外国人にも適用、中国の社会保険 | 日中ビジネスすごろく道中記

外国人にも適用、中国の社会保険

今朝の日経新聞に、「中国、外国人にも社会保険」という記事が出ていました。建前的には「海外の優秀な人材を確保する上で、外国人向け社会保障の整備が必要」とのことですが、私は全く違う解釈をしています。


基本的な考え方は取れる所から取るです (私見です、違う解釈もありうるかもしれません)。


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中国の60歳以上人口は12.5%(日本は30.4%)、一人っ子政策を採った為、今後の人口分布は歪で、老齢人口を若者が支えることができない構造になっています。


実は、中国の社会保障制度というのは崩壊の危機に瀕しており、近い将来を見れば日本など比較にならない位、深刻です。


よって、現在採っている社会保険の仕組みについても、企業負担はいろいろな名目で少しづつ上がってきており、要するに【こういう部分を手厚くして行かないと不満が噴出する。だけど、国では持ち切れないので企業の方でよろしく】というような背景があるのです。



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そういう背景を考えた時に、この新たな仕組みは、外国企業や外国人の負担を増やし、資産を中国側に残してくるということに繋がる仕組みというのが私の解釈であり、それから連動する動きについても大きな目的の一つだと思います。


中国で中国人社員を雇用する為には、社会保険の負担(個人と会社両方)が必要です。それも含んだ人件費の額は大凡給料の1.4倍~1.5倍です。社会保険の中身としては、医療保険、養老保険、失業保険、労働災害保険、育成保険、住宅積立金 となります。


現実的に中国で一生働くということであれば、いざ知らず、日本や本社からの赴任については、現地社長や幹部なども多く、大凡3年~5年で日本に戻るのが普通です。現地採用の日本人についても、一定期間後は日本に帰る方が大半


そうすると、どうなるかというと、現実問題としては積み立てた分は捨ててくる(中国にあげてしまう)という事になります。


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健康保険についても、今までも旅行傷害保険などの適応で、現地採用者、赴任者についてもきちんと医療が受けられるようになっていますし、その他の項目についても、実態として将来的に使う可能性が無い項目ばかり。


(労働災害や養老や生育保険など、私の目か見ると、まず実質的に使わないだろう、使う人は極めて少数という物ばかり。絶対使わないだろう住宅積立金については除外する様子です)


もちろん現地採用の日本人の場合は、日本での社会保険の適応外になるので(当然、医療保険などは上記の障害保険などに加入させカバーするのが普通です)、中国での加入というのも解らなくはありませんが、それによる恩恵がほとんど無い状態。さらに、日本に帰ってこの積立を使いようがあるかというと無い訳です。


また、日本からの出向組みについて言えば、二重負担になります(会社のみならず個人の二重負担が出ますので、最終的には個人分を会社が負担せざるを得ないようになると思います)。更に、現地社長レベルの給料に適応した場合、その金額は莫大となります。



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その結果起こることは


①本国からの出向という形態は採りにくくなる

コストが今までより大幅に増加する、今まで一人の出向者に対して2000万円掛ると言われていた金額に更に500万以上が乗っかる形になります。


②外国人の現地採用がしにくくなる、あるいは給料が下がる。

中国の貨幣価値水準の問題、外国人であるが故に掛る必要コストを考えた場合に、どうしても現地の中国人と同じ給与という訳にはいかない実態がありますが、他方、社会保険の負担が少ない(医療関係など掛るものもあります)事から、その分給料を高めに設定することが可能でした。そこにコスト増ですから、厳しい状況が予想されます。


③中国人社員の雇用増加

結果的に、日本からの赴任、現地採用共に使いにくくなり、より現地採用を増やさなくてはならない方向に向かうと思います。


制度の詳細はこれからということですが、最低でも出向者で日本で社会保険を負担しているケースについては免除すべきです。更に、使えない保証は意味が無く、日本などにも一部制度があるように、積み立てた分を、中国を離れる際に返してくれるような設計にして欲しいものです。


だめでしょうね、勿論。返すんだったら意味ありませんものね・・・・・



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