2008年。アメリカ。"YES MAN".
  ペイトン・リード監督。
 ジム・キャリー主演。
 離婚後、すべてのことに消極的でなにごとにも「ノー」と言っていたさえない銀行員が、このままではいけないと思い知るきっかけがあり、怪しげな自己啓発セミナーに参加したことで、すべてに「イエス」と答えるイエスマンへと変わったことで引き起こされるドタバタ騒ぎを描いた、ちょっとブラックなコメディ。

 ジム・キャリー主演のコメディで笑ったのは久しぶりのことのような気がする。ファレリー兄弟の『ふたりの男とひとりの女』以来かもしれない。
 『ディック&ジェーン 復讐は最高!』も、『ブルース・オールマイティ』もぜんぜん笑えなくて面白くもなかったので、ジム・キャリーはシリアス路線に転向したほうがよいのかも知れない、と思っていたら、
 ジェリー・ルイス路線のくどいギャグでもまだいける、ということがわかった。

『ハニーVSダーリン 2年目の駆け引き』でもひねくれた演出を見せていたペイトン・リード監督が、ここでもひねくれているようで、見方によってはハッピーな気分にもなれる、という複雑にひねくれた物語に仕上げていて、
 日本でも一時期流行した「ポジティブ・シンキング」という考え方にひそむ危険性とあほらしさを笑いのめす一方で、すべてにネガティブなアメリカ社会に、「もっとイエスと言ってみよう。」と呼びかけているようなところもあって、全体的には無難なコメディになっている。
 ちょっとしたひまつぶしに映画を見て、リラックスした気分になるには最適な映画だった。
     IMDb             公式サイト(日本)
映画の感想文日記-yesman1
 友人に誘われて参加したうさんくさい自己啓発セミナーで、教祖(『ワルキューレ』にも出ていた名優テレンス・スタンプが、うさんくささ全開で笑わせる)に暗示を受けたカール(ジム・キャリー)は、
 絶対に「ノー」と言わない、という強迫観念にとりつかれ、
 すべてに「イエス」と答えて、韓国語講座を受講し、飛行機の操縦訓練を受け、イスラム系の女性とお見合いし、アメリカ各地を旅行して回るようになる。

 その結果、FBIに「テロリスト」としてマークされ、北朝鮮との情報のやりとりのために韓国語を学び、旅客機による自爆テロのため飛行機の操縦を学び、アルカイダとの連絡のためにイスラム系の女性とコンタクトをとり、爆破の下見のためにアメリカ各地を回っている危険人物とみなされ、ついに逮捕される。
映画の感想文日記-yesman2
 ゾーイ・デシャネル(以前はズーイー・デシャネルだった表記が、いつの間にかゾーイに変わっている。もともとサリンジャーの『フラニーとゾーイー』から採用して両親がつけた名前なので、統一することにしたのかもしれない。)
 が、カールが出会う自由奔放なようで恋には臆病な女性アリスをふだんのキャラクターそのまんまに演じる。
 ヒッピー世代の両親に自由な教育を受けたゾーイ・デシャネルのキュートな魅力が全面に押し出されてすばらしい。歌手としても一流のゾーイ・デシャネルの変な歌がたくさん聴けるのも見どころになっている。
 カールとアリスとの恋のゆくえがクライマックスのエピソードになっていた。
 ジム・キャリーは今年47歳で、ゾーイ・デシャネルは今年29歳なので、親子の役を演じても不自然ではない年齢の開きがあるが、ジム・キャリーが若々しいので、ちゃんと恋人同士には見える。
映画の感想文日記-yesman3
 自殺しようとする男(ルイス・ガスマン)をギターの弾き語りで救助する場面(何の曲か知らないが、有名な曲らしく、けっこうよさそうなフォーク・ロック調の曲だった)など、面白い場面はいろいろあって、退屈することなく、最後まで楽しく見ることができた。
映画の感想文日記-yesman4
 ハリウッドの有名なカメラマンの娘であるゾーイ・デシャネルがカメラ教室の講師の役を演じる。
 シリアス路線のジム・キャリーも最近はあまり好調でもなかったので、原点に帰って出直してみよう、というねらいがあったのかもしれない。アメリカ本国でヒットしたのかどうかはよく知らないが、日本ではうけそうな物語だった。
映画の感想文日記-yesman5
 『恋するレシピ ~理想のオトコの作り方』、『ウェディング・クラッシャーズ』などDVDストレートのラブコメでの活躍が目立っていたブラッドレイ・クーパー、ダニー・マスターソンなど知名度はいまいちながら、どこかで見かけた顔が出演して、華やかなエピソードが連続する。
 ジム・キャリー主演でなかったら劇場公開はされていなかっただろう、と思われる比較的地味なコメディだったが、こういうコメディがもっとシネコンで見られるようになってもらうためにもヒットしてほしい。
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