『21世紀の資本』刊行記念:ゼロからのピケティ | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

トマ・ピケティ Thomas Piketty の『21世紀の資本』(当初、『21世紀の資本論』とされていた)の日本語版が、12月9日に発売予定と発表されましたが、12月6日の時点で、少なくとも千代田区の書店では発売されています。

これを記念したわけではありませんが、「ゼロからのピケティ」とでも言うべき記事を紹介します。

今では単に L’Obs という名称が表紙になってすっかり別物になってしまった週刊誌、旧 Le Nouvel Observateur の2014年11月20-26日(通巻2611)に掲載された Piketty Gourou mondial という特集の中の短い記事、 Piketty pour les nuls (ゼロのためのピケティ)という記事です。






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PIKETTY

POUR LES NULS


“Le Capital au XXIe siècle” décrit comment nous marchons vers une société aussi inégalitaire qu’au XIXe siècle. Explications

DONALD HEBERT


(『21世紀の資本』は、我々がどのようにして19世紀と同じくらい不平等な社会に向かっているかを詳述する。)


Sa méthode

(方法)

ピケティは18世紀から現代までの、およそ20の先進国の租税データを集大成した。そこから、所得と資本の分配という、富の再分配に関する貴重な情報を引き出し、その後にいくつかの教訓を導き出した。


Ses constats

(結果)

1. 20世紀初頭には、産業革命が労働者の賃金を上昇させたとはいえ、欧米諸国は非常に不平等だった。資本がごく一部の家系だけに所有されていたからである。例えばヨーロッパでは、最も裕福な10%が所得の45%、資産の90%を手にしていた。

2. 政界大戦と大恐慌により、資産生活者の資産が消滅し、不平等は大幅に縮小した。アメリカ合衆国では1950年代に、最も裕福な10%が所得の35%を受け取っていた。1910年から1920年には4%の層だった。

3. 栄光の30年の間、不平等は相対的に低い水準に留まっていた。常軌を逸した成長と効果的な税制・社会制度が実施されたことにより、資産を形成することができた中流階級の出現が可能になった。

4. 1980年代から、不平等が急激に増大した。アメリカ合衆国では、高額所得者と相続への課税が大幅に減らされた一方で、「スーパーマネージャー」のボーナスは爆発的に増大した。その結果、2000年代以降、最も裕福な10%の層が再び総所得の45%を占めるようになる。不動産資産の保有者が前世紀までの地主に取って代わり、とりわけヨーロッパと日本で、能力よりも相続が再び有利になった。

5. 低成長の下で、利子、配当、賃料、値上がり益と言った資本所得が、労働収入を上回っている。ヨーロッパでは特に資産が集中し、特にアメリカでは、労働所得が集中する。そして大金持ちは小金持ちよりもはるかに早く資産を増やす。結局、国家は借金漬けになるが、私的資本は公的債務よりもさらにずっと早く増加してきた。


Ses préconisations

(推奨事項)

1. 非常に累進度の高い税制を確立する。年40万ユーロを超える所得に対しては、1930年から1980年までのアメリカ合衆国がそうだったように、80%の大台の税率を課す。

2. 巨額の資産に対する累進課税を確立する。可能なら世界レベルで、そうでなければ大陸レベルで。100万ユーロを超えた分の資産には1%、500万ユーロ超には2%が課税されることになる。

3. ヨーロッパでは緊縮策を中止し、成長水準を引き上げるために教育に投資する。


L’OBS/No2611-20/11/2014


原著が950ページ、英語版でも700ページ、邦訳も700ページ近くある本を読み通して全て理解することは困難です。まして経済学の門外漢にとっては。

以下に挙げた『ピケティ入門』の著者が言うように、一部を取り出して都合のいいように(例えば、格差を肯定するために)利用する人間も続出するでしょう。そのためにも、手短な入門書も役に立つと思います。さらに理解しやすくするために、今回引用した記事が役に立つことを祈っています。



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