●読んだ本●


「背信の海」ルアン・ライス著
栗木さつき=訳 集英社文庫


背信の海 (集英社文庫)/ルアン・ライス
¥880
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■あらすじ■


ジョンは刑事裁判の被告弁護人。
今は少女連続殺人事件犯の弁護人を務める。


男手ひとつで
ふたりの子どもを育てている彼の前に
ケイトという女性が現れる。


ケイトは失踪した妹ウィラを探していた。


ジョンを訪ねたのは、
妹が連続殺人の犠牲者の一人である疑いを
持っていたからだ。


ジョンとケイトは、
ウィラの捜索を通じて、
次第に惹かれあっていく。


そして新たな少女殺人事件が発生した…。



■感想■


大事なものを失った時に
改めてその大事さを知ることがある。


日常は考えずに流れて行く惰性があり、
その中で大事なものをしっかり把握しておくのは
とても難しいことだと思う。


私も今回の東日本大震災で
ライフライン復旧までの1週間と
普通に買い物が出来るようになるまでの
1ヶ月の間に日常の大切さを
改めて体を通して知ったのだった。


そしてこの小説のヒロインのケイトは
辛い状況の下で立ち去った妹を
もう一度取り戻すために探し回り、


あの時どうしていたらこうならなかったのか、
あの時どうしたら良かったのか
毎日毎日繰り返し苦しんで来た。


そのように身を振り絞るような苦しみの中で
掘り出される真実と言うものが、
この小説の中で大事なものとなっていると感じた。



一番大切なものは愛。


そして失われた時からの
再生と前進。


それがこの小説の主題で、
単なる推理小説では飽き足らない読者には
読み応えのある一冊となっている。



ジョンが連続殺人犯の弁護をしているため
狭い地域での人間関係が複雑なものとなり、


子ども達も辛い思いをするようになった経緯や
母親を亡くしてからの思いが繊細に綴られて

日常の思いが積み重ねられて行く様子が
とても読み心地が良かった。


ジョンの息子のテディ(14歳)と娘のマギー(11歳)が
とても生き生きしていて読むのが楽しかった。


文学作品としても十分な作品だと思った。


追い詰められて

苦しんで苦しんで見つけた宝物。


この宝物を見つけられた事は
人生で最大の宝物だと思う。


ジョンとケイトは難題に立ち向かい
人生最大の宝物を見つけた。



推理小説としては少し強引な部分があったけれど
騙されたよね。
最後の最後まで騙された。


最後に来て全てを組み替えなくちゃいけなかった。
やられたよね。



個人的な感想としては
ケイトの妹のウィラも
ジョンの子ども達も
大切にされ愛されて愛されて愛されているのが
とてもうらやましかった。


これほどに愛されている関係は
私には想像出来ない。


これほど正直に自分の内面を
さらけ出せない自分がいるからだろうか?

私の廻りに壁があるのだろうか?

そんな事も考えてしまった。


それほどこれは愛に溢れた小説で
身近に見たことのない関係なのだった。


見返りを求めない与えるだけの愛情は
人を豊かにするんだろうなと思った。


心の安定と粘り強さに
一番大事なものなんだと思う。



大震災で荒んでいた心に
愛がたっぷり染み込んで癒しとなった(*^▽^*)


この本を贈ってくれたNさん
助かりました。

ありがとうございましたm(_ _)m