原作:スタジオ・ファンタジア
監督:もりたけし
声の出演
  かかずゆみ、折笠冨美子 清水香里 菊池志穂 他
制作:スタジオ・ファンタジア

さて、前回「ストラトス・フォー」の感想を書いたわけですが、その完結編となる「ストラトス・フォー ADVANCE」です。

・・・とその前に1点修正。
この作品、分割2クールでなくOVA作品でした。どおりで当時みれてないわけだ・・・・・
(しかし最近はOVAという言葉を聞かなくなったなぁ。。。昔はざらにあったのに最近は、映画ばっかり。。時代の流れを感じます。。)

アニメシリーズの後日談を描いた「ストラトス・フォー Xシリーズ」が全2巻
アニメシリーズの謎を解明する「ストラトス・フォー ADVANCE」が全8巻
の計10本がOVAシリーズとして出ていました。

今考えるとこれで売れる程、当時はDVDの販売が良かったんでしょうねぇ。。
今では考えられないような販売の仕方です。これまた時代が変わったんだなぁ・・・

さて、本編

まず、シリーズの大まかなあらすじと感想を。


「ストラトス・フォー Xシリーズ」は、アニメシリーズの後日談
ストラトス4(ロケットの名前)で目標だった宇宙へ行くことができた美風達は新たな目標を見失いかけるもコメットブラスターに出会い、ある事件をきっかけにコメットブラスターになるという新たな目標をもってコメットブラスターの採用試験に向けて出発するというもの。

この中で、アニメシリーズで謎だった「美春」の謎についても触れられます

さて、この「Xシリーズ」、というか作品通じてなんですが、大人達が非常にかっこよかったです。
宇宙から帰ってきて目標を見失いかけていた美風達に「お料理の下ごしらえが終わったところなんだよ。これから立派になっていくんだよ。」と声をかけるランさん、自分達の今後を悩んでいた翼と空の背中を押して奮いたたせる岩崎教官等、すべての大人達のなにげない言葉の中にある優しさが大人のかっこよさを全面に引き出していました。

「第7オービタルステーション」から帰還したコメットブラスター「久保・アネット」に対して、励ます美風たちの姿が大人達からもらった優しさを今度は悩んでいる人たちに渡している姿は、「あぁ、だから下地島基地は不思議な魅力があるのだなぁ」と断言できるものでした。

そして、「Xシリーズ」の注目はもう一つ

それは、アニメシリーズ以上にじっくりと描かれる飛行シーンです。

ストラトス・フォーの最大の魅力である「隕石撃破」までの一連の飛行シーン
アニメシリーズでは、出撃から隕石撃破までのシーンが比較的多かったんですが「Xシリーズ」では出撃前の機材チェックから始まり、出撃→フォーメーション(?)チェンジ→隕石撃破の一連の流れがじっくりとかかれていて、これだ!これが見たかったんだ!これこそがストラトス・フォーだと思ってましたw

特に好きだったのが、美風達の出撃前のチェックシーン
(美風)「コントロールチェック」
    「右、左、ニュートラル」
   「前、後ろ、ニュートラル」
(香鈴)「チェック」
(美風)「ラダー」
「ライトフォルスケール」
(香鈴)「右」
(美風)「レフトフォルスケール」
(香鈴)「左」
(美風)「OK、ニュートラル」
(香鈴)「チェック」
セリフを覚えるくらい何度も見返しましたw
なにがいいって「可愛い声のキャラクター」がこんながっつりな専門用語を言うというこのギャップがいい!
ストラトス・フォーの魅力の1つはこれですねw


「ストラトス・フォー ADVANCE」は、美風達の代わりに新人「霧子・美麗・磨奈」の3人が入ってくるところから始まります。
・・・が、美風達はコメットブラスターの試験に失敗して下地島基地に戻ってきます。
大部分は省略しますが、最終的には岐阜基地に回収されてしまっていた「ストラトス4」に美風が乗って彗星を破壊するところでアニメは完結しました。

このシリーズで特徴的だったのは、美風達ではないキャラクターが大活躍したところ
特に、テストパイロットとなった翼と空がメインとなる「code:205 DASH ONE」は男臭くて非常に良かったです

教官「岩崎・藤谷」の彗星迎撃にフォローしてあげようか?と提案する翼たち
それを言われて火がつく岩崎
みたいな感じでミリタリー系であるにもかかわらずスポ根アニメになってました

さらに、彗星迎撃に成功するも墜落してしまった翼と空が大怪我を追いながらも肩を担いで歩いてくるシーンは必見
滑走路の熱で揺らぐしかいを魅せるカメラワーク、少しピンボケで映す二人の姿、駆け寄る美風たち
さながら実写映画のような演出はグッドです


この「ADVANCE」シリーズ
下地島基地を取り巻く環境の変化を最初に持ってきたのが良かったなぁと思います。
アニメシリーズでヒヨッ子だった美風・香鈴・彩雲・静羽が下地島基地正規パイロット&見習い教官に、翼・空がテストパイロットになりました。
そして、霧子達新人の登場。

美風達が正規パイロットとして配属されたり新人を教官として教育するシーンを見せることで、美風達の立場と責任の変化したことを表現しているので、視聴者は「美風達の成長」を感じると共にその世界観にもう一度戻りやすくなっていました。


