2010年。「インシテミル」製作委員会。
  中田秀夫監督。米澤穂信原作。
 藤原竜也と綾瀬はるかとの組み合わせに新鮮さを感じたものの、日テレとホリプロの製作だし、それほど期待はなかったが、監督は『リング』の後に『怪談』という予想以上に出来が良かった(ような気がする)作品を演出した中田秀夫なので、意外な拾い物という可能性はある、
 少なくともかなり残念な出来だった『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』よりはまともな映画らしい映画にはなっているのではないだろうか、と思って見てみた。

 原作は評判の悪くないものらしい(読んでいない)が、タイトルの意味がよくわからない。古典的な密室ミステリーというジャンルに「淫してみる」と、英語の「INCITE MILL」その他いくつかの意味が重ね合わせられているらしいが、どうでもいいことだろう。
 全体の印象としては脚本にやや難あり、といった感じだったが、元の原作がこういうものなのかもしれない。
 上映時間は100分ちょっととベストに近いので好感を抱いた。『ライアーゲーム』は2時間超えていたので、つらかったが、こちらはそういったストレスはないのですぐれている。安っぽさの漂う画面にはぴったりとつり合った上映時間で、映画らしい映画だとはいえるような気がする。

 藤原竜也の出る映画はいつも微妙な感じのものが多く、傑作だといえるのは『バトル・ロワイヤル』の第1作目くらいだったが、『カイジ 人生逆転ゲーム』にも、『カメレオン』にも、『DEATH NOTE デス・ノート』にもどこか捨てがたい味のようなものはあった。
 特に『カメレオン』は、ガラガラだった劇場空間とともに珍妙な感じが忘れがたい感触を残している。
 この映画もレイトだったせいか、300人収容の客席に20人くらいの観客数で、舞台設定も相まって演劇的な雰囲気が高まった。藤原竜也が出てくるだけで演劇的な空間になるのかもしれない。
 『バトル・ロワイヤル』の頃からあまり変化が見られない子ども顔とともに、つい見に行ってみようかな、と思わせる点でも現代の日本映画界で貴重な存在であることは間違いない。

 密室サスペンス劇かと思ったら、『SAW』みたいな最近流行の殺人ゲーム劇だったので、『13/ザメッティ』みたいな切れ味を期待したが、登場人物のキャラクターがちょっと弱かった。
 期待した綾瀬はるかは可もなし不可もなしといった感じでちょっと残念な印象が残る。
公式サイト
映画の感想文日記-insitemiru1
 時給11万2千円で1週間を、ある閉ざされた館で過ごすだけ、という条件につられて、それぞれにわけあり風な10人が集合する。
 アメリカやヨーロッパで量産されているこの種の低予算映画を見過ぎたせいか、ややうんざり、という設定ではあった。それでも、藤原竜也はがんばっていたが、綾瀬はるかに勢いのなさを感じた。若手有望女優が次々に登場する中で、綾瀬はるかに生き残りのチャンスはあるのか、自分でもこの先どうしたらいいのか不安に思っているような気配は感じられた。
映画の感想文日記-insitemiru2
 綾瀬はるかより石原さとみのほうが魅力的に映る、これがこの映画の最大のサスペンスだったかもしれない。
 片平なぎさと石井正則は画面をテレビの2時間枠ドラマっぽく安い感じにすることに貢献していたが、そこを北大路欣也と武田真治が何とか映画らしいものに持っていこうと必死の形相で対抗する。
 俳優間のスクリーン内サバイバル・ゲームとしてみると、意外に見どころの多い映画だったかもしれない。
映画の感想文日記-insitemiru3
 平山あや、大野拓朗、阿部力のキャラクター造形が弱かったので、途中退場するのが初めから明白だったのは残念だった。
 エンディングはMay'nという歌手の『シンジテミル』という曲で、ここは好みの問題だが、中田ヤスタカのcapsuleを使った『ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ』にやや劣った印象を残す。
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