2010年。アスミックエース/フジテレビジョン/村上春樹/東宝。
トラン・アン・ユン監督・脚本。村上春樹原作。
はるか10年以上前に読んだ原作のことはほぼ忘れてしまった。『ノルウェイの森』って、こんなにヌーヴェルヴァーグっぽい物語だったかな、ともう一度原作を読み直してみよう、という気にさせてくれただけでもすばらしい映画だった。
本家フランスのヌーヴェルヴァーグというより、日本の松竹ヌーヴェルヴァーグっぽい。すぐに連想したのは吉田喜重監督の『秋津温泉』だった。
ほとんどそっくりな物語といい、主演の松山ケンイチと菊池凛子の姿が、長門裕之と岡田茉莉子の姿にだぶって見えてくるような感覚があった。
しかし、そんなことはどうでもよくなるくらいにこの映画がすばらしかったのは、緑を演じる水原希子の「何てかわいい女なんだ!」という魅力にノックアウト状態になったからで、ただひたすらに水原希子の出てくるのを待ち望みながら、スクリーンを見ていたので、個人的にはこの映画の主演は水原希子となった。
なぜそんなに魅力的に映ったのか、と思ったら、1960年前後の増村保造、小津安二郎、成瀬巳喜男、市川崑などの映画に出てくる、主演ではなく名前も記憶にないような脇役女優のルックスと雰囲気を持っており、
大量生産の時期だったために脚本の練れてなさや、リハーサル不足からくるせりふのぎこちない感じや、滑舌があまり良くない点などが、キュートな魅力に反転する、という映画のマジックが水原希子にも起こっていたのが主な要因だろう。
「映画の中の理想の女性像」というファンタジーにバッチリとはまったキャラクターもすばらしい。
それにしてもジョニー・グリーンウッドは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に引き続いて、良い仕事をした。音楽の入るタイミングの絶妙さだけでも見ていて楽しかった。使われていたCANの音楽もすばらしくて、
画面と音との組み合わせが、ロマン・ポランスキーの『テス』や、ゴダールの『軽蔑』や『気狂いピエロ』をフラッシュバックさせる瞬間があった。
村上春樹原作の映画を見るのは、山川直人監督の『パン屋襲撃』、『100%の女の子』、大森一樹監督の『風の歌を聴け』に続いて4本目だったが(『トニー滝谷』は見ていない)、この『ノルウェイの森』がいまのところの最高傑作であることは間違いないだろう。(※村上春樹にあまり興味のない者の感想です。参考にはなりません。)
公式サイト(日本)
映画全体の印象としては、中途半端なベルナルド・ベルトリッチという感じがしないでもなかった。特に初期の『革命前夜』には似ていたような気がする。
時代背景が同じということもあり、『ラストタンゴ・イン・パリ』も連想した。あの映画でのマーロン・ブランドが街を歩きながら一瞬顔を引きつらせるようにしかめるオープニングのシーンと松山ケンイチのキャラクターが重なって見える瞬間もあった。
最初に出てきたキズキ役の高良健吾を見ながら、ワタナベ役は高良健吾でもよかったんじゃないか、とも思ったが、最終的には松山ケンイチの熱演ぶりに感銘を受けた。
直子役の菊池凛子は、堀北真希あたりがふさわしいんじゃないかという気がしたが、国際市場を当初から意識した映画なので、外国人に見てもらうには無難なキャスティングなのかも知れない。
登場人物に深みがあるというわけではないのに、それぞれが立体的に魅力的に見えたのは、演出のせいなのか、撮影がよかったのか、美術がすぐれていたこともあるのか、
どちらにしろ玉山鉄二、初音映莉子、霧島れいかなどが他の映画で見るより魅力的に映って見えたのは良かった。
映画雑誌をちらっと立ち読みした感じでは、あまり評判のよくない映画みたいだったが、
劇場のドルビーデジタルの大音響で聞く音楽と、大画面で見る水原希子で2000円分の値打ちはある映画だった、と思った。今年見た映画の中の個人的ベスト10には必ず入る(水原希子効果で)。
