シダミヨコさんのバランス芸の仕掛け | 科学のために科学を科学的に笑うべし

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最近、
  「Miyoko Shida Rigolo」
等のタイトルで出てくる、
絶妙なバランスで木の枝のようなものを積み重ねていくパフォーマンスが話題です。

例えばロケットニュース24から、
『日本人女性が見せた「バランス神技」に世界が衝撃を受ける! 「完全に言葉を失った」「これこそ “アート” だ!」』
http://rocketnews24.com/2013/05/14/328295/
を参照してみてください。

美しいですね。
終わりもショッキングで、心に残ります。


身体的にかなり訓練をつんだのだと思いますが、
同時にも大変に使ってるなと感心します。
つまり、やりやすくする仕掛け(アルゴリズム)を考えて、
そのアルゴリズムのパラメータ微細に調整してあります。

やりやすくする仕掛けとは、やじろべえのことを言っています。
パフォーマンスに出てくる枝はどれも反り返って曲がっていて、
しかも端が瘤のように膨らんでいますね。
これはやじろべえが安定するのと同様の効果を目指したからでしょう。

テレビのアンテナ(八木アンテナ)のように、まっすぐな棒を支点に乗せても、棒は安定しません。
風や揺れなど、ごくわずかな外乱があって傾くと、そのまま構造が崩れてしまいます。

やじろべえは、腕二本が垂れ下がって、支点より重心が下に来る形になっています。
やじろべえが少し傾いても、傾きと逆の向きの力(復元力)が働いて元に戻ろうとします。
このため、支点からやじろべえは落ちることはありません。

力学の用語で言えば安定」なのです。

透明雲のブログ-やじろべえの力学


衣装ハンガーもやじろべえに似ています。
重心が支点より下にあるので、多少傾いても元に戻ろうとします。
だからこそ、フックや押入れのポールにかけておけるわけです。


透明雲のブログ-ハンガーの力学


もし重心が支点より上にあるような逆さま衣装ハンガーを作っても、
どこにもかけておけません。
重心が支点より下にこようとして回転して、ポールから落ちてしまいます。



やじろべえの片腕を、別のやじろべえにすると、やじろべえの多重化・多段化ができます。
これが例のパフォーマンスの裏で走っているアルゴリズムのひとつです。



では、何本もの枝を重ねた最終形に持ち込むには、

  • 各々の枝の長さや曲がりかた
  • 枝の重量バランス
  • 前の段までを乗せる点

…などの多様なパラメータをどのように調整すればよいでしょうか?
他にも、安定性目的で自由に重みを調整できるわけではなく、
演技者が持ち上げられる総重量の制限もあります。
手で持つ場所も十分に計算しておかないと、次の段に移行できません。
順番に乗せて行く過程で枝同士や演技者が干渉しないような動線も考えなければなりません。

(ちなみにこれらを設計したのはシダミヨコさんではないようです。)

くだんのパフォーマンスは、身体の働きだけでなく、
もフルに活用して作り上げられたものといえましょう。
バランスの凄さだけに目を奪われず、
アルゴリズムとパラメータ調整の豊穣な世界に目を向けると、一層楽しめることでしょう。


踊りだって、このように身体と脳、キラキラ両方キラキラを使いたいものです。