2008年。「泣きたいときのクスリ」製作委員会。
  福島三郎監督。
 オロナインH軟膏55周年記念作品。JFN(ジャパンエフエムネットワーク)に加盟しているローカルのFMラジオ局で2007年に放送されたラジオドラマが評判が良かったらしく映画化されたもの。
 配役の地味さにひかれて見てみた。
 千葉県にある小湊鐵道の上房鶴舞駅という風情のある駅のたたずまいとディーゼル電車に詩情があって良かった。
 映画には不慣れな舞台演出家が映画を作るとどうなるか、の具体的な痛々しい例としてもすぐれている。

 この映画を見た人はおそらく全国でも5000人以上はいないような気がする。見た人でも5年くらいたったら見たこと自体を忘れていることだろう。記録にも記憶にも残らない映画、実際に忘れがたい名場面のようなものはどこにもない。寒々しいミニコントのような場面が続いて、見ていて肩がこるような感じもあった。
 しかし、そこにいくらくらいのお金がかけられているのか素人でも容易に計算できてしまうようなスカスカの画面には何かしら好感が持てるところがある。
 低予算のホラー映画やギャング映画を見たときに感じる涙ぐましい感じと共通している。

 ある日の夕方、電車の中で泣いている中年男を見た4人の男女とひとりの駅員それぞれの姿を描いた群像劇のほのぼのしたヒューマン・コメディ。短編ドラマをつないだオムニバス映画のような印象だった。元になったラジオドラマは知らないが、全体に出来はいまひとつな気がした。
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映画の感想文日記-nakitaitoki1
 30歳過ぎて子どもの頃からの夢だった鉄道会社に就職した竹野(袴田吉彦)だったが、生来の間抜けさのせいで職場では上司や年下の同僚にあざ笑われる日々を過ごしていた。
 駅に毎日訪れる犬と出会ったことである転機をむかえる。久しぶりに見た袴田吉彦だったが、こんなミニコント演技をしていて大丈夫なのだろうか。
映画の感想文日記-nakitaitoki3
 会社での結婚適齢年齢を過ぎても独身で会社に居つづけて居心地の悪さを感じはじめたエリカ(戸田菜穂)は感情を押し殺した生活をつづけていたが、駅にやってきた飼い犬を媒介にして駅員の竹野と出会う。みょうにリアリティのある戸田菜穂の役柄だったが、作品の中でもひとりだけリアリズム演技で押し通していた。
映画の感想文日記-nakitaitoki4
 幼いころから厳格な父親に人前で泣いてはならないと教育されてきた洋介(遠藤憲一)だったが、母親の葬儀のあと姉から聞いた亡き父の姿を知って、初めて涙をこぼす。
 泣く演技というのは大変そうだなと思った、ということは遠藤憲一の演技がいまいちだったのかも知れない。
映画の感想文日記-nakitaitoki5
 母親の再婚相手の義理の父親を「おとうさん」と呼ぶことができずに「おっさん」と言い続けている綾(佐津川愛美)は、電車の中で泣いている義理の父(中村まこと)を見かけて不審に思い後を尾行する。
 『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で強烈な印象を残した佐津川愛美はメガネをはずすと意外とかわいい。
映画の感想文日記-nakitaitoki2
 幼い妹の死の意味を受けとめることができずに駅のホームに降りた龍一(大東俊介)の前に謎の白いワンピースの少女が現れて、龍一をいろいろな場所へ連れてゆく。あまり恐ろしくはないがホラーな展開を見せる。
 『クローズZERO』では凶悪な1年生を演じていた大東俊介がさわやかな好青年役で別人のように見えた。
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