ウィリアム・シェイクスピア『新訳 ロミオとジュリエット』 | 文学どうでしょう

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新訳 ロミオとジュリエット (角川文庫)/シェイクスピア

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ウィリアム・シェイクスピア(河合祥一郎訳)『新訳 ロミオとジュリエット』(角川文庫)を読みました。

シェイクスピアと言えば、一般に有名なのはやはりこの『ロミオとジュリエット』でしょう。みなさんももうストーリーはきっとご存知だろうと思います。宿敵同士の息子と娘が恋に落ちてしまうというストーリー。「ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの。」(51ページ)

残念ながら、ぼくは舞台では観たことがないです。いつか観てみたいですが。映画はいくつか観ていて、オリヴィア・ハッセーがジュリエットを演じたバージョンもまあいいと思います。音楽が有名ですよね。きっとみなさんも一度は聴いたことがあるだろう曲です。

でもぼくの中の一番のお気に入りは、『ロミオ&ジュリエット』です。レオナルド・ディカプリオがロミオで、クレア・デーンズがジュリエット。

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この『ロミオ&ジュリエット』はおそらく賛否両論あるとは思うんですが、舞台を現代に置き換えて、どことなくパンクな感じで映画化した作品です。拳銃が出て来たり。現代っぽい感じの雰囲気でいて、セリフはシェイクスピアに忠実にやっている。そんなところも面白いです。

初めて観たのは多分、中学生の頃ですが、クレア・デーンズにずきゅーんとやられてしまいました。か、かわいすぎる・・・。いやそれほど美人な女優さんではないんですが、すごくキュートだったんです。羽のある衣装もいいですし。ジュリエットっぽいかどうかはおいておいて、すごく好きでしたね。みなさんも機会があれば、ぜひ観てみてください。

あと、『ウエスト・サイド物語』という映画があります。

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ブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、『ロミオとジュリエット』を元にしています。ニューヨークを舞台に、少年ギャング団の争いを描いた作品です。似ているようで、『ロミオとジュリエット』とは結構違うんですが、ミュージカル映画として有名なので、興味のある方はこちらも観てみてください。

では映画の紹介はこれくらいにしておいて、『ロミオとジュリエット』の内容の方に入って行きます。

『ロミオとジュリエット』の話自体は、実際に舞台を観ていないので、なんとも言いづらい部分はありますが、どこが面白いのか、どう楽しめばいいのか難しい感じはあると思うんです。いや、ぼくだけかもしれませんが。

単なるラブストーリーととればいいのか。報われない愛の話? すれ違う愛の話? 

しかし、物語の最後まで読んで、浮かび上がるものは、純粋な愛の形でもなんでもなく、宿敵同士であるモンタギュー家とキャピュレット家の関係性の変化なわけです。つまりロミオとジュリエットの2人を踏み台にした、ある種の犠牲の上に成り立つ平和。そういった教訓話のようになっています。

そもそもロミオとジュリエットは、愛の物語としては弱い感じがします。ロミオとジュリエットが出会ったのは、ある晩餐会ですが、ロミオがそこへ何をしに行ったかというと、ロザラインという女性に会いに行ったんです。

ロザラインのことが好きだけれど、報われなくて悩んでいるロミオ。そんなロミオがジュリエットと出会って恋に落ちるわけです。ロザラインへの気持ちは本当ではなくて、ジュリエットへの気持ちは真実の愛だなんて、大人になって汚れてしまったぼくの心には到底思えなかったり。

ロミオとジュリエットがお互い誰だか知らなくて、巡礼にかこつけてキスする場面が、ぼくはすごく好きです。キスをして、「こうしてぼくの唇から、あなたの唇へ、罪は清められました。」とロミオが言うと、「では私の唇には、あなたから受けた罪があるのね。」とジュリエット。するとロミオは、「この唇から罪が? なんというやさしいおとがめ。その罪を返してください。」(43ページ)と言ってまたキスをする。

カップルの方は、『ロミオとジュリエット』ごっこをぜひやってみてください。盛り上がること間違いなしですよ! 

