2008年。日本/フランス/韓国/ドイツ。
  ミシェル・ゴンドリー&レオス・カラックス&ボン・ジュノ監督。
 3人の映画監督が、東京を舞台に自由な発想で作った40分ほどの中篇劇映画を持ち寄ったオムニバス形式の映画。
 3人の監督の選択にうさんくさいものがあって、資金集めの課程で、出資者や企画者との間で何か怪しい取引がおこなわれていたのではないか、と思った。

 現代の東京を舞台に映画を作る、ということなら、もっと面白い映画監督の選択肢は数多くあったはずなのに、
 ボン・ジュノはよし、としても他の2人は、果たして適任なのかどうか、大きな疑問があった。
 結果的にはその疑問がそのまま反映したような映画になってしまい、
 たとえばキム・ギドクやパク・チャヌクならどんな斬新な視点の映画を作っただろうか、フィリップ・ガレルが東京を舞台にしても面白そうだ、
 とか企画の段階で誰も、「これは絶対に失敗します!」と言う人があらわれなかったのが不思議にさえ思われた。

 俳優は、現在の日本の若手俳優総出演みたいに豪華なメンバーが集められているので、見どころはいくつかあることはあった。
     IMDb          公式サイト(日本)
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 ①「シェイキング東京」(ボン・ジュノ監督)
 10年間引きこもり生活を続けている青年(もはや中年になっている香川照之)は、定期的に父親名義で送金されてくるのでお金には不自由していなかったが、
 10年間、誰とも口をきかず、視線も合わせないことを自分に課していた。
 しかし、毎週土曜日のピザの宅配の女性(蒼井優)と、地震の際に眼を合わせてしまう。
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 きちんと整理整頓された青年(中年)の部屋には書物や雑誌、ピザの空き箱などが捨てずに保管されている。
 ピザの女性は、部屋を見て、「ここは完璧。」と言い残して去ってゆく。
 やがてピザの女性もバイトをやめて、引きこもりになったことを店長(竹中直人)から聞いた青年(中年)は、
「引きこもりが引きこもりに出会うたったひとつの方法」、外出することを決意する。
 しかし、青年が見た光景は、すべての人が引きこもりになった都市、東京だった。
 青年はピザの女性を求めて街をさまよい、ついに女性の眼を発見する。
 このボン・ジュノ監督作品がもっとも面白く、生き生きとした感覚を持っている人物が作った映画だということが感じとれたので、この映画を見ることができただけでも満足するべきなのだろう。
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 ②「インテリア・デザイン」(ミシェル・ゴンドリー監督)
 実験的な前衛映画の新人映画監督として、東京へ出てきたアキラ(加瀬亮)と、その恋人のヒロコ(藤谷文子)とは、高校時代の友人であるアケミ(伊藤歩)の部屋へしばらく住まわせてもらう。
 以下省略。どうでもいい映画だったので。
 加瀬亮が昭和天皇のふざけた物まねをしてみせる場面はアナーキーだったが。
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 ヒロコは自分の居場所が見つけられずに焦燥感に駆られているうちにピノキオみたいに体が木に変化してくる。
 藤谷文子の脚が徐々に木に変化してゆく特殊撮影はグロテスクさとユーモアとが同時にあって面白かった。
 ヒロコは椅子に変化することで自分の居場所を見つける。
 他に大森南朋、妻夫木聡、でんでんなどが出演。
 ミシェル・ゴンドリー監督って、ひょっとして映画監督としての才能ゼロ?と思わさせられたりもした。『僕らのミライへ逆回転』 はそこそこに面白くはあったんだったが。
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 ③「メルド」(レオス・カラックス監督)
 『ポーラX』以来、約10年ぶりの映画監督作品となる。フランスでも日本と事情は似ているらしく、売れなくなった映画監督は大学の映画学科の講師などの職を得たりもするらしい。
 マンホールの怪人(ドニ・ラヴァン)と呼ばれる謎の男についての物語。
 日本の社会現象などについてはくわしく調査しているらしく、何か現代日本批判的なものをやろうとしたような形跡もある。絞首刑のシーンは大島渚監督の『絞死刑』を連想させられた。
 ムッソリーニは戦後虐殺された死体をさらしものにされたが、日本の昭和天皇ヒロヒトも犯罪者として処刑され電柱に腐乱死体になるまでつるされていたら、日本は今より良い国になっていたのだろうか、と不謹慎なことを連想したりもした。
 レオス・カラックスはやはりもう終わっている、と思った。『ポンヌフの恋人』だけは好きな映画だが。
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 これなら日本の若手監督にこの映画くらいの予算とスタッフを与えれば、もっと素晴らしい映画が作られたはずだろう、と思った。
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