2008年 アメリカ=ドイツ 〔ラブストーリー〕 124分

○監督 : スティーヴン・ダルドリー

○原作 : ベルンハルト・シュリンク

○出演 : ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、ブルーノ・ガンツ、デヴィット・クロス ほか



≪あらすじ≫

1958年、ドイツ。

15歳のマイケルは、気分の悪くなったところを

21歳年上のハンナに助けられたことから、

2人はベッドを共にするようになる。

やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、

マイケルの想いは深まっていくのだったが、

ある日彼女は突然マイケルの前から姿を消してしまう。

数年後、法学専攻の大学生になったマイケルは、

ハンナと法廷で再会する。

彼女は戦時中の罪に問われ、

ある秘密を隠し通したために窮地に追いやられ、

無期懲役の判決を受けるのだった。

時は流れ、結婚と離婚も経験したマイケルは、

ハンナの最後の“朗読者”になろうと決心し、

ハンナの服役する刑務所に

物語の朗読を吹きこんだテープを送り続けるのだったが…。
(quotation from goo映画)



≪レビュー≫★★★☆☆(※少しネタバレあります)

ひと夏の恋から、永遠の愛へ

―親子ほど年の離れたハンナ(K・ウィンスレット)と

マイケル(D・クロス/R・ファインズ)が織り成す

せつないラブストーリー。

ドイツのベストセラー小説『朗読者』を映画化したものです。


2人の密やかな楽しみだった、本の朗読。

特にハンナにとっては、より重要な意味を持つものでした。

本を読み、愛し合って、また本を読み…

その姿は穏やかな幸せに満ちていて、

観ている私までも、マイケルの声を通じて

物語の世界へ誘われているような感覚に陥りました。


それに大きく寄与しているのが、

少年時代のマイケル役、デヴィット・クロスの演技。

瑞々しく繊細な若者を見事に体現し、

今後の活躍が期待されます。


一方、21歳年上のハンナを演じるケイト・ウィンスレットも

ヌードシーンを含め、約30年の後半生を好演。

女性としての輝かしい最盛期から、

次第に年を重ね、哀しみと憂いに縁取られてゆく初老期までを

静かに美しく演じ切っていました。


後半、刑務所のハンナへ朗読テープを送り続ける

マイケルの声、声、声…。

その重なり合う響きと、ハンナが送る手紙のたどたどしさが

なんともせつなく胸を締め付けます。

朗読、カセットテープ、手紙という

現代では触れることが少なくなってしまったものたちが

大きな存在感で心に迫ってきました。


ハンナが人生を賭けて守ろうとした秘密、

その気持ちを重んじつつも、

彼女が犯した罪を受け入れられず、葛藤するマイケル。

2人の複雑な気持ちがせめぎ合う食堂のシーンが、

決定的な心の破綻を示すかのように

淡いブルーに包まれていたのが印象的です。


暗いブルーグレーに始まり、

ハンナとの出会いで色づき、輝き出した世界が

突然の別れで色あせ、再会後も重いトーンに終始する映像は

まさにマイケルの心の表れのようでした。

彼も彼で苦しんだと思いますが、

結局はハンナも時代に翻弄された被害者の1人だったのでしょう。

最後のシーンは、彼がようやく

全てを受け入れられた証として描かれ、爽やかさを感じさせます。


特殊な時代背景のもと、愛し合った男女の

確かな軌跡を紡ぎ上げたスティーヴン・ダルドリー監督はさすがで

見応えはあります。

しかし、ハンナが自身の秘密を、そこまでして死守する必要があったのか、

それが自分にとってはネックでした。

全体の雰囲気は好きですし、

戦争やそれが残した傷跡等、考えさせられるところもあったものの、

共感という意味で、

心の琴線に触れるまであと一歩足りなかったかな?

★3つです(3.8)。



<公式サイト>

http://www.aiyomu.com/