2008年 アメリカ 〔ドラマ〕 109分

○監督 : ダーレン・アロノフスキー

○出演 : ミッキー・ローク、マリサ・トメイ、エヴァン・レイチェル・ウッド、マーク・マーゴリス、トッド・バリー、ワス・スティーヴンス ほか



≪あらすじ≫

“ザ・ラム”のニックネームで知られ、かつては人気を極めたものの

今では落ち目でドサ廻りの興業に出場しているレスラー、ランディは、

ある日、ステロイドの副作用のために心臓発作を起こし、

医者から引退を勧告されてしまう。

馴染みのストリッパー・キャシディに打ち明けると、

家族に連絡するように勧められる。

長らく会っていない娘・ステファニーに会いにいくが、

案の定、冷たくあしらわれてしまって…。

(quotation from goo映画)



≪レビュー≫★★★☆☆(※少しネタバレあります)

かつての栄光虚しく、落ち目となりながらも

レスラーとしてリングに立ち続けるランディ(M・ローク)の

生き様を描いたもの。


以前の輝きは身を潜め、中年の哀愁漂うランディ。

その姿を、自身も栄光と挫折を味わったミッキー・ロークと

重ねて観ずにはいられません。

顔と身体に滲み出る、悲しいけれど確実な衰え、

自身を取り巻く状況の変化、

そのさ中にあって、変わらず守り続けるのは
男として、レスラーとしてのプライド。

どんなに傷だらけになろうとも、心臓に限界が来ようとも、

自分の立つべき場所に立ち続けるランディに

胸が熱くなりました。


そんな彼と、周囲の人との関わりの描写も秀逸。

栄光から数十年経った今でも

観客や仲間から拍手喝采を受け、

ちょっかいを出してくる子どもと遊んでやり、

恋だってする。

それらのエピソードからは、

ランディの人となりが自然と伝わってきます。


また、恋の相手であるストリッパーのキャシディを演じるマリサ・トメイが、

熟した女性の色香と背負う影を見事に体現し、

艶やかな華を添えています。

プレゼント選びの際のナチュラルな出で立ちもキュートでした。

長年疎遠だった娘、ステファニー役の

エヴァン・レイチェル・ウッドの横顔にも、はっとさせられます。


レスラーものだけあって、多くの痛々しい傷と血が映し出されますが、

それはランディの心の傷のようでもありました。

「俺にとって痛いのは、外の現実の方だ。

あそこ〔リング〕が俺の居場所なんだ」

というセリフが全てを表しているように、

孤独を抱え、不器用で無骨ながら

誇りを胸に生きるランディの男臭い生き様は、

観る者を惹き付けてやみません。

ミッキー・ロークの新たなはまり役として見応えがあり、

★3つです(3.8)。

男性やランディに近い年齢の方だと、更に胸に迫るのかもしれません。


ちなみに、当初ランディ役としてニコラス・ケイジの名が

挙がっていたらしいですが、

ミッキー・ロークで譲らなかったダーレン・アロノフスキー監督に拍手。

彼だからこそ、このリアリティと説得力が出たのだと思います。



<公式サイト>

http://www.wrestler.jp/