2008年。アメリカ。"DEATH RACE".
  ポール・W・S・アンダーソン監督。
 ロジャー・コーマン製作の怪作映画、『デス・レース2000年』 のリメイク作品。ロジャー・コーマン自身も製作総指揮という立場で参加している。(おそらく名前を貸しただけで、作品自体にはノータッチなのだろう。)

 アメリカ本国ではこけた上に批評家からもジャンク扱いをされるなど、さんざんな目にあっていた映画だったが、このポール・W・S・アンダーソン監督という人物は、悪名高き『バイオハザード』シリーズの演出家でもあり、まともな映画を作る能力がないことなど最初からわかりきったことなので、何をいまさら批判したりするのか、事情がわからない。
 商品の質も購買層も、違うものなのに、見当はずれな批評をしているような印象があった。
 これは、とても頭の悪い中学生などが騒ぎながら見るために作られた商品なので、大人の評論家が口をはさむ類の映画とは別ジャンルの商品として取り扱うべきのような気がする。(映画と呼ばずに別の名前を与えれば良いような気がする。映画だと思えば腹が立つ気持ちも理解できる。)

 『少林少女』に何かを期待して見に行った人などごく少数だったように、この商品も、ただのひまつぶしか、時間調整のための、どうでもいい物質だとわかりきった上で見に行く、という態度以外にはあり得ないだろう。
 (自分の場合は、『その日のまえに』と『七夜待』を見る合い間の時間調整として見た。)

 しかし、それほどつまらなくはなかった。退屈はしたが、『デス・レース2000』へのレスペクトの精神はかすかに感じられて、『デス・レース2000』の100分の1程度の面白さはあったように思った。
 『デス・レース2000』から、文明批評と、アメリカン・ニュー・シネマの名残りみたいなものを除去して、哲学的な暴力批判論みたいなこじゃれた脚本を台無しにして、お子さま向けに書き換えた結果がこの商品だろう。
 
 中学生くらいのお子なら大喜びする商品になっているのかも知れない。想えば、『バイオハザード』シリーズも中学生くらいを中心に人気のある商品なのだった。
 カメラがどうとか、俳優の演技がどうとか、カット割りや編集や構図がどうとか言うものではなく、ただひたすら音響効果を楽しむ商品としては、いい線いっているような気がしないでもなかった。
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映画の感想文日記-deathrace1
 ジェイソン・ステイサムの出演する作品に当たりなし、というジンクスは今回も死守された。見事なまでにどうでもいい商品になっていて、すがすがしい。
 これと比較すると『アドレナリン』は、何かメッセージ性を持った哲学映画のようにも見えてくるから不思議だった。
 (悪役で出演した『セルラー』は例外的に素晴らしい映画だったが。評判の良いらしい『バンク・ジョブ』でジンクスは破られるのかどうかに、少しの期待はある。)
映画の感想文日記-deathrace2
 ジェイソン・ボーンシリーズのジョーン・アレンが鬼のような刑務所所長役で登場する。
 悪役にしては、ちょっと上品さがあって、それほど憎らしくも見えなかった。
映画の感想文日記-deathrace3
 オリジナル版より良かった点は、ナビゲーターの女性が若くセクシーな美女(ナタリー・マルチネス)だったことで、胸を強調した衣装が良かった。
 が、ストーリーはオリジナルから大きく改変されてしまっており、見る影もない無残なできばえで、ちょっとひどすぎた。
映画の感想文日記-deathrace4
 タイリース・ギブソン、イアン・マクシェーンなど脇のキャラクターにも工夫がなかったが、こんなものだと割り切って見れば、そこそこに楽しい映画にはなっている。
 何も考えたくないときに見る映画としては最適な作品かもしれない。
 かえってストレスを感じてしまうこともある可能性も高いが。