筒井康隆『旅のラゴス』 | 文学どうでしょう

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筒井康隆『旅のラゴス』(徳間書店)を読みました。

筒井康隆はぼくも好きな作家で、相当数読んでいるはずですが、これはそのどれとも違った印象でした。

決して読みやすいものではなくて、文体とかは固く、ちょっととっつきにくい感じです。海外SFの翻訳に近い感じと言ったらよいかもしれません。

最初は章ごとに短編のような形式が続きます。

主人公であるラゴスがどこから来たのかとか、何を探して旅をしているかとか、ほとんど説明がないまま、馬と気持ちを同化させたり、トリップという、空間転移みたいなのが始まって、おお面白い設定だ~と食いつきました。

ぼくが本当に夢中になったのは、「王国への道」という、ちょうど半分ぐらいのところからですね。

ここは別にふせなくてもいい気もしますが、まあとりあえずぼかして書いておきますけども、ラゴスが探していたものにたどり着くわけです。

そこでラゴスは一心不乱にあることをする。その内に、ラゴスは王様にまつりあげられます。王様になり、結婚もして、子供も生まれる。

このあたりの女性のキャラクターとかも面白いんですが、それはまあともかく、ラゴスが手に入れたものは何だったのか? そして、ラゴスが最後追い求めて行くのは誰だったのか? というのが重要なキーになります。

本好きの人は、読んでいてすごく楽しいと思いますね。本がたくさん出てきますので。ラゴスは、電気の発明とかを本で知るわけですが、実際に発明されるを待ったりしている。

その辺りから、ラゴスのいる世界というのがどういう世界なのか、というのが分かったりもします。

読みやすい文章のエンタメが好きな人には向かないかもしれませんが、わりとかちっとした文章でも大丈夫だ、という人は、ぜひ読んでみてください。SF好きの人もぜひぜひ。

恒例のリンクですが、これは多分、「壁抜け芸人」に影響を与えているかどうかわかりませんが、マルセル・エイメという、幻想小説を書くフランスの作家に、『壁抜け男』というのがあるんですよ。

壁抜け男 (異色作家短篇集)/マルセル エイメ

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これは幻想文学好きにはたまらない1冊で、他にも「サビーヌたち」という、同時に何人も存在できる女の人の話があったり、短編集ですが、かなり楽しめます。おすすめです。