2008年 アメリカ 〔ヒューマンドラマ〕 128分

○監督 : ガス・ヴァン・サント

○出演 : ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・フランコ、ディエゴ・ルナ ほか



≪あらすじ≫

1972年のニューヨーク。

金融や保険業界で働いていたミルクは、

20歳年下のスコットと出会い、恋に落ちる。

2人は新天地を求めてサンフランシスコに移り住み、

小さなカメラ店を開店。

そこはたちまち同性愛者やヒッピーたちのよりどころとなり、

ミルクは彼らを快く思わない保守派に対抗した

新しい商工会を結成する事になる。

社交的でユーモアにあふれたミルクは、

近隣住民の抱える問題に、

政治的により関わりを深めていく。

(quotation from goo映画)



≪レビュー≫★★★☆☆(※ネタバレあります)

同性愛者として初めてアメリカの公職に就いた

ハーヴェイ・ミルクの後半生を、

彼が「万が一のときのため」に録音したテープから

回想する形で描いたもの。


差別と偏見がはびこる1970年代に

同性愛者の権利を求める活動を起こし、

やがて大きなムーヴメントへと導いたミルクを

あたたかい眼差しで捉えています。


選挙での度重なる敗北、恋人との別れ等の苦しみに耐え、

信念に基づいて自らの、そして仲間や

同性愛者以外のマイノリティのためにも

闘い続けたミルクの強さと、

彼が残した功績に敬意を表さずにいられません。

演じるショーン・ペンの

表情、仕草、話し方等も熟成されていて、

ミルクを知らない私にとっては

彼本人であるかのような錯覚に陥るほどでした。


また、恋人スコット(J・フランコ)やジャック(D・ルナ)、

彼とともに行動する仲間たちも個性豊かで

魅力的な面々でしたが、

やはり強烈な印象を残したのはダン・ホワイト(J・ブローリン)。

ミルクも察していたように、おそらく彼もゲイで、

でもそれを秘めたまま家族をもち市政議員になり…。

カミングアウトしたくてもできない状況にあった彼にとって、

堂々とそれを公表したミルクは羨ましいほどの輝きに満ち、

だからこそ憎しみも湧いてしまったのかもしれません。


「50歳までは生きられないだろう」という

ミルクの予言とも諦めともつかない言葉が

実際のものとなってしまったことは悲しいですが、

彼は人々の心に、そして歴史に

決定的に大きなものを残したと思います。

周囲の人々の後日談も、

彼がまいた種の結実を思わせ、感慨深いものがありました。


ビジュアル面では、冒頭や劇中のところどころに

当時の映像や新聞記事を効果的に用いて、

実話という重みをより感じさせています。


ミルクの笑顔の裏に隠された悲哀が

胸を打つ作品で、

ゲイの描写もさほど違和感なく観られました。

ただ、想像を上回るところまではいかず、

★3つです。



<公式サイト>
http://milk-movie.jp/enter.html