多摩川のふもとで犬や猫と暮らしている

動物病院 EL FARO 院長が日々の診療の中で考えたことや思いついたことを書いています。

内容は、動物や獣医療に関することや、それ以外のことも、色々です。


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「産湯」についてちょっと調べてみた。

子供が産まれたら産湯に入れて沐浴させる…日本ではごくあたりまえの光景である。
妊婦さんが産気づいたら産婆さん(今は助産師さんと言う)を呼んで、お湯を沸かして産湯の準備をして、旦那さんは所在なくウロウロして「ほら、男は邪魔だからどいてどいて!」などと言われたりして…。
日本の伝統的な出産風景だろう。

でも最近、出産直後に産湯に入れない、という産科医院が増えているらしい。
実際、私の子供が産まれたときも、産湯に入れたのは出産翌日であった。
「出産直後は体温が下がるから。」と言われたそうである。

「葛飾赤十字産院」のサイトを見てみると、こんなことが書いてある。

《以下サイトからの引用/抜粋》
・沐浴は、赤ちゃんの皮膚を清潔に保つだけではなく、生まれた子供のけがれを清め、自分たちの家族や社会に受け入れることの宗教的・儀礼的意義も含まれていた。
・入院中の赤ちゃんは、ママのおなかにいた時の環境から外の世界に適応する時期であり、全身状態が不安定。
・沐浴は、小さな赤ちゃんにとって、まして外の生活に慣れ始めるこの時期にはかなりの体力の消耗をすることになる。
・産まれた時、赤ちゃんには、胎脂(たいし)や羊水がついており、この胎脂や羊水をできるだけ落とさずあえて大切に自然な状態にする。
・胎脂とは、産まれた時に赤ちゃんのからだについている白い脂のこと。
 胎脂の果たす大きな役割は、1.赤ちゃんの体温を保つこと、2.皮膚から細菌が入るのを防ぐこと
・そこで、当院(葛飾赤十字産院)では沐浴に変わる『ドライテクニック』という方法を取り入れている。
 この方法は、血液などで汚れている所のみガーゼでふき取り、赤ちゃんへの負担を最小限に行う方法。
・出産直後の沐浴はせず、退院前(全身状態が安定する4、5日目)に初めての沐浴をする。

 
このサイトによれば、胎脂がついたままでも決して「くさい」臭いにはならないそうで、赤ちゃん本来の香りがするのだそうである。

考えてみれば当然のことで、もともと動物や原始時代のヒトは産湯になどには入れなかった筈だし、産湯と言うのは如何にも風呂好きの日本人らしい風習という気がする。実際、海外では産湯の習慣が無いと言う国も多いらしい。

「入れても入れなくても、どちらでも変わらない。」というのならば、単に習慣の問題なので、どちらでも構わないのかもしれない。しかし、上記のサイトで説明されているように、体温低下のみならず体表のバリアを破壊して乾燥や細菌感染から身を守る能力を低下させるのならば、医学的にはむしろ「やらない方が良い」行為と言うことになりそうである。


「今までは良かれと思ってやって来たことが、実は良く無かった」という例がもうひとつ。

慶応大学の眼科の研究でわかったことらしいが、「プールに入った後の水道水による洗眼は却って角膜を傷つける可能性がある」というもの。

ただこの報告は、「洗眼が悪い」ということではなくて、そもそもプールに含まれている消毒用の塩素によって眼の角膜が損傷を受けるのが一番の問題、と言う風に見るべきなんだろう。塩素で損傷した角膜を、さらに水道水で(しかもかなりの水圧で)洗い流すと、角膜上皮も流れてしまうということだと思う。

だから「プールの後の洗眼はするな。」と言うのも、それはそれで問題だろうし、かと言ってプールの塩素濃度の基準を下げるのも、感染症とか様々な問題があるのだろう。
まぁプールの水を常に循環させてフィルターなどを使って浄化する、という方法もあるのだろうけど、学校のプールや市営、町営の小さなプールにまでそのような設備を揃えるのは非現実的だと思う。

まぁでも、あれだけの塩素が眼に悪いのは当然と言えば当然。やはり小学校など小さいうちからでも、ゴーグルを着用してプールに入るようにした方が良いのだろう。

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