と、ここまで書いて作品全体としての感想を。

まず、アニメシリーズの伏線回収のお話から

①「地球外生命体」とは??
→自我を持つ宇宙ウイルス「スペースシード(SS)」と呼称されるもので、人の脳に寄生。さらには、キスによる接触で感染するものだった
また、「スペースシード」に感染した人を「キャリア」と呼ぶ。

②「彗星」の正体とは?
→わからないまま。
ただ話を見る限りだと、ウイルスが彗星の中に寄生している状態であり、彗星自体は宇宙の流れ(自然現象)によるものだと思われる。

③「天体危機管理機構」はなにをたくらんでいるのか?どこまで知っているのか?
→「スペースシード」を人類の進化に利用しようとする「推進派」と単純に彗星の危機から地球を守ろうとする派閥(保守派)の2つの派閥があった。
どこまでの人間が知っているのかは不明。
下地島基地の司令である「レイノルズ」「リン」は「スペースシード」について知っていたが美風たちが知るまではこのことを伏せていた。


④査問監の狙いは?
→名前は「月野」。どちらの派閥なのかは最終的には不明だが、査問委員会に出席していることから「推進派」の人間のよう。
過去に、香鈴と仲が良かったようで「絶対に助けるから」という言葉を守るために下地島基地の手助けをしていた。
香鈴と月野の関係性は不明だが、年齢(見た目)からして兄または父とは思えないことから元研究員かなにかだと思われる。
香鈴が月野に対して父とも兄とも言ってないことから実は生きていたーということもなさそう。

⑤「地球外生命体」に感染していた美春はいつから感染していたのか?
→第7オービタルステーションに配属前から感染していた。(正しくは人体実験により感染)
子供のサンプルが欲しい推進派が美春の妊娠を利用して子供に感染させるために人体実験を行い感染をさせた。
子供の名前は、「佐古レイ」。シリーズ中では両親に出会うことはなかったが「リン」の住む「広陳」で一時的に引き取られた模様

⑥「地球外生命体」に感染したコメットブラスターたちはどうなったのか?
→全員が完治。様々な不安を持ちつつも現場へと復帰した。再度感染する可能性は0ではないようだ

⑦美風達はコメットブラスターになるのか?
→シリーズの最終回では、まだメテオスイーパーとして飛行機に乗っていた。

⑧佐古っさんと美春はどうなるのか?
→シリーズの最終回では、美春と佐古っさんがであったところでの描写のみ。
おそらく下地島基地に戻って「レイ」と出会い一緒に暮らしていくのではないだろうか。


とまぁ、伏線についての結果はこんな感じ。

んで・・・

表面的なところでは、CG技術の進歩がすさまじいです。
アニメシリーズでは1カットで1台~2台が描かれていたんですが、このOVAシリーズでは1カットで4台~5台くらいをざらに描かれていました。

これが非常に大きく、迎撃シーンでの迎撃方法のバリエーションが増えたり、管制塔だけでなく別の飛行機に乗っている人物との絡みが増えたことで彗星迎撃の緊張感や焦燥感が増してます

キャラクターたちについては、文句なしで全員可愛い&かっこいいです
これは文句のつけようがない

ストーリーとしてのお話で行くと、若干風呂敷を広げすぎたのかなぁという印象を受けました。
もうちょっと新キャラクターを活躍させてあげても良かったと思います。
特に、「ルードヴィッヒ・ミッターヒューバー」
この人最初は悪役かなぁって思ってみてたのに結局のところただの下地島ひいては如月教官のファンであるいい人なキャラクターに終わっちゃったのがなぁって感じ

また、「スペースシード」関連の話を深堀して欲しかったです。
内部派閥とか人体実験とか面白そうな部品は結構揃っているのにちょっと簡潔にまとめすぎたなぁという印象でした。

といろいろ書きましたが、
この作品のテーマはやっぱり「夢を追いかける少女達の物語」ですね

美風達が時には失敗しながらも負けん気と諦めの悪さとチームワークで泥臭く困難に立ち向かう姿は気持ち良く、また経験による成長をシリーズ全体を通して感じることは非常に良いです。

また、若者の夢を叶えるためのチャンスをあげたり落ち込んだ時には励ましてくれる大人達の優しさは本当にすばらしく、自分もこんなかっこいい大人になりたいなぁと思えます。

この作品は結構ミリタリーの部分に注目されることが多い作品だと思うんですが、私はこの作品の最大の魅力は登場するキャラクター達の個性だと思ってます。

「ガンダム」とか「マクロス」みたいなド派手でかっこいいロボットアニメでは決してなく、飛行機で飛んでミサイルで彗星を迎撃するという比較的地味なお話です。
(迎撃のときはヘルメット被るから顔しか見えない上に、声も無線で聞こえるときもありますし)

それでもこの作品の人気があったのはやはり綿密に設定された世界観やキャラクター像
リアルな飛行機動作やSE、カメラワーク、話数を重ねる毎に上がるクオリティ。
これらすべてが最高であったからだと思います。

本当に良く出来た素晴らしい作品でした。


【おまけ】
どうも2015年11月26日にブルーレイディスクとして発売されるっぽい・・・
HD化とかではなく、TVシリーズはそのまま4:3で収録されるみたい・・・
OVAは16:9のようだし、魅力的だなぁ。