『メメント』 memento アメリカ/132min
監:クリストファー・ノーラン 出:ガイ・ピアース

シネマな時間の考察を。-memento 10分しか記憶が続かない男レナード。愛する妻のレイプ殺人事件を目撃してから記憶障害に陥った。10分ごとの短い世界を生き抜く為、妻を奪った犯人への復讐の為、彼は身に起こることをポラロイドに収めメモし、重量なキーワードはなくさないよう身体にタトゥーを入れる。「記憶」は単なる思いこみであって「記録」ではない。つまり何の役にも立たないのだ。レナードは習慣から身につけた処理能力であらゆる情報を整理し犯人を追う。失われたものをもう一度この手に取り戻すために。

「バックワーズ」というらしい。始めに物語の結末を見せ、時間が遡り、そこから順行して結末へ向かうストーリー構築法のことだ。この映画はそのまた更に上を行く別格品。物語の結末の、更にそれを逆回転でみせるところから始まるのだ。

始まりは既に終わっていて、時間の感覚を麻痺させる

およそ10分毎の時制の逆行、順行している(と思われる)ストーリーが突然中断されたかと思うとまた巻戻され、さっき見たはずの場面がまた繰り返される。バラバラになってしまったフィルムの編集作業をしているような感覚。以下の文を正しい順序に並び替えよという英語のテストに似ている。そんなパズル的感覚がこれまでにない斬新さを突きつける。31才若き新鋭監督クリストファー・ノーラン。映画界に新しいセオリーを運んだ映画監督の誕生か。既成に囚われない新感覚ムービーが出てくると、娯楽系映画の寿命も延びたかと期待したくなるものだ。


2001.12.29 梅田ガーデンシネマ1にて鑑賞