◆『青い鳥』本郷奏多 インタビュー | 映画情報なら「シネトレ」…最新映画&DVD情報 + 試写会・映画グッズプレゼント

◆『青い鳥』本郷奏多 インタビュー

青い鳥


重松清の同名小説を映画化した『青い鳥』。その舞台となる中学校は大きく揺れている。いじめを苦に、1人の生徒が学校内で起こした自殺未遂事件。教師も生徒も“反省文による贖罪”にすがるなか、赴任してきた吃音の教師がとった行動はやがて、1人の青年を背負うべき責任と向かい合わせることになる。その青年――<園部真一>役を演じるのが本郷奏多だ。



役は作りこみすぎず、カメラは意識しないように


『HINOKIO』『NANA2』『シルク』……様々な役を経験してきたが、“いじめ”というテーマを扱った脚本を読んだ印象は「難しくて、演じるのも大変そう」というものだったという。「でも、難しい役ほど自分を成長させるチャンスだと思うので、ぜひ、やらせていただきたいと思いました」


演じる<園部真一>役は、自殺を図った生徒が書いた遺書の中に、“犯人”として自分の名前が挙げられていたのではないか?と悩む難しい役どころ。しかし撮影には、あくまでも“自然体”で臨んだという。
「気をつけたのは、役を作りこみすぎないことです。普段から気をつけていますが、現場の雰囲気や共演者さんとの兼ね合いで演技はどんどん変わっていきますし、作りこみすぎると演技に柔軟性もなくなります。準備はとにかく台本をしっかり読み込むことでした」


劇中でみせる寂しげな表情には、演技を超越したリアリティさえ感じられる。
「そこにカメラがある、ということを意識しないようにして演じていました。顔の角度や表情も、もっときれいに見える角度というのがあったのかも知れません。でもそれは僕の考えることではないし、とにかく余計なことを考えず、自然に素直に演じることだけを意識していました」



阿部寛さんとの“距離感”が重要だった


その<園部真一>には、劇中ひとつの出会いが訪れる。阿部寛が演じる吃音の教師、村内先生との出会いだ。村内先生は、生徒たちに対して多くを語らない。しかし常に本気の言葉で語る。生徒の話に真剣に耳を傾ける。“狎れあい”とは違う、人と人が真剣に向き合うときの厳然たる空気がそこには存在する。


「阿部さんは現場で、意識的に生徒役の僕らと距離をおくようにしていたんだと思います。そして、それがこの作品ではとても重要なことだったと思います。もし僕らが阿部さんとお話しする機会が多くて、普段の素の阿部さんを知ってしまったら、村内先生と生徒たちの関係を演技で表現するのにも苦労したと思います」


教室で1人になった園部が、村内先生に、それまで胸に抱えた不安や迷いを一気にぶつけるシーンは特に印象的だ。
「阿部さんと1対1で対峙するシーンは、いちばん難しいシーンでした。感情をさらけだしたお芝居が必要なうえに、打ち合わせやリハーサルも一切なかったので不安もありましたし。でも、もし打ち合わせをしていたら予定調和の演技しかできなくなりますし、新鮮な感情の動きも損なわれてしまったと思うので、一番いいかたちで撮影できたと思っています」


完成した作品は、BGMもふくめ、一切の装飾が排除されたシンプルな仕上がり。「雑音が入らない、心にまっすぐ届く映画になっていると思います」。自信たっぷりに、そう語る。



やりたい役は、やりたくない役


撮影は、2008年の2月中旬から3週間かけて行われた。その間、本郷奏多に与えられた休日はわずか1日だけ。「毎朝4:00台に起きて、5:00に家を出て、1時間かけて現場に移動する。正直、この生活はかなりきつかったです」


しかし“俳優”としての自負と心意気は、へこたれることなく大きく育ちつつある。
「今後やってみたい役は、自分がやりたくないと思う役……ですね。やりたい役を挙げるのは簡単ですが、それは自分にとってやりやすい役でもあると思うので。苦手だと思う役に挑戦するほうが、成長できる幅も大きいはずなので、いまはどんな役にでも挑戦してみたいですね」


2008年11月15日の誕生日で18歳になったばかりで、俳優としても、人間としても、育ち盛りの伸び盛り。数年後はどんな男になっているか、楽しみな存在である。



『青い鳥』
2008年11月29日(土)、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋他 全国ロードショー
監督:中西健二
原作:重松清 『青い鳥』(新潮社刊『青い鳥』所収)
出演:阿部寛、本郷奏多、伊藤歩、太賀、荒井萌
配給:日活/アニープラネット
オフィシャルサイト:http://www.aoitori-movie.com/


(C) 2008「青い鳥」製作委員会