお決まりのジェスチャーじゃなかったはず。
二人とも満足のいく出来だった証拠でしょうね。
こっちまで嬉しくなっちゃった音譜
ローエングリンは来シーズンも10月に数回リピートされますが
その時はエルザは彼女じゃないんです。残念。

それから、せめて映像だけでも・・と思われる方にはとっておきニュース:
今回の舞台は撮影されてまして、後日DVDとして発売されるそうです
これはホントの話よ~。
(そういえばコノリー様の「ポッペアの戴冠」はどうなったんだ?)