トラン・アン・ユン監督・脚本。村上春樹原作。
はるか10年以上前に読んだ原作のことはほぼ忘れてしまった。『ノルウェイの森』って、こんなにヌーヴェルヴァーグっぽい物語だったかな、ともう一度原作を読み直してみよう、という気にさせてくれただけでもすばらしい映画だった。
本家フランスのヌーヴェルヴァーグというより、日本の松竹ヌーヴェルヴァーグっぽい。すぐに連想したのは吉田喜重監督の『秋津温泉』だった。
ほとんどそっくりな物語といい、主演の松山ケンイチと菊池凛子の姿が、長門裕之と岡田茉莉子の姿にだぶって見えてくるような感覚があった。
しかし、そんなことはどうでもよくなるくらいにこの映画がすばらしかったのは、緑を演じる水原希子の「何てかわいい女なんだ!」という魅力にノックアウト状態になったからで、ただひたすらに水原希子の出てくるのを待ち望みながら、スクリーンを見ていたので、個人的にはこの映画の主演は水原希子となった。
なぜそんなに魅力的に映ったのか、と思ったら、1960年前後の増村保造、小津安二郎、成瀬巳喜男、市川崑などの映画に出てくる、主演ではなく名前も記憶にないような脇役女優のルックスと雰囲気を持っており、
大量生産の時期だったために脚本の練れてなさや、リハーサル不足からくるせりふのぎこちない感じや、滑舌があまり良くない点などが、キュートな魅力に反転する、という映画のマジックが水原希子にも起こっていたのが主な要因だろう。
「映画の中の理想の女性像」というファンタジーにバッチリとはまったキャラクターもすばらしい。
それにしてもジョニー・グリーンウッドは『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に引き続いて、良い仕事をした。音楽の入るタイミングの絶妙さだけでも見ていて楽しかった。使われていたCANの音楽もすばらしくて、
画面と音との組み合わせが、ロマン・ポランスキーの『テス』や、ゴダールの『軽蔑』や『気狂いピエロ』をフラッシュバックさせる瞬間があった。
村上春樹原作の映画を見るのは、山川直人監督の『パン屋襲撃』、『100%の女の子』、大森一樹監督の『風の歌を聴け』に続いて4本目だったが(『トニー滝谷』は見ていない)、この『ノルウェイの森』がいまのところの最高傑作であることは間違いないだろう。(※村上春樹にあまり興味のない者の感想です。参考にはなりません。)
公式サイト(日本)
映画全体の印象としては、中途半端なベルナルド・ベルトリッチという感じがしないでもなかった。特に初期の『革命前夜』には似ていたような気がする。
時代背景が同じということもあり、『ラストタンゴ・イン・パリ』も連想した。あの映画でのマーロン・ブランドが街を歩きながら一瞬顔を引きつらせるようにしかめるオープニングのシーンと松山ケンイチのキャラクターが重なって見える瞬間もあった。
最初に出てきたキズキ役の高良健吾を見ながら、ワタナベ役は高良健吾でもよかったんじゃないか、とも思ったが、最終的には松山ケンイチの熱演ぶりに感銘を受けた。
直子役の菊池凛子は、堀北真希あたりがふさわしいんじゃないかという気がしたが、国際市場を当初から意識した映画なので、外国人に見てもらうには無難なキャスティングなのかも知れない。
登場人物に深みがあるというわけではないのに、それぞれが立体的に魅力的に見えたのは、演出のせいなのか、撮影がよかったのか、美術がすぐれていたこともあるのか、
どちらにしろ玉山鉄二、初音映莉子、霧島れいかなどが他の映画で見るより魅力的に映って見えたのは良かった。
映画雑誌をちらっと立ち読みした感じでは、あまり評判のよくない映画みたいだったが、
劇場のドルビーデジタルの大音響で聞く音楽と、大画面で見る水原希子で2000円分の値打ちはある映画だった、と思った。今年見た映画の中の個人的ベスト10には必ず入る(水原希子効果で)。
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