2008年。アメリカ/中国/日本/台湾/韓国。"RED CLIFF".
  ジョン・ウー監督。
 世界で1番カッコいい俳優は、トニー・レオンだと信じて疑わない者にとっては、この映画を見逃すわけにはいかない。
 (しかし、先日スマステーションというテレビに出ていたトニー・レオンを偶然見たときは、地方テレビ局のアナウンサーか何かだとかん違いしたほどに、ふだんは俳優オーラのない地味な人だと知り、人格者でもあるのだな、と思い、畏敬の念は増した。)

 世の中の人々は、『三国志』を読んだ人と読んでいない人とに分けられるが、読んでいない者としては、何となく敷居が高そうな物語で、監督が苦手なジョン・ウーだということもあり、
 (ジョン・ウー監督の映画で面白かったのは香港時代のタイトルを忘れたバイオレンス・アクション映画だけで、ジョン・ウーよりは、圧倒的に『PTU』や『エレクションー黒社会』や、『ブレイキング・ニュース』 のジョニー・トー監督が素晴らしいと思っている。ジョニー・トー監督の新作はあまり見る気がしないが。)
 『三国志』への入り口としてはちょうどいいかも知れない、と思って気楽に見ることにした。

 『三国志』がどういうものか、全くと言っていいほどに知らないので、何となくNHKの大河ドラマみたいだな、と思いながら見ていたが、これは逆で、NHKの大河ドラマのコンセプトは『三国志』に起源を持つものらしい。
 音楽が岩代太郎だというのも、大河ドラマっぽさを強調させていた。
 登場人物が多くて、似たような衣装なので、最初のうちはなかなか区別がつかないのも大河ドラマっぽいが、
 金のかけ方が大きく違うことが画面の豊かさから次第に伝わってきて、合戦シーンの迫力に引き込まれて、久しぶりにわくわくするような娯楽活劇の面白さを経験できたように思った。
 これなら2時間半でも物足りないほどで、できれば4時間くらい続きを見ていたいような気分になった。
 ジョン・ウー監督の演出の力というより、原作の持つ力かも知れない。
 しかし、この映画は物語の導入部に過ぎないもので、それほどのことが語られているわけでもなく、これからいよいよ波乱に満ちた物語が始まる、というところで終わっている。

 とりあえず、第2作の公開までに、翻訳版は読むのがしんどそうなので、評判の良いらしい北方謙三版の『三国志』を読んでしまうことを目標にしよう、と思ったことだった。
    IMDb           公式サイト(日本)
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 このパートⅠで一番目立っていたのは、曹操を演じたチャン・フォンイーだったように見えた。独裁者の孤独感がふとしたときに、微妙な表情にあらわれているようにも見え、狡猾な面と、残虐な面との使い分けが素晴らしかった。
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 周瑜(しゅうゆ、漢字がむずかしい)を演じるトニー・レオンだったが、期待しすぎたせいか、前評判ほどには素晴らしくなかったように見えた。続編での活躍に期待したい。
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 ヴィッキー・チャオが出ていることを知らなかったので、『夜の上海』 以来となるヴィッキー・チャオのはつらつとした姿を見ることができて満足した。
 第2作以降は波乱の人生を予感させる。
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 孔明を演じる金城武は他の出演者と比較すると年齢が若いこともあり、ちょっと浮いているようにも見えたが、周囲がそういう視線で見るので、知略に長けた若き軍師という役柄に次第に見えてきた。
 トニー・レオンとは、香港ノワールの大傑作、『傷だらけの男たち』 以来の共演となった。
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 おそらく『硫黄島からの手紙』での演技で抜擢されたと思われる中村獅童が甘興という武人を演じる。かなり張り切っていたが、特に中村獅童でなくても良かったような、それほど見せ場のない役だった。
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 黒澤明の大ファンだというジョン・ウー監督の黒澤明への大オマージュ映画にもなっている。パートⅡを早く見てみたい。(というほど感激したわけでもなかった。気長に待つことにしよう、と思った。)
 日本語吹き替え版で見た方がわかりやすかったかも知れない。