2008年。アメリカ。"High School Musical 3: Senior Year".
  ケニー・オルテガ監督。
 ディズニー・チャンネル版の第1作目と第2作目は見ていたものの、それほど強く印象に残るようなものでもなく、集団での歌と踊りのパフォーマンスの見事さと、健全すぎてリアリティのかけらもない世界に面白さを感じた程度だったが、
 この映画版は相当にグレード・アップしているらしい、という前評判は耳にしていて、多少の期待はあったが、
 ここまで良い映画になっているとは思わなかった、おととしの『ヘアスプレー』と同じくらいに素晴らしかった。

 今回は楽曲の質も向上しているような印象があって、1度聞いただけでおぼえてしまうようなインパクトのある曲が何曲もあった。
 個人的なクライマックスは、ケルシーとライアンとがピアノ弾き語りから歌いはじめる"Just Wanna Be With You"(ジャスト・ワナ・ビ・ウィズ・ユー)というミドル・テンポのR&B調の曲が、やがて全員のコーラスとダンスにつながっていく場面で、このあたりから映画の世界に完全にはまってしまった。
 今回はR&B色が強い印象があって、1960年代のモータウン・サウンドっぽいキャッチーなダンス曲にひきつけられた。

 歌とダンスの基礎がしっかりしていることで、ヒール役ながら、作品の質を安定させる役割を果たしている影の主役的なシャーペイと、振付師という設定となよなよした仕草からそっち系の人ではないのか、という疑いもあるライアンとのエヴァンス姉弟の華やかな妄想シーンのミュージカルのパートにも力が入っていて素晴らしかった。
 ちょっと、『ブロードウェイ♪ブロードウェイ/ コーラスラインにかける夢』を連想させられて、ジーン・ケリーなどのミュージカル映画へのオマージュの場面にもなっていて、二人のプロフェッショナル根性(高校生の役ながらもういい年齢になっている)には感動した。

 シャーペイの助手となる謎の転校生ティアラが、実はシャーペイを上回る悪女で、『イヴの総て』でのアン・バクスターとマリリン・モンローとを足したようなシーンを再現して見せて、後半では『紳士は金髪がお好き』でのマリリン・モンローのダンス場面をシャーペイと競い合って演じるところなど、
 黄金時代のハリウッドのミュージカルをさりげなく取り入れているところも画面に豪華さを加える効果があって、良かった。
 高校卒業、そして大学進学という完結編となるらしき内容でスタッフの意気込みも強く感じ取れた。今年最高のミュージカル映画になることは間違いない、と思われる。
   IMDb          公式サイト(日本)
映画の感想文日記-hsm31
 ほとんどザック・エフロン目当てらしき、意外と年齢層が幅広い(小学生から老婆まで)女性ばかりだったが、さすがに動きの切れ味の鋭さは見事だった。
 トロイとガブリエラとのデュエット曲も良い曲が多かったような印象があった。
 IMDBで異常に点数が低いのは、こういう世界観に拒否反応を示す気持ちもわかるので、何となく納得した。
映画の感想文日記-hsm33
 おなじみのメンバーたちの、それぞれの進路についての悩みが今回のテーマになっている。歌って踊っていたのでは、悩みの深刻さなどまったく感じられないが、そこが素晴らしい点でもあった。
 主要メンバーにバランス良く見せ場が配分されていた。
映画の感想文日記-hsm32
 ヒール役のわりには顔が記憶に残らないシャーペイ役のアシュレイ・ティスデイルだったが、意外と今後の最有望女優候補かもしれない。プロフィールを見ると、プロデューサー業のほうに興味が向かっているようだが。
 演じているだけなのか、本当にそっち系なのかわからないライアン役のルーカス・グラビールは、ショーン・ペン主演のアカデミー賞ノミネート作品、『ミルク』に出演しているらしいので、注目していよう、と思った。
映画の感想文日記-hsm35
 卒業してしまったからには、『ハイスクール・ミュージカル』はこれでおしまいだろうが、全世界で大ヒットしている状況からすると、ひょっとしたら何かこのメンバーでの続編製作もあるのか、という気もしないでもない。たぶん、ないとは思う。
 次は、『ハンナ・モンタナ/ ザ・ムービー』が果たして公開されるのかどうかだが、知名度の低さから、おそらくDVDストレートになるのだろう。
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