これを記念したわけではありませんが、「ゼロからのピケティ」とでも言うべき記事を紹介します。
今では単に L’Obs という名称が表紙になってすっかり別物になってしまった週刊誌、旧 Le Nouvel Observateur の2014年11月20-26日(通巻2611)に掲載された Piketty Gourou mondial という特集の中の短い記事、 Piketty pour les nuls (ゼロのためのピケティ)という記事です。
POUR LES NULS
“Le Capital au XXIe siècle” décrit comment nous marchons vers une société aussi inégalitaire qu’au XIXe siècle. Explications
DONALD HEBERT
(『21世紀の資本』は、我々がどのようにして19世紀と同じくらい不平等な社会に向かっているかを詳述する。)
(方法)
ピケティは18世紀から現代までの、およそ20の先進国の租税データを集大成した。そこから、所得と資本の分配という、富の再分配に関する貴重な情報を引き出し、その後にいくつかの教訓を導き出した。
(結果)
1. 20世紀初頭には、産業革命が労働者の賃金を上昇させたとはいえ、欧米諸国は非常に不平等だった。資本がごく一部の家系だけに所有されていたからである。例えばヨーロッパでは、最も裕福な10%が所得の45%、資産の90%を手にしていた。
2. 政界大戦と大恐慌により、資産生活者の資産が消滅し、不平等は大幅に縮小した。アメリカ合衆国では1950年代に、最も裕福な10%が所得の35%を受け取っていた。1910年から1920年には4%の層だった。
3. 栄光の30年の間、不平等は相対的に低い水準に留まっていた。常軌を逸した成長と効果的な税制・社会制度が実施されたことにより、資産を形成することができた中流階級の出現が可能になった。
4. 1980年代から、不平等が急激に増大した。アメリカ合衆国では、高額所得者と相続への課税が大幅に減らされた一方で、「スーパーマネージャー」のボーナスは爆発的に増大した。その結果、2000年代以降、最も裕福な10%の層が再び総所得の45%を占めるようになる。不動産資産の保有者が前世紀までの地主に取って代わり、とりわけヨーロッパと日本で、能力よりも相続が再び有利になった。
5. 低成長の下で、利子、配当、賃料、値上がり益と言った資本所得が、労働収入を上回っている。ヨーロッパでは特に資産が集中し、特にアメリカでは、労働所得が集中する。そして大金持ちは小金持ちよりもはるかに早く資産を増やす。結局、国家は借金漬けになるが、私的資本は公的債務よりもさらにずっと早く増加してきた。
(推奨事項)
1. 非常に累進度の高い税制を確立する。年40万ユーロを超える所得に対しては、1930年から1980年までのアメリカ合衆国がそうだったように、80%の大台の税率を課す。
2. 巨額の資産に対する累進課税を確立する。可能なら世界レベルで、そうでなければ大陸レベルで。100万ユーロを超えた分の資産には1%、500万ユーロ超には2%が課税されることになる。
3. ヨーロッパでは緊縮策を中止し、成長水準を引き上げるために教育に投資する。
L’OBS/No2611-20/11/2014
原著が950ページ、英語版でも700ページ、邦訳も700ページ近くある本を読み通して全て理解することは困難です。まして経済学の門外漢にとっては。
以下に挙げた『ピケティ入門』の著者が言うように、一部を取り出して都合のいいように(例えば、格差を肯定するために)利用する人間も続出するでしょう。そのためにも、手短な入門書も役に立つと思います。さらに理解しやすくするために、今回引用した記事が役に立つことを祈っています。
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