2009年。クロックワークス/カラー。
  摩砂雪&鶴巻和哉監督。庵野秀明総監督・企画・原作・脚本。
 『序』に続く第2作目だったが、おそらく最初に『序』を見ていたら、まあこんなものか、と思って見に行かなかったような気がする。
 ストーリーは青春ドラマのある種の紋切り型パターンを踏襲しているので、要はありふれた平凡な物語でもあるので、『序』を見ていなくても、話のつじつまは合うようになっている。
 しかし、『序』と比較すると、異様なまでのハイテンションで最後まで突っ走ったような印象がある。ドラマチックに盛り上げる演出も過剰なまでにサービスされている。
 『序』はDVDで、この『破』は劇場で見たためなのか、画の質感や音響効果は『破』のほうが格段に向上しているような印象があった。

 途中で水前寺清子の『三百六十五歩のマーチ』を登場人物が歌うシーン、森山良子の『今日の日はさようなら』、赤い鳥の『翼をください』が少年少女合唱団みたいな歌で流れるシーンには、「何じゃこりゃ?喫茶ロックか?」と思った。しかもクライマックス的な場面で使用されているので変な違和感と、微妙な感動がある。
 どの曲もすでに音楽の教科書に採用されている楽曲なので、単に作り手が好きな曲なのだろう。そうでなければ、もうちょっとひねった選曲にしたに違いない。

 製作スタッフの音楽の趣味は最悪に近い、ということは判明した。(ひょっとしたら3回転くらいして、実は最高に趣味が良い、という可能性もあるが、それはないような気がする。)
 ただし、エンディングの宇多田ヒカルの『Beautiful World - PLANiTb Acoustica Mix-』が流れると、すばらしいので、まあいいか、という気になる。

 『序』では、それなりの効果は発揮していたものの、単なる思わせぶりにも見えた登場人物のキャラクターや舞台設定が、この『破』では青春ドラマのパターンではあるが、徐々に明らかになり始めて、またそれまで気づかなかった新たな側面の発見もあったりする。
 この先の物語の展開は予測できないが、大いなる悲劇の予感とともに物語は幕を閉じた。観客の心を惑わすメロドラマ的な物語作りの才能は庵野監督はすぐれているような気がする。
 『ウィッチマウンテン/ 地図から消された山』のような感動はなかったが、『トランスフォーマー/リベンジ』や『ハゲタカ』よりは面白かった。
      公式サイト
映画の感想文日記-evaha1
 ときどきボソボソと独り言をつぶやくことの多い内向的な少年だった碇シンジだったが、父親との関係、クラスメイトや職場の同僚との関係にも変化の兆しがあらわれ始めた。
 この物語は愛という抽象的な言葉を現実の経験をもとに検証してゆき、自分自身の言葉としてつかみとる過程を描く、というすぐれた恋愛メロドラマの王道路線を進んでいるようにも見える。
映画の感想文日記-evaha2
 帰国子女として登場したアスカはシンジとの対立を繰り返すが、お互いの隠された優しさに気づいて和解したかに思われたとき、思いがけない悲劇が訪れる。が、『今日の日はさようなら』の合唱で不可思議な雰囲気になってしまった。
映画の感想文日記-evaha3
 かたくなに心を閉ざしていた綾波レイとシンジとの関係にも大きな変化が起こる。綾波レイは恋という言葉を知らずにシンジに恋しているように見えたが、シンジがレイを守ろうと死力を尽くすシーンがクライマックスになっている。
 登場人物のほとんどが生きようと努力せず、死なないから生きているだけ、という設定のドラマには既視感があるが、具体的に何だったのかは思い出せない。ドストエフスキーの『悪霊』もそういう登場人物ばかりだったような記憶があるが、他にもいろいろあったはず。
映画の感想文日記-evaha4
 いまひとつはっきりしないキャラクターも少なくなかったが、少しずつせりふに暗示されたりして、過去の来歴も見えてきた。興味があるのは掟シンジと父親との関係だけなので、他はどうでもいいのだが。
映画の感想文日記-evaha5
 面白かったといっても、やはり日本製アニメは苦手で関心がないことには変化はなかった。ただし、これまで見た日本製アニメの中ではこの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が一番面白かったような気がする。
 青春メロドラマの要素が強かったからだけのことかも知れない。
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 オリジナルサウンドトラック SPECIAL EDITION/サントラ
¥3,300
Amazon.co.jp