ギ・ド・モーパッサン『女の一生』 | 文学どうでしょう

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女の一生 (光文社古典新訳文庫)/ギィ・ド モーパッサン

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ギ・ド・モーパッサン(永田千奈訳)『女の一生』(光文社古典新訳文庫)を読みました。

モーパッサンはどちらかと言えば短編小説の名手とされていて、短編小説嫌いのぼくがめずらしく好きな作家の一人です。そちらも近い内に紹介したいと思います。

『女の一生』は以前読んだ時はそれほど印象に残らなかったのですが、今回改めて読んでみると、かなり面白い。暗くてじめじめした話かと思ったら、そうでもなかったです。なんというか、まあある一人の女性の生涯の話です。

フランス文学に共通するテーマの一つとして、人妻との恋愛というのがあると思いますけども、この小説の主人公ジャンヌは、そうした女性像とは対極にある存在です。

貴族の生まれで、ずっと修道院で暮らしていたジャンヌ。大人になって、ようやく外の世界に出てきます。色々な想像が膨らんでいるわけです。自分の人生について。どんな素敵なことが起こるんだろうと。

ジャンヌは素敵な子爵ジュリアンに求婚されます。そして結婚する2人。幸せな生活が待っている・・・と思いきや、少しずつ歯車が狂い始めます。

まずは結婚初夜。ジャンヌはいわゆる箱入り娘ですから、男女の性的関係についての知識はからきしないわけです。すごく驚いて、同時に激しい嫌悪感を感じる。この辺りは実際に読んでもらいたいのでざっくり飛ばします。

そんなささいなところから始まり、素敵だったジュリアンが少しずつ変わっていくんです。おしゃれをしなくなり、金に厳しくなる。使用人に粗野な態度を取り始めます。

このあとの中盤辺りはすごく面白くて、誤解を恐れずに言えば、昼ドラみたいな感じです。それくらい波乱万丈で面白いという意味です。衝撃の事実に重なるさらなる衝撃的事実。家政婦は見たなみのガガーン! です。あんまり書いてもあれですが、夫ジュリアンにまつわることです。まあジュリアンの女性関係ですね。

中盤はエンタメとして面白いんですが、後半も面白くて、こちらは人生とはどういうものなのか? という問いが投げかけられる感じです。

結婚生活があまりうまくいかないわけですから、ジャンヌは子供に過度なほどの愛情を注ぎます。その子供にまつわる話が後半です。あんまり書きませんが、まあどうしようもないやつなんです。このポールってやつは。

ざっくり飛ばしましたが、そんな感じのお話です。物語はある人物の台詞で幕を下ろします。その一言がこの小説全体を包み込んでいます。人生とはどういうものなのか、というテーマに対する一つの解答が提示されるわけです。

あまりにも純粋なジャンヌの愛と性、そして宗教にまつわる問題など、様々な要素が楽しめます。エンタメとしてもかなり楽しめる作品だと思うので、ぜひ読んでみてください。昼ドラなんかが好きな人におすすめですよ。ああ~、まさか! えええ! とかそんな感じです。読みやすいですのでぜひぜひ。