2015年。「私たちのハァハァ」製作委員会。
  松居大悟監督・脚本。
 POVを使ったホラー映画は日本でも数多く作られているが、青春映画でもついに、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ』シリーズに匹敵する傑作が登場した。
 『VHS ファイナル・インパクト』にがっかりさせられていただけに、久しぶりにPOV形式の映画で感動する、という経験をすることが出来た。

 見ようと思ったきっかけは、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭での大森一樹監督が「少なからず衝撃を受けた」というコメントを寄せていたことだった。
 『ヒポクラテスたち』を作った巨匠がニヤニヤしながらも敗北感に打ちひしがれている姿が眼に浮かんだ。
 青春映画の傑作は常にそれまであったものを古臭いもの、時代遅れなものとして排除することで更新されてきた。この映画で新しい更新がなされたに違いない、そう思うと期待が高まった。

 しかし、面白い映画だったが、思ったほどではなかった。
 良くも悪くも非常に荒っぽい作品で、ドキュメンタリー映画とフィクション映画との境目をあいまいにしようとする試みがなされているが、4名の出演者が全員アマチュアだったら、もっとすごい映画になっていたのかもしれない。

 4名の出演者のうち、1名はプロの俳優で、1名はシンガーソングライターとして活動中、1名はネットメディアの有名人で現役の高校生で彼女(大関れいか)を知らない者はほとんどいないくらいの存在らしい。
 3名は演じることを経験済みであることから、映画を作品として成立させようとする意識的な努力が垣間見えて、しかもプロの俳優以外の演技は相当にレベルが低いので、こんな場面やせりふは必要なかったなと思われる所が時々見えてくる。
 問題は残りの1名、オーディションで選ばれたというほぼ素人の新人、真山朔の存在だった。最も長い時間カメラに映っていて、便宜上は主役扱いのようにも取り扱われているこの17歳の女性の、せりふの全部がアドリブではないのかと思われる、脚本としては全くダメで考えなしにものを言っているようにしか見えない存在がこの映画を高い所へレベルアップさせていると思える。

 この先女優になる気があるのかどうかも不明な、考えるより先に何か言ってしまう無軌道でアナーキーにさえ映る本物の女子高生の存在が、この映画がドキュメンタリーでもフィクションでもあり得る可能性を感じさせ、どっちでもかまわないと思った。
 とてつもない傑作に成り得た可能性を秘めた失敗作、それが『私たちのハァハァ』だったのかもしれない。
    公式サイト(日本)
haahaa01

 物語のモチーフになっているクリープハイプの音楽にのれなかった、好きになれなかった、それがこの映画に違和感を感じた最大の理由だった。
 女子高生がクリープハイプに熱狂するということは、現実に多少は存在するとしても、リアリティに乏しく映るのが現在の情況のような気がする。
 それよりは女性だけのバンド、「ゆゆん」に熱狂するという設定のほうがリアルなような気がする。

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