2011年。デンマーク/スウェーデン/ドイツ/フランス。"MELANCHOLIA".
  ラース・フォン・トリアー監督・脚本。
 『アンチクライスト』を見ていないままに、この映画を見たのは出演している俳優の差、キルスティン・ダンストとキーファー・サザーランド、ウド・キアにステファン・スカルスガルドといった組み合わせの興味深さだった。
 実際にキルスティン・ダンストとステファン・スカルスガルドとは面白い結果をもたらしていた。

 見た直後には、こんな私小説みたいな個人的な映画が商品として流通できるほど今の世の中は甘くないのではないか、という疑惑、かすかな反感のようなものが強かったような気がしたが、
 見て2ヶ月ほどたった今では、この映画は特別限定販売の商品のような希少価値を持つもので、入場料金も一般の3倍くらいの価格に設定しても良かったような気さえしてきた。

 回復するあてのないうつ病に苦しむ映画監督と、うつ病に取りつかれた女優とが共同で創り上げた地球の消滅するまでの物語は、多かれ少なかれメランコリーに浸かって生きる映画好きな人にとっては、おいしいコーヒーのように味わい深いものだと思われる。
 重度のうつ病であれば想像力自体が失われてしまうので、少なくともこの映画の撮影期間は自分の病気を突き放して見ることが出来る程度には回復していた状態だったようだが、
 キルスティン・ダンストは現在も多忙なスケジュールで生活しており、果たしてうつ病と言えるほどに深刻な状態だったのかどうか疑わしいが、画面の中では明らかにダウナーな状態にある顔色のさえない女性にしか見えなかった。

 メランコリーから離れてこの映画を見ると、悲観的な世界観に支配された、よくわからない部分の多い中途半端なSF映画だということしか判明しないようにも見える。
 実は大したことのない映画なのかも知れないが、世界各国の少なくない数の映画を見る人々がこの映画を愛している。自分も同じようにこの映画を愛してみよう、と思った。
    IMDb            公式サイト(日本)
映画の感想文日記-melancholia01
 同じ時期に似たような主題の、『アナザープラネット』というDVDストレートのアメリカ映画を見た。メランコリーの度合いは『アナザープラネット』の方が強いかも知れない。
 ただし、『アナザープラネット』がどのようにして生きるべきか、といった安易な教訓物語の方向に傾きがちなのに対して、『メランコリア』はそんな問いかけの方角を見る気配もない分、「アート」っぽいカッコ良さを保っている。お金を払うからには、やはりカッコ良いこと、持っていたくなるデザインの美しさが欠かせない。
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