なんだかいつの間にかあらすじに入ってますが、どのみちみなさんご存知でしょうから、今日はざっくばらんにやります。でも、もうちょっとまとめましょうか。

物語の舞台はイタリアのヴェローナ。モンタギュー家とキャピュレット家という名門の一家があるんですが、お互い激しく憎みあっているんです。一族の者から召使に至るまで、顔を合わせればしょっちゅう小競り合いをしています。

モンタギュー家の息子がロミオ。ロミオはロザラインという女性に恋して、ため息ついて暮らしています。ある時、ロザラインに会うために、こっそりキャピュレット家の晩餐会に出て、ある女性と恋に落ちます。やがてその女性が仇敵キャピュレット家の娘、ジュリエットだと分かる。

ロミオはジュリエットの気持ちが知りたくて、ジュリエットの元へ行く。「塀なんか、恋の軽い翼でひとっ飛びです。」(53ページ)

有名なバルコニーの場面になります。ここでのジュリエットの呟きから、愛されていることがロミオに分かります。たとえロミオがモンタギュー家だろうと構わないという、「バラと呼ばれるあの花は、ほかの名前で呼ぼうとも、甘い香りは変わらない。」(52ページ)というセリフはもうかなり有名ですが、やはり印象的です。ソシュールのシニフィアンとシニフィエを連想したり。それはまあともかく。

ロミオとジュリエットは密かに結婚することにします。2人の仲立ちをするのが、修道士ロレンス。ロレンスは、この結婚がモンタギュー家とキャピュレット家を繋ぐ絆になるといいと思うんですね。

愛に満ち溢れたロミオ。ところがここである悲しい出来事が起こります。ジュリエットのいとこにティボルトという男がいるんですが、このティボルトはロミオを仇のように憎んでいるわけです。ところがロミオは奥さんのいとこなので、争う気がおきない。しかし状況はこんがらがり、ある悲劇的な出来事が起こります。

まあこの辺りはざっくり省いておきましょう。ロミオは追放されることになります。そしてジュリエットは親の命令で、急に結婚させられることになってしまう。絶体絶命の2人。

修道士ロレンスはあるアイディアをジュリエットに提案します。不思議な薬があって、それを飲むと、42時間はまるで死んだようになるというんです。そうして結婚式を回避できれば、ロミオと2人で幸せに暮らせると。ロレンスは事情を書いた手紙をロミオに送ります。

すべてが幸せに向かうはずでした。計画通り事が運べば。果たしてロミオとジュリエットの愛の行方はいかに!? 物語の結末とは!?

とまあそんなお話です。

この修道士ロレンスもなんだかあまり好きになれなかったんですよ。手段が姑息というか。考えが浅はかというか。ロミオとジュリエットの恋愛にあまり感情移入もできないですし、小細工というか、作戦というか、そういうのもすごいというよりは、考えが足りないように思えてしまう。

なので、純粋な気持ちの残っている、若い内に読んだり観たりすると楽しめる話なのではないかと思います。大人になるとどうも冷めてしまう部分がありますね。これはある程度仕方がないことなのかなあとも思います。

『ロミオとジュリエット』で面白かったのは、引き裂かれそうになる2人の愛への共感でもなく、浮かび上がる平和への教訓でもなく、やはりセリフですね。大袈裟な愛のセリフ。これはすごく印象的でした。詩のような形式を持っている部分もあるようです。

映画などを観ていると、シェイクスピアのセリフの引用で会話が成立しているオシャレなラブコメなんかがよくあって、ああいうのにすごく憧れます。

なんとなくのストーリーは知っていても、ちゃんと読んだことはないであろう『ロミオとジュリエット』。気が向いたらぜひ読んでみてください。それほどおすすめというわけでもないですが、セリフなんかはやっぱりとても印象的な作品です。