1985年。フィンランド。"CALAMARI UNION".
アキ・カウリスマキ監督・製作・脚本。
 マッティ・ペッロンパー、その他出演。
 はっきりした人数はわからないが、約12名程度のフランクという同じ名前の男たちと、ひとりだけ英語を話すペッカという男が、会議を開き、自分たちが生活しているカッリオ地区は住みにくく、人々から嫌われているので、比較的裕福な人々の暮らす向こう岸のエイラ地区へ全員で移住しようと決意する。
 しかし、エイラ地区へたどり着く前に男たちは、次々と殺されたり、事故で死んでゆく。
 カラマリ・ユニオンとは男たちが所属する組合で、意味は「イカ墨同盟」という。

 『街のあかり』 の公開に前後してカウリスマキ監督の過去の作品がいくつか上映されたものの中の1本で、意外にもコメディだった。しかも、ギャグはほとんどすべり倒していて、笑うに笑えないコメディになっている。
 会場の一部では、ギャグにいちいち律儀にうけて笑っている人もいたので、人によっては笑いのつぼに当たっているのかも知れない。

 登場人物の名前がフランクだらけなので、お互いをフランクと呼び合い、特にきちんとした物語があるわけではなく、最後には死んだはずのメンバーも参加してのロックンロールの歌と演奏が派手に行われる。
 何となくジム・ジャームッシュ監督のモノクロのコメディ映画、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』や『ダウン・バイ・ロウ』などを連想させるようなところもあった。
 笑えないコメディ映画なので、あんまり面白くはなかったが、カウリスマキ監督独特の色のようなものは感じ取れた。
      IMDb
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 知っている俳優は故マッティ・ペッロンパーくらいしか見当たらなかったが、他にもカウリスマキ作品の常連俳優が出ていたのかも知れない。
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 英語を話すペッカ(マルック・トイッカ)は『タクシー・ドライヴァー』でロバート・デ・ニーロが演じたトラヴィスのコスプレをしていて、しつこいくらいに、「ユー・トーク・トゥ・ミー?」というギャグを繰り返す。
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 デビュー作がドストエフスキー原作の『罪と罰』の映画化だったため、そういうジャンルの映画監督だと思われたくないために、わざと意味のないコメディを製作することにしたらしい。
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 全員がステージに立ち、けっこうハードなパンクっぽいロックンロールを演奏する。
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 撮影する元郵便配達員のカウリスマキ監督。少人数のスタッフによる低予算の製作だったらしい。
 オープニングで、「ボードレール、ミショー、プレヴェールの今なおこの大地の上を浮遊している亡霊たちに捧げる」という字幕が現れる。結局、ちょっと気取ったところのある詩的なコメディ映画になっていたような気がする。
 こういうのが好きな人には、愛着のある作品になるのだろう、と思った。IMDbでの評価も意外と高く、世界中にファンがいるのかも知れない。
紀伊國屋書店
カラマリ・ユニオン
ペーター・フォン・バーグ, 森下 圭子
アキ・カウリスマキ